とある秋の日のこと… |
雪歩 | 「うう…もう嫌ぁ…」 |
伊織 | 「何辛気臭い顔してるの雪歩」 |
雪歩 | 「だって今日のライブも私のせいで…」 |
伊織 | 「まったく、アンタがそんなだから私までとやかく言われるのよ。分かる?」 |
雪歩 | 「伊織ちゃんにまで言われたよぉ…」 |
伊織 | 「あのね、そんな意味で言ったんじゃないの。…もう、しょうがないわね…」 |
雪歩 | 「え…?」 |
伊織 | 「ちょっと来なさい!雪歩」 |
雪歩 | 「え?ええっ?」 |
伊織 | 「あ、その前に…」 |
雪歩 | 「キャッ!」 |
伊織は雪歩にアイマスクを付けた。 |
雪歩 | 「伊織ちゃん、どこ?どこ?」 |
伊織 | 「ほら、掴まって」 |
雪歩 | 「え?う…うん…」 |
雪歩はそのまま伊織に引っ張られるまま連れられて行った… |
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そのまま車に乗せられ、どこかへと連れ去られていく雪歩。 |
雪歩 | 「どこ?どこに行くの伊織ちゃん」 |
伊織 | 「着けば分かるわよ」 |
そんな雪歩はビクビク震えているようだ。 |
伊織 | 「あと10分くらいで着くから」 |
雪歩 | 「うう…」 |
伊織 | 「これは雪歩のためなのよ」 |
雪歩 | 「えっ…?」 |
伊織 | 「ちょっと痛い目にあってもらおうかしらね」 |
雪歩 | 「ええっ!?」 |
伊織 | 「嘘よ。ほら着いたから、また私に掴まって」 |
雪歩 | 「えっと…」 |
伊織 | 「早くするの!」 |
雪歩は怖がりながらも仕方なく着いて行くしかなかった。 |
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とある部屋に通された雪歩。何やらベッドかソファに座らされたようだ。 |
伊織 | 「アイマスク取っていいわよ」 |
雪歩 | 「うん…」 |
雪歩がアイマスクを外すと… |
雪歩 | 「ここは…どこ?」 |
雪歩には全く見慣れない景色が広がっている。 |
伊織 | 「どこだと思う?」 |
座っているベッドの向かいの椅子に座っている伊織がそう答えた。 |
雪歩 | 「もしかして…」 |
伊織 | 「私の部屋」 |
雪歩 | 「それじゃあここは…伊織ちゃんの家ってこと?」 |
伊織 | 「そういうことね」 |
雪歩 | 「何で私、こんなところに連れて来られたの…?」 |
伊織 | 「まだ分からないようね…」 |
ストトトト ドンっ |
雪歩 | 「伊織ちゃんっ!?」 |
雪歩は伊織にベッドへと押し倒された。 |
雪歩 | 「ねえ、伊織ちゃんっ…」 |
その迫力と力に雪歩は為す術もなかった。 |
雪歩 | 「ど、どうしたの?」 |
伊織 | 「…ふう、どうだったかしら?」 |
雪歩 | 「…え?え?」 |
伊織 | 「フフフ、何をされると思った?」 |
雪歩 | 「今までのことで伊織ちゃんに怒られて何かされるかって…」 |
伊織 | 「そんな、いくら私でも手を上げるなんてするわけないじゃない」 |
雪歩 | 「それならどうして…」 |
伊織 | 「ちょっと試してみたかったの」 |
雪歩 | 「試す…?」 |
伊織 | 「私のことをどう思ってるか…ね」 |
雪歩 | 「うう…」 |
伊織 | 「やっぱり私のこと怖がってたのね」 |
雪歩 | 「………」 |
伊織 | 「まあそんなことだろうと思ってたわ」 |
雪歩 | 「伊織ちゃん…」 |
伊織 | 「そんなに私ってそう見えるのかしら…」 |
雪歩 | 「う、うん…」 |
伊織 | 「相方にそう思われてたら上手くいくはずないわね」 |
雪歩 | 「えっと…」 |
伊織 | 「私、そんなに強い女の子じゃないの」 |
雪歩 | 「そう…なの?」 |
伊織 | 「甘え放題で育ってきたから…人を支配したい心が出来ちゃって」 |
雪歩 | 「………」 |
伊織 | 「だから、虚栄心でつい言っちゃうのよね…」 |
雪歩 | 「そうなんだ…伊織ちゃんって…」 |
伊織 | 「普段プロデューサーにああ言ってるのも、全部それなの」 |
雪歩 | 「へえ…」 |
伊織 | 「こんなのダメよね…ダメって分かってるけど、でも…」 |
雪歩 | 「ううん、そんなこと無いと思うなあ」 |
伊織 | 「だから雪歩にだけは本当の私を見て欲しかったの」 |
雪歩 | 「伊織ちゃん…うん、伊織ちゃんの気持ち、受け取ったよ」 |
伊織 | 「ありがと、雪歩」 |
雪歩 | 「そういうとこ…私の前でならいくらでもいいよ」 |
伊織 | 「雪歩…」 |
雪歩 | 「プロデューサーにも見せられないなら、全部私が受け止めるから」 |
伊織 | 「雪歩っ…!!」 |
ぎゅうっ |
伊織はそのまま雪歩に抱きついた。 |
伊織 | 「私、心配だったの。ユニットが変わって、次のは私のこと受け入れてくれるのかって…」 |
雪歩 | 「大丈夫だよ、もう。私だってそうだったから」 |
伊織 | 「もう何も心配しなくていいのよね」 |
雪歩 | 「うん…」 |
伊織 | 「ありがと…大好き、雪歩」 |
雪歩 | 「伊織ちゃん、私も大好きだよ」 |
それは二人の唇が自然と重なり合った瞬間だった… |
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それから少しの時間の後… |
伊織 | 「もう遅くなっちゃったわね、今日はもう泊まって」 |
雪歩 | 「えっと…うん」 |
伊織 | 「今、色々用意させるから。ライブ後だしお風呂も入らないといけないでしょ?」 |
雪歩 | 「そうだね、じゃあ私はちょっと家に連絡するね」 |
もう何も怖くない。だって二人で「Suwon」なのだから… |