律子 | 「そうねえ…もう少しパンチが欲しいわよね…」 |
プロデューサーの律子は何やら事務所で悩んでいた。 |
律子 | 「あずささんも亜美も伊織も素材はピカ一だけど…」 |
その操作しているパソコンの画面には… |
律子 | 「PVってこんなもんじゃないわよね、私がやってた頃もそうだったわ…」 |
どうやら竜宮小町のPVを見ていたようだ。 |
律子 | 「これは…あ!ちょっと涼の手を借りて…」 |
律子は電話で涼へと掛け始めた。 |
Trrrrr… Trrrrr… |
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その頃の876プロの事務所… |
♪〜 |
涼が愛や絵理と談笑しているところに携帯電話の着信音。 |
涼 | 「あ、僕のだ。ちょっとゴメンね」 |
Pi♪ |
涼 | 「もしもし、律子姉ちゃん?」 |
律子 | 『もしもし涼、今は大丈夫かしら?』 |
涼 | 「大丈夫だけどどうしたの?」 |
律子 | 『今どこにいる?』 |
涼 | 「今は特に今日は何も無いから、事務所でみんなと話とかしてたけど」 |
律子 | 『じゃあ水谷さんもいるわね?』 |
涼 | 「うん。どうしたの?」 |
律子 | 『ちょっとお願いがあって、電話変わってもらえる?』 |
涼 | 「分かった、ちょっと待って。絵理ちゃーん、ちょっといい?」 |
絵理 | 「何かある?涼さん」 |
涼 | 「ちょっと姉ちゃんが絵理ちゃんに話があるんだってさ」 |
絵理 | 「わたしが?」 |
涼 | 「うん。詳しくは聞いてないけど」 |
絵理 | 「分かった。代わって?」 |
涼 | 「はい」 |
携帯電話を手渡された絵理。 |
絵理 | 「もしもし?」 |
律子 | 『もしもし、水谷さんね』 |
絵理 | 「秋月さんですか?」 |
律子 | 『ええ。ゴメンね、楽しく話してたみたいな時に急に呼び付けちゃって』 |
絵理 | 「構わないです。それで何でしょう?」 |
律子 | 『ちょっとお願いしたいことがあるの。水谷さんの腕を見込んでね』 |
絵理 | 「わたしの腕…ですか?」 |
律子 | 『あの、私のプロデュースしているユニットって知ってるかしら?』 |
絵理 | 「はい…竜宮小町…でした?」 |
律子 | 『そう、その竜宮小町なんだけど…それでちょっとお願いできないかしらって思ったの』 |
絵理 | 「わたしが力になれるということ…?」 |
律子 | 『詳しくは…そうね、今からそっちに行って大丈夫?』 |
絵理 | 「大丈夫だと思う…」 |
律子 | 『それならちょっとお伺いするわね。あ、石川社長っているかしら?』 |
絵理 | 「今は…はい、代わります?」 |
律子 | 『お願いするわ』 |
絵理 | 「社長…765プロの秋月律子さんからです…」 |
石川社長 | 「えっ?私になの?」 |
絵理 | 「電話を代わって欲しいと…」 |
石川社長 | 「ん、じゃあちょうだい」 |
涼の携帯電話が石川社長の手へと渡った。 |
石川社長 | 「もしもし、電話代わりました石川よ」 |
律子 | 『もしもし、いつも涼がお世話になっております。765プロの秋月律子です』 |
石川社長 | 「それで何かしら?」 |
律子 | 『あの、今から私がそちらに伺ってもよろしいでしょうか?』 |
石川社長 | 「んー、別にいいんじゃないかしら。どうぞいらっしゃい」 |
律子 | 『ありがとうございます。では1時間後にお伺いしますので』 |
石川社長 | 「お待ちしてるわ」 |
律子 | 『では失礼します』 |
Pi♪ |
涼 | 「げっ…律子姉ちゃん来るんですか?」 |
石川社長 | 「そうみたいだわね…」 |
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876プロ事務所にて… |
律子 | 「こんにちは水谷さん」 |
絵理 | 「秋月さんこんにちは…」 |
律子 | 「ちょっと前のうちの伊織のPV見せてもらったわ。あれは水谷さんの編集でしょ?」 |
絵理 | 「ちょっと前…あ、はい」 |
律子 | 「それでなんだけど、ちょっとこれを見てもらえるかしら」 |
律子は持ってきたノートパソコンを開いてとある映像を見せた。 |
絵理 | 「これは…?」 |
律子 | 「今度の竜宮小町の新曲PV用のダンス映像よ」 |
絵理 | 「やっぱり…格好良いです…」 |
律子 | 「そうかしら?でもこれは素材だから」 |
絵理 | 「でも、3人の良さが出ていると…思います」 |
律子 | 「そう言ってもらえると嬉しいわね」 |
絵理 | 「それで…わたしに話というのは何でしょうか…?」 |
律子 | 「あ、そうね。PV編集をお願いしたいの」 |
絵理 | 「わ、わたしがですか…?!」 |
律子 | 「水谷さんの腕を見込んでよ」 |
絵理 | 「そんなわたしなんて…無理です…」 |
律子 | 「水谷さん」 |
律子は真剣な眼差しで絵理を見つめた。 |
絵理 | 「えっ…?」 |
律子 | 「水谷さんはもっと自分に自信を持って。自分が思っているよりもっとできる子よ」 |
絵理 | 「秋月さん…」 |
律子 | 「こうやって頼むのも、私が絵理さんの力に自信があるからなの」 |
絵理 | 「わたし…大丈夫でしょうか?」 |
律子 | 「大丈夫、やってみてダメでも私は文句は言わないから」 |
絵理 | 「それなら…はい、やってみます秋月さん」 |
律子 | 「ありがとう、水谷さん」 |
絵理 | 「それで…素材はどんなのがありますか…?」 |
律子 | 「とりあえず8パターン撮ってあるのと、あと他に途中途中に入れる短い映像素材が20個くらいかしら」 |
絵理 | 「たぶんそれだけあれば…充分?」 |
律子 | 「足りなかったらこれが連絡先だから連絡して、いつでも渡しに行くから」 |
律子は自分の名刺を手渡した。 |
絵理 | 「はい…頑張ります」 |
律子 | 「期待しているからね」 |
10日間という期間にも関わらず出来たそのPVを見た律子の眼には、任せてよかったという映像が映り込んでいたという… |