小鳥 | 「おつかれさまです、プロデューサーさん」 |
かたんっ かたん |
ここは夕刻の事務所。アイドル達や社長はみんな帰り、プロデューサーが仕事をまとめているところにコーヒーを二つ持った小鳥がやってきた。 |
P | 「ありがとう、小鳥さん」 |
小鳥 | 「大変そうですね、千早ちゃんと雪歩ちゃんと春香ちゃんの、えっと…」 |
P | 「ユニット名ですか?プラハですよ」 |
小鳥 | 「あ、はい。そのプラハはどうですか?」 |
P | 「うーん、何とかなりそうです。最初はどうなることかとは思いましたけど」 |
小鳥 | 「でも、どうしてプラハなんて名前になったんです?」 |
P | 「ちょっとユニット名を考えてた時にWikipediaを見てて、それでですよ」 |
小鳥 | 「え?えっと…」 |
P | 「プラハって言うのは、チェコの首都なんです」 |
小鳥 | 「チェコ?」 |
P | 「チェコの国旗って赤と青と白で、3人のイメージカラーがそれですから」 |
小鳥 | 「なるほど…深いですね」 |
P | 「本当に最初は千早が雪歩を泣かしたり、春香を叱り付けたり…雪歩も自己主張は意外と強いですから大変でしたよ」 |
小鳥 | 「そうですね、意外と雪歩ちゃんは底に持ってますからね」 |
P | 「でも、今はもうすぐCランクですからお互いを認め合ってるみたいですよ」 |
小鳥 | 「秋のま〜ちはどうですか?」 |
P | 「最初は意外な組み合わせって言われましたけど、息が合ってていいみたいです」 |
小鳥 | 「律子さんとやよいちゃんですものね」 |
P | 「あの二人って声質が合うんです、だから幅広く何でもできるみたいでいいですよ」 |
小鳥 | 「でもプロデューサーさんも、ご自愛してくださいね。二組も同時なんて大変じゃないですか?」 |
P | 「そうでもないよ、意外と楽しいですから」 |
小鳥 | 「そうですか…」 |
P | 「それはそうとどうして小鳥さん、まだ居るんですか?」 |
小鳥 | 「え?あ、あの…何だかプロデューサーさんが忙しそうだったんで…」 |
P | 「確かに忙しいけど…鍵閉めは別に俺でも構わないんだから、先に帰ってもらっても良かったのに」 |
小鳥 | 「えっと…実はちょっと…」 |
P | 「ん?何か俺に相談とかですか?」 |
小鳥 | 「はい、そういうことになりますけど…えっと…」 |
P | 「何だか言い難そうですね…場所変えますか?下で飲みながらとか」 |
小鳥 | 「いえいえいえいえ、そういうわけにもいかないんです」 |
P | 「それじゃあどうしましょうか?」 |
小鳥 | 「あの…買い物に付き合っていただきたくて…」 |
P | 「それなら構わないですよ、今すぐ行きますか?」 |
小鳥 | 「出来ればそうしたいですが、お仕事まだですよね?」 |
P | 「いや、いいんですよ。あと少しだけですから」 |
小鳥 | 「あと少しなら…手伝いましょうか?」 |
P | 「…いいんですか?」 |
小鳥 | 「はい、何をしましょうか?」 |
P | 「それなら…これをお願いできますか?」 |
小鳥 | 「はい、えっと…プロデューサーさん、領収書はまとめて出さないで下さいね」 |
P | 「すみません最近忙しくて…自重します」 |
小鳥 | 「領収書は本当にこれだけですか?」 |
P | 「あとは…確か無いはずです。本当にすみません」 |
小鳥 | 「フフフ、これからはこんなことしちゃダメですよ」 |
P | 「分かりました………ん?」 |
小鳥 | 「え?ど・どうかしました?」 |
P | 「何だか小鳥さん、いつもとちょっと雰囲気が違うなって」 |
小鳥 | 「そ・そうですか?」 |
P | 「あ、そろそろ着替えてもらっていいですよ。これで終わりなんで」 |
小鳥 | 「は、はい分かりました。それでは失礼しますね」 |
……… |
P | 「ふう、これで一段落っと。明日の予定は…秋のま〜ちはオフ、プラハの方が夜に生出演と言うことは夕方くらいからリハか」 |
小鳥 | 「終わりましたか?プロデューサーさん」 |
P | 「はい、やっぱりランクも上がると処理することが多くなりますね」 |
小鳥 | 「そうですね、来るプレゼントやファンレターの量も桁違いです」 |
P | 「そういえば、雪歩が喜んでたな…新潟のお茶だったかな?」 |
