Developmental Stage(成長の一段階)

ここはある日の歌番組の収録スタジオ…
「やっぱり凄いっ…美希センパイのパフォーマンス…」
別番組の収録を早く終えて、偶然通りかかったスタジオで収録を見ていた少女がそう呟いた。
「同じ中学生なのに、あたしはやっぱりまだまだだなぁ…」
どうやらこの少女もアイドルのようである。
「あ、終わったのかな?あたしはそろそろ帰らないと…」
収録が完了して、周りがにわかに騒ぎ始めた。と、そこに…
美希「あ、愛だ。おーい、愛ー!」
「えっ!?」
美希の方も愛の存在に気が付いていたようだ。愛は美希の許へと向かった。
美希「ヤッホー、愛。どしたの?ミキの収録見に来た?」
「こんにちは美希センパイ。ちょうどこの局の別のスタジオで違う番組の収録があって」
美希「そうなんだ、今度確認するね」
「ありがとうございます。それでたまたま早く終わってスタジオの前を通りかかったら、美希センパイが収録中だって書いてあったんで入っちゃいました」
美希「んー、ミキのどうだった?」
「凄いですっ!歌もダンスもあたしなんかとても及ばないくらいでしたっ」
美希「そんなことないよ。ミキだってこんなんじゃまだまだだよ」
「そうですか?あたしには凄いパフォーマンスに見えてましたよ」
美希「ううん、こんなんじゃとりあえず合格点くらいだよ。ミキの目指しているところはもっと高いところだもん」
「そうなんですか…あたしの追い付けるような場所じゃないです…」
美希「そんなことないと思うよ…ってあっ、ハニー!」
「おつかれさま美希。と…あ、こんにちは日高さん」
「あ、こんにちは美希センパイのプロデューサーさん」
「日高さんも今日はこの局で収録だったのかい?」
「はい。○○○○の○○○って番組にゲストで呼ばれたんです」
「お、あの番組かい。あの番組はアイドルにとっては縁起のいい番組なんだよね」
「え?そうだったんですか?」
「そうだよ。あの番組に呼ばれたアイドルは、その後みんなアイドルランクがどんどん上がるって有名だよ」
「ええっ!あ、あたしそれ初耳ですよ!」
美希「おめでと。愛もこれできっと有名なアイドルになるね」
「な、何だか恥ずかしいかも」
「まあこんなところで立ち話も何だし、日高さんもこれから美希の楽屋に来るかい?」
「え?いいんですか?」
美希「愛は時間は大丈夫なの?」
「時間は今日収録が終わったら楽屋に戻って事務所に…ああっ!」
「ど、どうしたんだい?」
「自分の楽屋に戻るの忘れてましたっ!まなみさん待たせちゃってるしぃぃ…怒ってるかも…」
美希「やれやれ、愛もおっちょこちょいさんなの」
「一度楽屋に戻ってから、そっちにたぶん行きますねー!」
愛はダッシュで自分の楽屋へと向かって行った。
「よし、美希も戻るか」
美希「そだね」
美希とプロデューサーはスタッフに挨拶をして、楽屋へと戻って行った。
………
コンコン
美希の楽屋のドアからノックの音が響き渡る。
「どちらさまでしょう?」
「日高です、876プロの日高愛です」
「いいんだよな?美希」
美希「うん」
「はい、今鍵開けます」
ガチャッ ガチャンっ
まなみ「どうも先ほどはうちの日高がご迷惑を…」
「いや、別に大丈夫でしたよ」
美希「愛、大丈夫だった?」
「うー、まなみさんにこってりと叱られちゃいました」
まなみ「もう、後ろ振り向いたらいないって思ったら…」
「だって、美希センパイの撮影があるって書いてあったからつい…」
まなみ「まあちゃんと帰ってきたからいいけど…」
「それで今日の曲はいつ放送されるんですか?」
美希「んーと、いつだっけ?ハニー」
「ちょっと待ってな…えっと、今のところは再来週の火曜日の番組だな」
「これは絶対予約しとこっと」
美希「そういえば愛って○○○○の○○○で、あの人にどんなこと聞かれた?」
「えっと、ママのこととか業界に入った切欠とか、将来の夢とか聞かれましたよ」
美希「そっか。あの司会の人、結構鋭い質問してくるよね」
「はいっ。何かあたしのこと見透かされちゃったって感じです」
美希「そうだよね。ミキの時も結構ズバズバって聞かれちゃったもん」
「でもさっきの話を聞いたら、ああなるほどって思っちゃいました。質問の殆どが今後に繋がる物でしたから」
美希「だから業界の人でもあの番組って見てる人が多いんだよね?ハニー」
「そうらしいな。その人の素の部分を引き出す番組だって言われてるからな」
「あー、何か心配になってきちゃった。あたし、変なこと言ってないかなあ…」
「そうなんだよなあ…あの番組、ほぼ撮って出しだから修正出来ないからなあ…」
まなみ「大丈夫よ。私が見た限りは変なことは言ってなかったわ」
「本当ですか?まなみさん」
まなみ「ええ。でも本当によく喋ったわね」
「つい調子に乗せられちゃって…」
「あの司会の人、乗せ方が上手いからなあ」
美希「うんうん。普段あんまり喋りたがらない千早が、あの番組では饒舌だったの」
「千早はあの後、気持ち良かったって言ってたくらいだ」
美希「あ、そうなんだ。でも愛、放送後は忙しくなるよきっと」
「本当ですか?美希センパイ」
美希「ミキもあの番組の後、仕事が立て続けに入ったもん…ね?」
「そうだったな。スケジュール調整が手間取ったくらいに入ってた」
「まなみさん、ほらさっき話した通りじゃないですか」
まなみ「やっぱりあの話って本当なんですね?」
「うちは全員そうでしたよ。でもあの番組に出ること自体、それなりに実力があることが必要ですけど」
まなみ「…やっと愛もここまで成長したのね」
「まなみさん、いつまでもあたしを子供扱いしてー」
まなみ「だからそういうところが子供なんだって…」
「それに耐えきれなくなって没落してった子も他の事務所でいましたけど、大抵は実力があるんで乗り切りますよ」
まなみ「大丈夫よね?愛」
「はいっ!」
まなみ「よし、じゃあそろそろ事務所に帰りましょ」
「えー、もうそんな時間ですか?」
まなみ「今から戻らないと、渋滞に巻き込まれて余計に遅くなるわよ」
「お…そうか、うちらもだ。美希、帰る準備は大丈夫だな?」
美希「うん。今日は送ってくれるんだよね?ハニー」
「仕方ないな、収録で疲れただろ?送ってくよ」
美希「わーい!ありがとなの」
まなみ「じゃあ、これでおいとまします。また次の機会にでも」
「はい。今度は同じ番組で逢えればと思います」
「美希センパイ、お話ありがとうございましたっ」
美希「いいのいいの。愛も頑張ってね」
そんな美希の表情には少し先輩という何かが見え隠れしていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
これが一つ前の小鳥・真美SSに順番を追い越されたSSです。
実は元961と876は、何気に今作が初めてとなります。
いやー、難しい難しい。この二人は片方だけでも難しいのに、絡ませるとなると難易度は過酷でしたよ…。
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2011・06・30THU
飛神宮子
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