ここはある日のレッスン場… |
律子 | 「さすがね伊織、三日でここまで覚えてこれるなんて」 |
伊織 | 「まあね。少しでも遅れたら恥ずかしいもの」 |
律子 | 「でもやっぱり辛そうね」 |
伊織 | 「辛そう?」 |
律子 | 「最後の方、息切れしてたでしょ?」 |
伊織 | 「ええ…ちょっと最後までいくと激しくて…」 |
律子 | 「亜美もあずささんもそうだったのよ、やっぱりちょっと厳しいかしら?」 |
伊織 | 「何とかしたいけれど…もう、あの振付師は何であんな激しいのよ」 |
律子 | 「作ってもらってるんだから文句は言わないの」 |
伊織 | 「律子はいいわよね、もう表に出ることは殆ど無いんだから」 |
律子 | 「プロデューサー業も大変なのよ。挨拶に行ったり相手のご機嫌取ったり」 |
伊織 | 「まあ…そうね」 |
律子 | 「それに私はまだやよいとの活動もしてるのよ?」 |
伊織 | 「でももうこうやって踊ることも少なくなったでしょ?」 |
律子 | 「そう言われると否定はできないわ…」 |
伊織 | 「やよいとはどうなの?」 |
律子 | 「そっちでの活動は大分減らしちゃったから…」 |
伊織 | 「やっぱり寂しいのね」 |
律子 | 「そうよ。寂しくないって言ったら嘘になっちゃうわよ」 |
伊織 | 「でも亜美に聞いたわよ。いずれは引き取るつもりなんでしょ?」 |
律子 | 「ええ。まずこっちを安定させてからね」 |
伊織 | 「じゃあ私たちが頑張らないとじゃない」 |
律子 | 「そういうことよ。私だって失敗できないって必死なの」 |
伊織 | 「でもやよいは…私だって好きだから…」 |
律子 | 「フフフ、それは分かってるわ」 |
伊織 | 「いいわよね、最初組まれてからずっと一緒でしょ?律子たちって」 |
律子 | 「ええ。もう長いわよ」 |
伊織 | 「姉妹みたいな律子たちが本当に羨ましいわ…」 |
律子 | 「これも運命よ…」 |
伊織 | 「さてもう一回やってみようかしら」 |
律子 | 「やるの?じゃあ準備するわね」 |
……… |
2回目を終えて… |
律子 | 「ご苦労さま。さすがに二回目だから足がもつれてたわよ」 |
伊織 | 「こんなダンス、疲れない方がおかしいわよ」 |
律子 | 「そうかしら?」 |
伊織 | 「それなら律子がやってみなさいよ」 |
律子 | 「ええっ!?わ、私が?」 |
伊織 | 「踊れないわけじゃないんでしょ?ほら」 |
律子 | 「一応振付師の先生には教わってるから大丈夫だけれど…」 |
伊織 | 「ほら、一回やってみなさいよ」 |
律子 | 「わ、分かったわよ…」 |
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律子が踊り終えたのを見て伊織の第一声は意外なものであった。 |
伊織 | 「…どうしてそこまで完璧に踊りきれるのよ…」 |
律子 | 「それは私だって、やよいと一緒で恥ずかしくないように訓練は欠かさないわよ」 |
伊織 | 「だからって…どうしてこんなに…」 |
律子 | 「伊織、忘れてる?これでも私はやよいとのデュオでSランクだったのよ」 |
伊織 | 「やよいが言ってたわね…プロデューサーが決めた鬼合宿特訓日程が…って」 |
律子 | 「あれは大変だったわよ。終わった時はやよいと抱き合って喜んだくらいだもの」 |
伊織 | 「それがあったから…律子もやよいも凄い能力なのね…」 |
律子 | 「もう思い出したくもないわよ。トレーナーさんが凄い厳しくてもう二人でいつも泣いてたわね…」 |
伊織 | 「へえ…」 |
律子 | 「でもね、私とやよいは二人ともへこたれない根気はあったのよ」 |
伊織 | 「そういえば…確かに他にそういう感じの人って…うちの事務所にはいないかしら」 |
律子 | 「プロデューサーもそれを感じてて私たちにそれをやったって後で聞かされたわ」 |
伊織 | 「律子は私たちには…さすがにやらないわよね?」 |
律子 | 「それはどうかしらね…もしかしたらやるかもしれないわよ」 |
伊織 | 「ちょっと、亜美やあずさだっているんだから。やよいとは違うのよ?」 |
律子 | 「そうね、亜美なんか特にやれるとは思えないから」 |
伊織 | 「フフフ、そうね」 |
律子 | 「だから、まずは何としてもそれ無しで貴方たちが一人前になってもらわないとなのよ」 |
伊織 | 「分かってるわよ、それくらいは」 |
律子 | 「それでどうするの?振り付け替えてもらう?」 |
伊織 | 「替えてもらうって…大丈夫なの?」 |
律子 | 「ええ。振付師の先生もさすがにこれはきついかもって言ってたもの」 |
伊織 | 「そうだったの?」 |
律子 | 「だって、これの振付師ってま〜ちが全盛期の時の人だから」 |
伊織 | 「どうりで律子が易々と踊れてたのね」 |
律子 | 「あの人の振付には特徴というか癖があってね、それさえ分かれば何てことないの」 |
伊織 | 「そうなの…」 |
律子 | 「まずはこの部分だけど…」 |
律子はあらためて最初から伊織に分かるように説明を始めた。 |
……… |
律子 | 「分かったでしょ?そういうことなの」 |
伊織 | 「納得したわ。この部分を掴めば…何とかなりそう」 |
律子 | 「この曲は竜宮小町にとって勝負の曲になるから、しっかりね」 |
伊織 | 「ええ。このタイアップが成功すれば一気にファン数も伸びそうよね」 |
律子 | 「特に伊織は今回センターだからしっかりしてもらうわよ」 |
伊織 | 「当然じゃない。ローテーションだから仕方ないけどセンターも久しぶりだもの」 |
律子 | 「これが良ければ、後期のも任せるって言われてるのよ」 |
伊織 | 「これって事務所にとっても…ってことなのね」 |
律子 | 「そういうことになるわ。いくらま〜ちがいるからって言ったって、いつまでもそれだけってわけにもね」 |
伊織 | 「私と亜美とあずさ…第二のま〜ちになれるかしら?」 |
律子 | 「あら、自信が無いの?」 |
伊織 | 「そんなわけないじゃない!だって…目の前にその目標がいるんだから」 |
律子 | 「そうよね、貴方達がやれるって信じているから、私が今プロデューサーしてるのよ」 |
伊織 | 「…それには律子のサポートが絶対に必要よ」 |
律子 | 「一人前になるまで、なってからもちゃんと全力でサポートするわ」 |
伊織 | 「さあて、もう一回だけ…今日はこれで最後決めてあげるわ」 |
律子 | 「よし、分かったわ」 |
……… |
伊織 | 「今日は本当に疲れたわ…ちゃんとクールダウンしなくちゃ…」 |
律子 | 「私も…筋肉痛怖いからちゃんと整理体操しなくちゃだわ…」 |
伊織 | 「でも…正直負けたわ。律子の能力と気持ちに」 |
律子 | 「フフフ、これでも夢はまだ大きいから。じゃあ軽く体操して、ここ掃除して事務所に戻りましょ」 |
伊織 | 「そうね、今日は特訓に付き合ってくれてありがと」 |
律子 | 「どういたしまして、来月の発売イベントまで頑張りましょ」 |
伊織の瞳に映る律子、それは今までと少し違うものとなっていたという… |