Firework a Deux(二人だけの花火)

ここはとある地方の花火大会会場…
「たーまやー!!」
浴衣姿で花火を見上げる真。
「はい、と言うわけで菊地真です。今日は○○県の○○市に来ています」
マイクを構えてカメラに向き直した。
「今夜こちらでは花火大会が行われています。それではここからはこの花火大会の実行委員の方にお話を聞きたいと思います。よろしくお願いします」
実行委員『ようこそ菊地さん、実行委員の○○です』
「それでこの花火大会はいつ頃始まったものなのですか?」
実行委員『いつ頃というのは正確には分かっていないのですが、地元の神社の祭礼の際に境内で上げた物が起源とされています』
「やっぱりお祭りからなんですね」
実行委員『はい、それで今の川で行うような形になったのは昭和50年になります』
「そういえばこの花火大会の名前にある△△△△ってどういう意味なんですか?」
実行委員『△△△△というのは、地元の言葉で『おいでください』という歓迎の意味です。平成8年度から今の花火大会の名前になりました』
「なるほど…色んな人に来てもらいたい…そういうことなんですね」
実行委員『今年は特に東北での震災だけではなく、この辺も豪雨の大雨で増水してかなりの被害を受けました』
「確かに○○と言ったら今回の豪雨、それにここは河川敷ですから大変でしたよね」
実行委員『はい。1か月前は大変な惨状になっていましたが、何とかここまでは復旧することができました』
「頑張ってここまで取り戻したんですね」
実行委員『自分達は元気なんだということを知ってもらうためにも、中止にはしたくありませんでしたからね』
「凄いなあ…これからもぜひ毎年続くことを願ってます」
実行委員『ありがとうございます、そう言ってもらえると励みになります』
「こちらこそ今日は忙しい中ありがとうございました」
実行委員『こちらこそありがとうございました』
「では、今日は○○市から花火大会をお送りしましたー!かーぎやー!!」
スタッフ『………はい、オッケー!』
「おつかれさまでしたー!」
スタッフ『ごくろうさま、菊地さん。浴衣姿似合ってるねえ』
「へへっ、ありがとうございます」
スタッフ『それにしても良かったよ、無事開催されてね』
「はい。一応開催されなくても来るつもりではあったんですけどね」
スタッフ『それはどういうことだい?』
「それは…」
「おつかれさま、真。はい、スポーツドリンクで良かったか?」
「ありがとうございます、プロデューサー」
「今日はうちの菊地をありがとうございました」
スタッフ『菊地さんのプロデューサーさん、こちらこそ今日はありがとうございました』
「どうでした?うちの菊地は」
スタッフ『さすがだねえ、元気っ子だけど落ち着くところはちゃんと落ち着いてるし』
「そういう子だとうちでは一番上になりますから」
スタッフ『なるほどね』
「プロデューサー、今日ももう一泊ですよね?」
スタッフ『お、どこにだい?』
「あ、さっきの理由です。プロデューサーの実家がここのすぐ近くなんですよ」
「はい。俺の実家が○○通沿いでして」
「ボクが誕生日だから行ってみたいって言ったら良いって言って貰えたんです」
「それで昨日と今日は旅費も浮かすために泊まって貰おうかなって」
スタッフ『だから来ると言ってたのかい、それはちょうど良かったよ』
「でもびっくりしましたよ、まさかプロデューサーの家から本当に30分かからないなんて」
スタッフ『本当に近いんだねえ、よしじゃあこの辺で切り上げて後の時間は二人で楽しんでもらおうか』
「え?いいんですか?」
スタッフ『ああ。残りはこっちで処理することだけだから、もう帰ってもらってもいいよ』
「ありがとうございます!プロデューサー、もう少し花火見たら行きましょう」
「そうだな、あんまり花火とかゆっくり見る機会も無かったからな」
「ほら、また上がりましたよ。たーまやー!!」
真の笑顔は絶えることなく続いていたという…
………
バンッ バンッ
帰る車へと乗りこんだ二人。
「さて、まず帰ったら分かってるな?」
「はい…今日もプロデューサー、よろしくお願いします…」
真の表情が急に暗くなった。
「まさかまだ宿題が終わってないってなあ、もう夏休みが終わるっていうのに」
「プロデューサーが仕事やレッスンを多く入れたからじゃないですか」
「俺はそんなに入れた覚えは無かったけど?20日くらいは余裕作っておいたはずだぞ」
「えー、そんな憶えは…うう…ありました」
「今日は簡単なのを残したんだから、1時間で終わらせるぞ」
「はーい。じゃあ1時間以内で終わったら何かしてくれますか?」
「そうだな…それは家に戻るまで考えておく」
「へへっ、楽しみだなあ」
「でもまずは宿題だからな」
………
そしてプロデューサーの実家…
「終わったーっ!」
「なんだ、40分で終わったじゃないか」
二人はこたつ型テーブルで隣り合って座っていた。真はもうTシャツに短パン姿になっている。
「だって1時間以内じゃないとケーキ無しって言われましたから」
「よし、じゃあケーキを食べてお風呂入ったら休むぞ」
「はーい…あの、プロデューサー」
「何だ?真」
「今日のお風呂…この家、他に誰もいませんから…一緒に入りませんか?」
プロデューサーの家族は家にプロデューサーが帰ってくることもあって、家の心配が無いからと旅行に行ってしまったのだ。
「…いいのか?」
「だって、プロデューサーにならその…見せてもいいですから」
「そんなこと言って、俺だって男なんだぞ。襲われてもいいのか?」
「…はい」
真は少し心を落ち着けてから一言そう言った。
「…えっ!?」
「律子や春香みたいに…ボクのこと…襲ってください」
「話はもう回ってるんだな?」
「はい…ボク、身体にはその…自信はあんまり無いですけど…」
「いや、そんなことを言うなよ」
チュッ
プロデューサーはそっと真に口付けをした。
「これでも信用できないか?」
「プロデューサーっ!」
ぎゅうっ
真はプロデューサーへと抱き付いた。そして…
「やっぱり…我慢できないですから、ボクが…襲っちゃいますね…」
チュウゥゥッ
プロデューサーは床に倒されながら真の口付けを受け止めた。これから秋に向かう夜は涼しい中でここだけは熱く燃えあがろうとしている…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
誕生日SSシリーズ、真編です。
この花火大会ですが、とある花火大会が基です。日付は真の誕生日とは若干違いますけどね。
Happy Birthday!! Makoto KIKUCHI.
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2011・08・26FRI
飛神宮子
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