Sleeping Beauty Pitches the First Ball(眠り姫の始球式)

ここはある日の事務所…
ガチャッ
美希「おはようなの…あふぅ…」
一人の少女が眠たそうに欠伸しながら事務所に入ってきた。
律子「おはよう美希、眠たそうね」
そこには事務作業をしていた律子がいた。
美希「ひっ!律子…さんだけなの?」
律子「そうよ。プロデューサーでも探してた?」
美希「んーん、だって今日のミキはオフだよ」
律子「それなら…家で寝てれば良かったんじゃない?」
美希「家で寝てたらこれから掃除するから邪魔だって追い出されちゃったんだもん」
律子「しょうがないわね…はい仮眠室の鍵」
美希「ありがとなの!さっすが律子は話が分かるの」
律子「美希?」
美希のことを少しだけ睨みつけた律子。
美希「あ、律子…さん、だったの」
律子「もう…それでいつ起こせばいいの?」
美希「んー、お昼ご飯の頃だから…1時過ぎくらいでいいよ」
律子「分かったわ。その時間に私もご飯合わせるから」
美希「え?律子がおごってくれるの?」
律子「だから律子さん!」
美希「ご、ゴメンなさい…えっと、律子…さんがおごってくれるの?」
律子「奢るなんて言ってないでしょもう…さっさと寝に行きなさい」
美希「ちぇー、分かったの。じゃあおやすみなさいなの」
律子「おやすみ、美希」
 
そうして律子が仕事をしていると…
ガチャッ
「だ、誰かいるか?!」
プロデューサーが何やら急いだ様子で入ってきた。
律子「おはようございますプロデューサー、何ですか?藪から棒に」
「ああ、律子でいいか。ちょっと大変なんだ!」
律子「な、何があったんですか?」
さすがにその殺気立った様子に律子も少し動揺し始めた。
「響が風邪で、真がどうしても外せない用事で急に今日の仕事に来れなくなって…」
律子「はい?ちょ、ちょっとそれどういうことよ」
「今日の仕事、穴開けるわけにもいかないんだよ」
律子「Greetの今日の仕事って…プロ野球の始球式?それに二人とも来れなくなったっていうの?!」
「そうなんだ…だから律子、代打頼めるか?」
律子「先方は代理でも良いって言ってるの?」
「ああ。やってくれないのが一番困るとは言ってるから」
律子「仕方ないわね…2人ってことはやよいも呼んだ方がいい?」
「いや、そんな時間は無い。アレがあってから時間が変わって早くなってるんだ」
律子「ああっ、そうね…あっ!」
律子は何かを思い出したようだ。
「どうした?律子」
律子「プロデューサー、仮眠室にいる人起こしてきて。どうせならあの子にやらせた方がいいわ」
「仮眠室に誰かいるのか?」
律子「ええ。家にいたら掃除するからって追い出された人がいるのよ」
「分かった、ちょっと呼んでくるな。律子は行ける準備をしておいてくれ」
律子「分かったわ。ユニフォームは衣装の方がいいかしら?」
「そうだな。向こうで衣装のサイズが合わないと困るから、一応出しておいた方がいいな」
………
ここはとあるスタジアム…
美希「んーっ!ミキがピッチャーでいいの?」
野球チームのユニフォームに身を包んだ美希が伸びをしながら言った。
律子「ええ。自信あるのよね?」
そんな律子は私服のままである。
美希「千早と春香との撮影の時に練習したから大丈夫なの」
律子「千早と春香…ああ!そういえば今度のゲームのキャラクターに、美希も選ばれてたのよね」
つい最近、千早と春香と美希がとある野球ゲームのキャラクターに選ばれ、そのCM撮影があったのだ。
美希「うん。そのCMの時の撮影のために、ちょっとだけ真クンとハニーに教えてもらったから」
律子「え?あの球って実際に美希が投げていたわけ?」
美希「そうだよ。CGで何か炎っぽいの足されてたけど、投げたのはミキのそのままだよ」
律子「そういえば事務所に戻ってきた千早が驚いていたわね。美希の真剣さもそうだけど、球が打てる気がしなかったって」
美希「本当は球自体もCGで出すって言われてたけど、何か悔しかったの」
律子「そういうところは意地っ張りよね、美希も」
美希「だって手は抜きたくなかったんだもん」
律子「でもその考え方は良いわよ。あ、いたいた…プロデューサー、着替えさせてきました」
「ありがとう律子。じゃあ律子はあっちを頼むよ。詳しくはこのスタッフに聞いてくれ」
スタッフ「秋月さん、今日はよろしくお願いします」
律子「こちらこそ、ピンチヒッターになりますけどよろしくお願いします」
美希「ハニー、ミキのピッチングちゃんと見ててね」
「もちろんさ。急だけどちゃんと頼むぞ」
美希「もちろんなの。ハニーと響と真クンのために投げてくるからね」
律子「プロデューサー、行ってくるんで始球式が終わったら美希を連れてきてくださいね」
「分かってる。美希、行ってくるぞ」
美希「はいなの!」
 
スタジアムは開幕第3戦ともあり、それなりの観客となっていた。そのスタメン発表…
律子『それでは、本日のスターティングラインナップの発表ですが、その前に一つお詫びがございます』
スタジアムに響き渡る律子の声。
律子『本日はゲストとしてGreetの二人が、スタジアムDJと始球式に来る予定でしたが急遽変更となりました』
会場の一部からため息が零れていたとかいないとか…
律子『ですので、本日はスタジアムDJを同じ765プロで隔週土曜日のFMラジオではお世話になっています秋月律子が、始球式を同じく765プロの星井美希がお送りいたします!』
ワーーーーーーーー!!!
会場のボルテージが再び上がり始めた。
律子『それでは改めましてスターティングラインナップの発表です!先攻○○○○○○○、1番、ショートストップ、○○、背番号2!』
 
律子『それでは…これより始球式を行います。ピッチャー、星井美希、背番号765!』
ワーーーーーーーー!!!
1塁側のダッグアウトから美希が姿を見せた。その姿はどこか凛々しい感じもある。
先発投手「星井さん、はいボール」
美希「ありがとうなの、えっと…△△さん」
マウンドでその日の投手からボールを受け取った。
律子『1番、ショート、○○。背番号2』
相手方のバッターがバッターボックスへと入った。
審判「プレイボール!」
審判のその声に美希の眼が一段と真剣に変わった。
美希「律子さん…見てて…」
小さな声で一言つぶやいて…
ザっ シュっ ズバンっ
誰もアイドルからそんなストライク投球が出るとは思いもしなかっただろう。美希の投球は少し遅いながらもキャッチャーミットへと吸い込まれていった。
電光掲示板の表示[84km/h]を見た瞬間、誰もが息を飲んだ。そして数秒後に思い出したかのように…
ワーーーーーーーー!!!
両スタンドから歓声が上がった。
律子『星井美希さんありがとうございました。今一度、星井美希さんに拍手をお送りください』
キャッチャーからボールを受け取った美希は各方向に何度も礼をしながら、ダッグアウトへと入っていった。
そんな美希のことを放送席で見ていた律子は、少し微笑みながら次の原稿を見つめていたという…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
世間では意外と普通にある組み合わせ…らしいですね、この二人。結構絵も見ますし。
でも実際書いてみると意外と新鮮な組み合わせでした。
実は途中でどういう方向性にしようかと思ったのですが、ファミスタの画を見てこうなった次第です(苦笑)
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2011・04・21THU
飛神宮子
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