Creature of Chance(偶然の産物)

ここはある日のとあるショッピング街…
「ママー!じゃあ5時にまたここねー!」
ある元気な少女が一人、母親と別れて単独行動に入ったようだ。
「さってと、どうしよっかなぁ…時間はもらったけど、特に買いたい物も無かったっけかなー…」
そんな目に飛び込んできた、一つのポスター…
「えっと…三浦あずさ…写真集発売記念…サイン&握手会…あずささんのサイン会!?」
その題目に思わず目を見開いた。
「まだ大丈夫かな?でも写真集かあ…」
財布と顔を見合わせるその少女。
「まずはいくらか見に行こっと」
そのまま書店の中へと向かっていった。
………
「うわあ、もう並んでるなあ…」
まずは売り場へと向かった。
「えっと、これを買えばいいんだっけ…」
写真集のポップを確認するその少女。
「うん、2100円かあ…でもこれからの資料として買うのも悪くないよね」
その写真集を持ってレジへと行くと…
「うわぁ、こっちも行列だよー」
そこには買い求める人の長蛇の列が出来ていた。
「そんなこと言っててもしょうがないし並ぼーっと」
………
ここはその書店の控室になっている部屋。
あずさ「プロデューサーさん、今はどれくらいですか〜?」
「そうですね、10分前くらいでしたけどもう50人くらいは並んでましたよ」
あずさ「開場までだと、まだまだ増えるでしょうか〜」
「そうでしょうね。あずささんほどの人気だと200人は越えるでしょうね」
あずさ「そんなぁ、プロデューサーさん言い過ぎじゃないですかぁ?」
「そんなことないですって。あずささんは今はもう人気アイドルの一角なんですから」
あずさ「フフフ、ありがとうございます〜」
「でも大丈夫ですか?寒かったりしません?」
あずさ「大丈夫ですー。会場まではこれを着て行っていいんですよね?」
「はい。サイン会の時はそっちの服を着てもらいますけど…水着の上からで大丈夫ですか?」
あずさ「あの服ならたぶんいけますね〜」
「事務所まで着てもらうのも大丈夫です?事務所でまとめて脱いでもらってクリーニング出したいんで」
あずさ「あ、はい〜。あ、でもぉオイタに使っちゃダメですよ〜、プロデューサーさん」
「そんなことするわけないじゃないですか。ちゃんとすぐに小鳥さんに渡しますから」
あずさ「お願いします」
「でも、今回の写真集もかなり売り上げが好調で、次回作がもうすぐにでもって話ですよ」
あずさ「今度はどこで撮るんですか?」
「まだそこは調整中です。歌番組とかの日程もありますし、他にもお仕事色々ありますから」
あずさ「分かりました〜」
そこに…
コンコン
スタッフ『三浦さん、そろそろ時間ですがよろしいでしょうか?』
あずさ「は〜い」
「じゃあ行きましょうか。ガウンの前をちゃんと閉めてっと」
ガチャっ
あずさ「今日はよろしくお願いします〜。えっと…高橋さんで良かったでしょうか?」
スタッフ『はい、今日はよろしくお願いします。ではご案内しますね』
「さてコレとコレを持っていけばいいか」
………
サイン&握手会前の記者会見も終わり…
あずさ「ふぅ〜凄い人でしたね〜」
「やっぱりもう記者たちの後ろに結構並んでましたね」
スタッフ『今のところ250人くらいだと、さっき営業の方から連絡がありましたよ』
あずさ「そんなにですか、嬉しいわ〜」
「これもやっぱり人気アイドルだって証拠ですよ、あずささん」
あずさ「これからもっと精進しないと…ですね」
「これからも頑張っていきましょう」
あずさ「さて、これを着ればいいんですね?」
「はい。あの…やっぱりそういう胸を強調した衣装になってしまって…スミマセン」
あずさ「プロデューサーさんがそうやって謝らないでください。私もこれで勝負してきたんですから〜」
「そうですけど…でもやっぱりもう少し違う形にできないかなって考えたんですけどね…」
あずさ「私がこれで良いって思ってるんですから、これでいいんです〜」
「何だか気を使わせてしまって、ありがとうございます」
あずさ「フフフ、いいんです。じゃあこれ今から着ますね」
「お願いします」
………
ここはサイン会&握手会の会場…
あずさ「ありがとうございます〜」
サラサラサラサラ
ズラッと並んだ行列、あずさのペンも勢い良く走っていく。
ぎゅうっ
そして握手。
あずさ「お買い上げ、ありがとうございます〜」
サラサラサラサラ ぎゅうっ
サインと握手が繰り返されていく…
「あ…もう少しでアタシの番だっ…」
あと何人かのところにさっきの少女はいた。
「ど、どうしよう…」
いよいよその少女の番になった。
あずさ「ありがとうございます〜、あら?女の子ね?」
「は、はい」
あずさ「サインには名前入れた方がいいかしら?」
「あ、お、お願いしますっ」
あずさ「お名前は?」
「ひ、日高愛ですっ」
その少女は緊張のあまり、ついフルネームで言ってしまった。
あずさ「え?日高愛って…876プロの愛ちゃんっ!?」
「あ、あっ…す、スミマセンっ!そ、その…」
気が動転している愛。
あずさ「もう愛ちゃん、来てたのなら言ってくれたら良かったのに〜」
「その…今日は買い物に出てて偶然だったからなんですっ」
あずさ「フフフ、後でゆっくりお話しましょ。プロデューサーさん、愛ちゃんを控え室にお願いできますか?」
「あ、はい。じゃあちょっと行ってきますね、高橋さんちょっとこっちはお願いします」
スタッフ『分かりました』
………
サイン会も終わり、控え室へと戻ってきたあずさとプロデューサー。
「今日はサイン会であんなことしちゃってスミマセンでしたっ」
謝罪のためか頭を下げた愛。
あずさ「いいのよ、愛ちゃん。急だったからこっちもビックリしちゃっただけよ〜」
「でも…」
あずさ「今日は買い物だったの?」
「あ、はいっ。今日はママと買い物に来てて、自由時間を貰ってたんです」
あずさ「それで私のポスターを見つけて来たのね〜?」
「そうですっ。あの…やっぱり迷惑だったですか?」
あずさ「そんなことないわよ」
「そういえばどうしてこれを買ったんだい?日高さん」
「握手会があるって書いてあったから、会えるかなって思ったのと…あと、今後の参考になるかなって思って…」
あずさ「フフフ、こんな私でも参考になれたら嬉しいわ〜」
「なるほど…それなら今までのも日高さんにプレゼントしようかな?」
あずさ「そうですね〜、プロデューサーさん」
「え?い、いいんですかっ?」
「それくらいならいいんじゃないかな。うちの他の子の分も一緒に事務所に送っておくよ」
「ありがとうございますっ!」
数日後の876プロには、ダンボール数箱分の愛への荷物が届いたという…その後それらは資料として保管されたらしい…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
愛とあずさ、意外な初顔合わせです。
愛としては本当は会って軽く握手しながらお話してって感じだったんでしょうね。
自分より上のランクのアイドル、増してやそれが間近。それは緊張することでしょう。
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2012・04・25WED
飛神宮子
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