春香 | 「はぁ…」 |
ここは765プロ事務所。一人の少女がソファーに座って一つ溜息を吐いていた。 |
春香 | 「無理だよぉ、急にそんなこと言われたって」 |
頭に2つのリボンのショートカットが特徴的な… |
春香 | 「私がこういうの苦手だって、知ってるくせに…」 |
そう、春香である。何があったのか、少しひも解いてみよう… |
……… |
春香の通う学校のある日の風景。 |
神子 | 「はーるかっ」 |
晶紀 | 「春香ーっ」 |
春香に近づく二人の影… |
春香 | 「ん?みっちゃんにあきちゃん、どうしたの?」 |
春香の友達である神子と晶紀である。 |
神子 | 「ちょっとだけ聞きたいことがあってねー」 |
晶紀 | 「うん、これは私たちにとっても重要な問題なの」 |
春香 | 「え?」 |
神子 | 「あのさー、春香ってもう恋人とかっている?」 |
春香 | 「え?ええっ!?な、何で?」 |
晶紀 | 「だってさ、アイドルってそんななのかなって思ったの」 |
春香 | 「そんなこと無いって、もう」 |
神子 | 「ホントのとこは…いるんでしょ?」 |
春香 | 「本当にいないってばぁ」 |
晶紀 | 「それなら好きな人って…いないの?」 |
春香 | 「そ、それは…」 |
思わず赤くなってしまう春香。 |
神子 | 「あー、やっぱりいるんだ」 |
春香 | 「そんなこと…あるけど」 |
晶紀 | 「誰のことか教えて欲しいな。秘密にするから」 |
春香 | 「うーん…嫌だよぉ。だって二人とも口固くないんだもん」 |
神子 | 「大丈夫。今度こそ誰にも言わないってば」 |
春香 | 「今度こそって、もう…。えっと…………」 |
二人にだけ伝わるようにそっと小声で話した。 |
晶紀 | 「ふーん、そうなのね。でも分からなくはないかも」 |
春香 | 「そ…そっかな?」 |
神子 | 「だって向こう行ってる時はずっと一緒にいるんでしょ?」 |
春香 | 「うん、確かにそう言われたらそうかも」 |
晶紀 | 「一緒にいるからこそ、魅力が分かってきたんだと思うわよ」 |
春香 | 「うーん、なるほど…」 |
神子 | 「まーでもね、告白とかしなくちゃ始まらないよ」 |
春香 | 「む、無理だよ絶対」 |
晶紀 | 「やってみないで言うのもどうかなって思うけど…」 |
春香 | 「そう言う二人はどうなの?」 |
神子 | 「え?私たちのことはいいじゃん」 |
晶紀 | 「そうそう、私達に居ると思うの?」 |
春香 | 「私なんかよりずっと居そうだと思うけどなあ」 |
神子 | 「どうして?」 |
春香 | 「だって私なんて個性なんてまるでないもん…」 |
晶紀 | 「そんなことないんじゃないかしら」 |
春香 | 「私なんか少しドジでちょっと歌が好きなだけだもん…」 |
神子 | 「もう…じゃあ何でその人は春香をプロデュースしてると思ってる?」 |
春香 | 「え…?」 |
晶紀 | 「そうよ、それは春香のこと思っててくれてるんだからでしょう?」 |
春香 | 「………そっか…そうかも…」 |
神子 | 「だから挑戦あるのみじゃんもう」 |
春香 | 「う、うん」 |
晶紀 | 「期待してるわよ」 |
春香 | 「え?え、ええっ!?」 |
神子 | 「もう逃げられないから…ねっ」 |
春香 | 「うー…何だか体よくハメられた気がする…」 |
晶紀 | 「頑張って、応援してるから」 |
春香 | 「分かったよぉ…もう」 |
……… |
春香 | 「でも…どうしよう」 |
躊躇いから小さくなって一人、思案に暮れている。 |
春香 | 「こういう時はまず気持ちを整理した方がいいよね」 |
その胸に手を当てて気持ちを確かめる。 |
春香 | 「やっぱり…うん、好きなんだな…」 |
そして決意… |
春香 | 「で、でもどうやって伝えよう…みんなに聞かれるのも恥ずかしいし…」 |
悩みはなかなか尽きることが無い。 |
春香 | 「あっ、それなら…」 |
どうやら何かを思いついたようだ。 |
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そして数分後… |
春香 | 「よしっ、これを…プロデューサーさんの机に…ああっ、でも恥ずかしいよぉ…」 |
一つの手紙を携えてプロデューサーのデスクへと向かう。 |
春香 | 「でも誰もいない今じゃないと…えいっ」 |
そう、今はプロデューサーも席を外して事務所の中には春香以外居ない。 |
春香 | 「(置いちゃった…もう後戻りできないよ…)」 |
そのまま紅くなってしまった顔を誰にも見せずに、春香は足早に帰って行った… |
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そして翌週… |
春香 | 「おはようございます…プロデューサーさん」 |
P | 「おはよう、春香。今日もしっかりプロデュースしていくからな」 |
春香 | 「はい!」 |
P | 「今日の予定だけど午前中は衣装合わせ、午後からはレッスンだ」 |
春香 | 「分かりました、今日もよろしくお願いします!」 |
P | 「以上。…と、忘れてた。春香、昼は空けておくからな」 |
春香 | 「え、ええっ?」 |
P | 「どうしたんだ?あれ?じゃああの手紙は春香のじゃなかったのか?」 |
春香 | 「あの手紙って…何ですか?」 |
P | 「いや、名前が無かったからさ。字からてっきり春香だと思ったんだけどな」 |
春香 | 「(私ったらそんなところでミスしちゃってるなんて…)プロデューサーさん、どんな手紙でしたか?」 |
P | 「え?ああ…『○日の正午に、事務所近くの公園で待ってます』って感じだったけど」 |
春香 | 「…それは確かに私のです」 |
P | 「それなら良かった。まあここで話せないようなことなんだろ?」 |
春香 | 「は、はい…」 |
P | 「分かった。それなら正午、待ってるからな」 |
春香 | 「ありがとうございます…(うう…ついにこの時が来ちゃったよ…)」 |
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そして時は正午、ここは事務所近くの公園。桜の木の下にプロデューサーと春香がいた。 |
春香 | 「(ど、どど…どうしよう…でも、伝えなくっちゃ…)」 |
P | 「春香、どうして俺をここに?」 |
春香 | 「あの…プロデューサーさんっ…」 |