小鳥 | 「律子ちゃんにはあの小説の作者から直々に新作が来ましたし」 |
P | 「でもやよいに来た大量のお菓子には参ったけどね」 |
小鳥 | 「フフフ、そんなのもありましたっけ」 |
P | 「忙しくなればなるほど辛いですけど、そういうのもあるので楽しいですよ」 |
小鳥 | 「でも、本当に身体だけは壊さないようにしてくださいね」 |
P | 「分かってます、俺が抜けたらどうしようもないのは分かってますから」 |
小鳥 | 「プロデューサーさん、もう大丈夫なんですよね?」 |
P | 「もう大丈夫です。それじゃあ行きましょうか」 |
小鳥 | 「はい、すみません突然の私のわがままなのに」 |
P | 「いいんですよ、たまにはこういうのもありかなと思いましたから」 |
……… |
P | 「え?俺の…ですか?」 |
小鳥 | 「最近アイドルの皆さんに構ってばかりで、身なりが疎かになっていましたよ」 |
P | 「そう言われるとそうかもしれないなあ…」 |
小鳥 | 「靴もこんなになってしまって…」 |
P | 「確かに入社以来ずっとこの靴だったからなあ…」 |
小鳥 | 「納得しました、それだけ765プロのために頑張ってくれてるんですね」 |
P | 「でも、いいんですか?結構高いですけど…」 |
小鳥 | 「いいんです、たまにはお姉さんを頼ってください」 |
P | 「それならその代わりに晩御飯は奢らせてください」 |
小鳥 | 「うーん…はい、そこまでプロデューサーさんが言うならそうしましょう」 |
P | 「でもどうしてそんな所に気付いたんですか?」 |
小鳥 | 「いつも…見てましたから」 |
P | 「……え?いつも?」 |
小鳥 | 「事務所に居る時はいつもですよ。それって変ですか?」 |
P | 「えっと…いや、変ってことは無いと思いますけど…」 |
小鳥 | 「だって、好きな人を見てるだけですから」 |
P | 「……小鳥さん、好きな人っていうのは冗談ですか?」 |
小鳥 | 「今の言葉、そう聞こえました?」 |
P | 「いえ…でも…」 |
小鳥 | 「好きなんです、プロデューサーさんのことが」 |
P | 「小鳥さん…本気ですか?」 |
小鳥 | 「私は本気ですよ。ダメ…ですか?」 |
P | 「こんな俺で良いんですか?本当に」 |
小鳥 | 「プロデューサーさんだからです、だって…」 |
P | 「俺だから?」 |
小鳥 | 「だって、この事務所で出会いなんて無いと思ったのに…こんな良い人に出会えるなんて思わなくて…」 |
P | 「そ…それはそうですけど。小鳥さんくらい美人なら俺じゃなくっても…」 |
小鳥 | 「もう、私はプロデューサーさんがいいんです。だって…」 |
ぎゅっ |
小鳥はプロデューサーへと抱きついた。 |
小鳥 | 「やっと見つかった…私の…大切にしたい人…」 |
P | 「小鳥さん…」 |
ぎゅぅっ |
プロデューサーはそっと小鳥を抱き返した。 |
小鳥 | 「フフフ…温かいです…とっても」 |
P | 「俺もですよ…」 |
……… |
翌日のこと、本番前のプラハとの楽屋にて… |
雪歩 | 「あ…あの、プロデューサー」 |
P | 「ん?どうした雪歩」 |
雪歩 | 「あの…昨日の6時半くらいに…その…」 |
P | 「昨日の6時半?雪歩、何か見たのか?」 |
雪歩 | 「その…プロデューサーみたいな人が女性と靴屋に居るのを偶然…その…」 |
P | 「わーーー!皆まで言わなくても分かったから!」 |
春香 | 「え?何?何?雪歩。詳しく聞かせて」 |
千早 | 「ちょっと聞き捨てなりませんね、プロデューサー」 |
P | 「春香に千早まで!何でも無いってば何でも!」 |
雪歩 | 「だ…だって、プロデューサーとその女性が抱き合…」 |
春香・千早 | 「「プーローデューーサぁー!!!」」 |
P | 「お、落ち着け千早も春香も。本番終わったら白状するから」 |
千早 | 「…分かりました、ここは諌めます。でも、必ずですからね」 |
春香 | 「ぶーぶー、本当に本当に聞かせてくださいね」 |
P | 「トホホ…まあいずれはバレることだしな…でもこんな早くとは…」 |
これがその当日中に候補生を含めたアイドル全員に伝わるのは、想像に難くなかったという… |