Beyond Geographical Distances(距離を越えて)

春香「おはようございます、プロデューサーさん!」
「おはよう、春香」
春香「ふぅ…間に合って良かったぁ」
「どうしたんだ?…って凄い汗じゃないか。はい、ハンカチ」
春香「え?あ、ありがとうございます」
ポンポンポン
プロデューサーのハンカチで顔の汗を押さえる春香。
春香「あ…このハンカチどうしたら」
「…そうだな、どうしよう…ま、いいやそのまま返してもらっても」
春香「え?でも汚いですよ」
「そんなこと無いぞ、春香のだったら別に…」
春香「プロデューサーさん、それってちょっと…」
「いや、そういう意味とかじゃないからな」
春香「でも、そうとしか聞こえないですよ本当に」
「まあいいじゃないか、春香」
春香「あ、それじゃあ一旦お返ししますね」
「ああ。それにしてもどうしたんだ?」
春香「えっと、始発に乗り遅れちゃって…一本後の電車でギリギリだったんです」
「なるほどな。2時間だもんなあ」
春香「プロデューサーさんは何でここに来てるんですか?」
「俺か?俺は一応車使ってるけど」
春香「いいなあ…プロデューサーさん」
「それでも30分以上かかるんだぞ、ガソリン代も馬鹿にならないし」
春香「でも自由に来れるじゃないですか、寒くもないし」
「確かにな。あ、でもどうするんだ?卒業しても芸能活動とかはするつもりだろ?」
春香「も、もちろんですよ」
「そうなると…ずっと遠距離っていうのも辛いだろ?」
春香「そうですね。みんな大学とか就職も東京にしたいとか言ってますから」
「こっちに住む気とかはあるんだろ?」
春香「一人暮らし…ですよね」
「そういうことになるだろ、親御さんが一緒に来ない限りはな」
春香「うーん…プロデューサーさんはどうなんですか?」
「俺、俺か?まあ男の一人所帯だからな、普通だぞ」
春香「でもやっぱり一人だと大変ですか?」
「そうだな…こういうとこに居るから食事は外で済ませることも多いけど、洗濯やら掃除も一人だからな」
春香「なるほど…あ、でも家事全般なら大丈夫かな」
「あと女の子一人だと防犯とかそういうのにも気を配らないといけないしな」
春香「むー…あ、あずささんとか小鳥さんも一人暮らしですよね?」
「ああ、そういえばそうだな」
春香「その辺は聞いて参考にしてみます」
「それならまあ…参考になるかは分からないが、俺の家を見てみるか?」
春香「えっ?いいんですか?」
「俺が良いって言ってるんだから。あ、でもまずいかな?」
春香「どうしてですか?」
「だって仮にも春香はアイドルなんだぞ。俺みたいな家に出入りする所を見られたら…」
春香「間違いなく悪徳記者の格好の餌食ですね」
「ああ、さすがにランクが高かろうと低かろうとスキャンダルは拙いよな」
小鳥「それなら私の家はどうですか?」
「え?」
と、そこに居たのは…
春香「小鳥さん!いいんですか?」
小鳥「私のマンションなら問題無いでしょ?」
「どうでしょうかね?」
小鳥「プロデューサーさんの所だと男名前で拙いと思いますけど、私の所ならたぶん…」
春香「なるほど…言われてみれば確かにそうですね」
「じゃあ今度の休みでも…って小鳥さんは大丈夫ですか?」
小鳥「ちょっと待ってくださいね…はい、大丈夫ですよ」
春香「それなら今度の休みにお邪魔しちゃいますね」
小鳥「はい、どうぞいらっしゃい」
………
そしてその当日…
春香「プロデューサーさんは、小鳥さんの家に行ったことがあるんですか?」
「俺?ああ、何度というレベルじゃないけどな」
春香「あ、そっか。小鳥さんとプロデューサーさんって…」
「ま、まあな。だからけっこう来てることは来てるぞ」
春香「いいなあ…私もそんな人ができるかな?」
「おいおい、今スキャンダル起こしたらどうなるか分かってるのか?」
春香「はーい」
「この先のマンションだぞ、ほら見えてきたアレだ」
春香「うわあ…小鳥さんってこんなところに住んでたんですね」
「ま、詳しくは中に入ってからのお楽しみってところだがな」
春香「そうですね」
 
ピンポーン
小鳥「はーい」
春香「小鳥さん、春香ですー」
「こんにちは、付き添いの者ですが…って俺ですよ」
小鳥「いらっしゃい、今開けるわね」
ガチャン ガチャっ
中から鍵を開ける音。そしてドアを開ける小鳥の姿があった。
小鳥「いらっしゃい、春香ちゃんにプロデューサーさん」
春香「おじゃましまーす…うわぁ…」
小鳥「おじゃまします…ってどうした?春香、そんなに驚くなんて」
春香「小鳥さん、私の部屋と全然違うなって」
小鳥「そうかしら?まあこんな所で立ってるのもアレだし、入って」
「そうですね」
春香「それじゃああらためて、おじゃましまーす」
 
各部屋を見て回って最後に…
小鳥「ここが恥ずかしいけど…寝室ね」
春香「…プロデューサーさん、いつも小鳥さんとここで…」
「そ、それは…」
春香「グスン…プロデューサーさんがそんな人だったなんて…」
「わー!春香、誤解を招くようなことを言うなぁ!」
小鳥「じとー…プロデューサーさん、春香ちゃんと何かしたんですね?」
「小鳥さんまでっ!そんなこと無いですってば!」
小鳥「分かってます。プロデューサーさんのことは信用してますから」
「小鳥さん…」
春香「うー…何だか良い雰囲気作ってるし…」
小鳥「春香ちゃんもいずれ恋人が出来たら分かるわよ」
春香「そんなこと言われたら余計惨めですよぉ…」
「でもどうだった?これで参考になったか?」
春香「あ、はい。とってもためになりました」
小鳥「でも生活スタイルは人それぞれだから、参考までにしてね」
春香「はいっ」
小鳥「よろしい。じゃあこのままお昼ご飯にしましょ」
春香「え?小鳥さん、いいんですか?」
小鳥「二人が来るってことだから用意してたの。食べていってね」
「ありがとうございます、小鳥さんこのお礼は今度…しますから」
小鳥「いいんです、プロデューサーさん。ほら、冷めちゃわないうちに」
小鳥さんの作った手料理は三人で美味しく頂きましたとさ。
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あとがき
ども、飛神宮子です。
ちょっと別ネタも書いてまして、それでこっちの執筆が遅れました。
あ、あの30分というのは私の通学時間です。マジですよ。
ガソリン代も下がってきたとはいえ、まだまだ高い水準。ツライ時代です、本当に。
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2008・11・25TUE
飛神宮子
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