ここは、とある歌番組のスタジオ。 |
真美 | 「兄ちゃん、どうだった?」 |
P | 「おつかれ、真美。うん、いい感じだったぞ」 |
真美 | 「ありがとっ」 |
P | 「でもなあ…急だったからこっちも心配だったんだけどさ」 |
真美 | 「うん、真美こそごめんね。真美が亜美にうつしちゃったみたいだから…」 |
P | 「それはしょうがないさ、だってひいてしまったものは仕方ないし」 |
真美 | 「でも…」 |
P | 「それに真美が休んでた時は亜美が頑張ってたんだしさ」 |
真美 | 「けどこれ、亜美がとっても楽しみにしてた番組だよ?」 |
P | 「ああ…そうだったっけか…」 |
この日は亜美が心待ちにしてた、クリスマス特集だったのである。 |
真美 | 「だから、真美がここに出ていいのかなって…ずっと思ってたんだ」 |
P | 「でももうそれはどうしようもないからな」 |
真美 | 「何だかなあ…うーん…」 |
何だかすっかり意気消沈している真美。 |
P | 「何だ、真美らしくないな」 |
真美 | 「えっ?」 |
P | 「いつもだったらもっと元気に俺に擦り寄ってくるくらいなのにさ」 |
真美 | 「だって、自分が原因だと思うと素直に嬉しくなんかなれないし、それに…」 |
P | 「それに?」 |
真美 | 「一人じゃ寂しいんだもん…」 |
P | 「そっか…それじゃあ今日は早めに帰らせてもらうか」 |
真美 | 「大丈夫なの?兄ちゃん」 |
P | 「元々特例でこの時間の番組に出させてもらってるからな、ディレクターに許可を貰えば大丈夫だぞ」 |
真美 | 「うーん…でもいいのかな?」 |
P | 「いいさ、真美がそんなんじゃ俺だって気が気じゃないからな。ちょっと行ってくるから」 |
真美 | 「う、うん。先に楽屋に戻ってるよー」 |
|
ここは真美の楽屋。 |
P | 「よし、行くぞ真美」 |
真美 | 「いいって?兄ちゃん」 |
P | 「大丈夫だ、きちんと許可は貰ってきた」 |
真美 | 「じゃあ…ってどこに行くの?」 |
P | 「決まってるだろ、亜美のところだよ」 |
真美 | 「へ?ほ、ホント!?兄ちゃん」 |
P | 「ああ。でもその前にお見舞いのための物を買ってかないとかな」 |
真美 | 「うん、早く行こうよー」 |
P | 「分かってるって、じゃあ行くか」 |
二人はそのままテレビ局を後にした。 |
……… |
ここはプロデューサーの車の中。 |
P | 「真美、亜美って何が好きなんだ?」 |
真美 | 「亜美?うーん…兄ちゃんが持っていくものなら何でもいいと思うよー」 |
P | 「そう言われると意外と困るんだよなあ…ま、あのショッピングモールにでも寄っていくか」 |
真美 | 「そだねー」 |
|
そしてとあるショッピングモールのファンシーショップにて… |
真美 | 「えー…兄ちゃんのセンスダメダメだよー」 |
P | 「そうか?そこまでダメか…」 |
真美 | 「こっちの方がたぶん亜美は好きだと思うよ」 |
P | 「そっか…って真美と亜美って好みとか違うのか?」 |
真美 | 「双子だけどちょっとは違うよ、同じじゃつまらないもんね」 |
P | 「まあ完全に同じってわけじゃないよな、さすがに」 |
真美 | 「これ買ってくの?」 |
P | 「んー…まあ予算通りだしいいか」 |
真美 | 「兄ちゃん、真美たちのために無理しなくていいのに」 |
P | 「いや、無理はしてないさ。そういや亜美って指何号だったっけ?」 |
真美 | 「え?どして?」 |
P | 「いや、ちょっと今度の衣装に合いそうなのも見て行きたいからさ」 |
真美 | 「今度の衣装って大人っぽいってこと?」 |
P | 「いや、ちょっとクリスマスっぽいからさ」 |
真美 | 「クリスマスっぽいんだあ、えっと薬指でいいんだよね?」 |
P | 「あ、うん」 |
真美 | 「真美と一緒だから、確か…号だよ」 |
P | 「ありがとう、けっこう細いのか…やっぱり」 |
真美 | 「だってまだ小学生だもん」 |
P | 「そりゃそうか。じゃあちょっと買ってくるから、店の外で待っててくれる?」 |
真美 | 「うんっ」 |
……… |
そして真美と亜美の自宅… |
コンコン |
真美 | 「亜美ー、兄ちゃんが来てくれたよー」 |
亜美 | 『え、えーっ!?ちょ、ちょっと…ゴホゴホッ…待ってー』 |
P | 「亜美、大丈夫か?」 |
亜美 | 『本当に兄ちゃんだー、ケホッ、今開けるね』 |
ガチャっ |
P | 「亜美、本当に辛そうだな。大丈夫か?」 |
亜美 | 「兄ちゃん…だいぶ治ってきたけどまだ本調子じゃないかも…ケホッ」 |
P | 「ほら、無理するなって。まだ横になってた方がいいんだろ?」 |
亜美 | 「う、うん…真美もゴメンね。今日の収録任せちゃって…」 |
真美 | 「真美も心苦しかったんだよ、亜美が楽しみにしてたのだったから」 |
亜美 | 「真美…」 |
P | 「ほら、早くベッドに戻って」 |
ひょいっ ぽふっ |
プロデューサーは亜美をお姫様抱っこしてベッドへと戻してあげた。 |
|
P | 「さて…じゃあそろそろ帰らないとだな」 |
亜美 | 「兄ちゃん、今日は来てくれてありがと」 |
P | 「どういたしまして、亜美。早めに治して元気な姿を見せてくれよな」 |
亜美 | 「うん…」 |
真美 | 「亜美、真美は見送りに行ってくるね」 |
亜美 | 「うーん、りょーかいだよ」 |
……… |
その玄関先にて… |
真美 | 「ずるい…兄ちゃんずるいよ」 |
P | 「えっ…?」 |
真美 | 「亜美にだけお姫様抱っこして…」 |
P | 「何だよ真美、それでずっとあんな顔をしてたの…かっ!と」 |
ひょいっ |
プロデューサーはそんな真美をお姫様抱っこしてあげた。 |
真美 | 「こ、こんなところでしてくれなくてもいいのに…」 |
突然のことに真美の顔はすっかり真っ赤になっている。 |
P | 「いや、実はな…俺のジャケットの胸ポケット探ってみな」 |
真美 | 「え?」 |
ゴソゴソゴソ |
手を入れると中から小箱が一つ出てきた。 |
真美 | 「これって…」 |
P | 「メリークリスマス、真美。俺から真美にだけのプレゼントだから」 |
真美 | 「兄ちゃんっ!!!」 |
真美はプロデューサーの首へと腕を回し、思い切り抱きついて顔をうずめた。そして… |
真美 | 「ありがと…」 |
小さくではあるが確実にそう呟いた。 |
P | 「どういたしまして、真美。よし、それじゃあそろそろ帰るとするか。下ろしていいか?」 |
真美 | 「うん、今日はありがとね」 |
P | 「じゃあ真美もまた風邪をひかないように気を付けてな」 |
真美 | 「はーい」 |
真美はまだ少し頬を紅く染めたまま、笑顔でそう答えた。 |