Copperplate the Sky(空がきれい)

あずさ23歳の夏…
あずさ「プロデューサーさん?」
くぅ…すぅ…
あずさ「プロデューサーさん?」
ぐぅ…くぅ…
あずさ「あらぁ、眠ってしまっちゃったんですね…」
つんつん
あずさは隣の座席で眠っていたプロデューサーの頬を突いた。
「んっ…んーっ!あ、あずささんですか?突いてたのって」
あずさ「はい…フフフ、プロデューサーさん、お疲れみたいですね?」
「すみません。本当はあずささんのこと守ってあげなくちゃなのに寝ちゃって」
あずさ「いいえ…私のことこの撮影中守ってくれていたんですから…今は休んでてください〜」
「ふわーあ、すみません。でももう大丈夫です、目が覚めましたよ」
あずさ「そうですか…」
ここはグラビアと新曲のプロモーションビデオ撮影帰りの飛行機の中である。
「そういうあずささんこそ、4時間大丈夫ですか?」
あずさ「はい〜、でも4時間くらいなら新幹線でもそんなに遠くないですよね〜?」
「4時間だと広島くらいですかね。そんな近いわけでもないですよ」
あずさ「あら〜、名古屋くらいだと思ってました〜」
「名古屋だと3時間くらいですって。でも、この後新幹線移動もあるんですから」
実は混乱を避けるために、地方空港に降り立つ便にしたのである。
あずさ「全部合わせたら帰りは夜10時くらいですよね?」
「そうなりますね。でも名古屋の時は本当に大変だったんですから」
あずさ「何ででしょう〜?自然と行ってしまって〜」
「無事で良かったですよ、本当に…」
ぎゅうっ
プロデューサーは隣のあずさをそっと抱き寄せた。
あずさ「プ、プロデューサーさん?!」
「無事でいてくれて…本当に良かったです」
あずさ「わ、私…思っていた以上にプロデューサーさんに心配をかけていたんですね…」
「本当に心配したんですから」
あずさ「でもそれからもずっと私についていてくれて…」
「それは…」
キョロキョロ
プロデューサーは自分の周りの人が寝ていることとCAが周りにいないことを確認して…
チュッ
あずさの頬にそっとキスをした。
「何だかずっと守ってあげたいって思ったからですよ」
あずさ「プロデューサーさん…」
「でもあずささんこそ…運命の人を見つけるってこの世界に入ったんですよね?」
あずさ「はい…そうでしたね」
「運命の人は見つかりました?」
あずさ「どうなんでしょう…?でもその…」
キョロキョロ
あずさも周りの人が寝ていることとCAが周りにいないことを確認して…
チュッ
プロデューサーの頬にキスをした。
あずさ「プロデューサーさんが一番近くにいてくれる人…ですから」
「あずささん…」
あずさ「この世界に入って一番近くにいてくれたのは他ならぬプロデューサーさんです」
「でももう3年…いや、それ以上ですか」
あずさ「そんなになるんですね〜」
「どうですか?ここまでアイドル続けてみて」
あずさ「こんな私がここまでのアイドルになれるなんて思ってもなかったです」
「でもこれは素質があったからですよ」
あずさ「素質…ですか?」
「最初は身体が一番で見られてましたけど、歌だって上手いって知られるようになって…」
あずさ「歌は…昔から好きでしたから」
「でも最初の頃は本当にすみませんでした」
あずさ「何がでしょう?」
「俺も暗中模索で、売り出し方とかよくわからなくって…どっちかって言うと身体で勝負させてしまってましたよね」
あずさ「それは仕方ないです。まずは注目されなくちゃなんですから〜」
「音楽祭はステップを覚えるのが大変そうでしたよね」
あずさ「ダンスはちょっと苦手でしたから…真ちゃんとかにも助けてもらいました」
「あの時ですよ、初めてあずささんが努力の人だって知ったのは」
あずさ「むー、ずっとそうでした、プロデューサーさん」
少し拗ねた顔になったあずさ。
「ああっ、すみません。こんな風に言うつもりは無かったんですって」
あずさ「もう…」
チュッ
あずさ「プロデューサーさんに見えないところで少しずつ努力はしていたんですから」
「そうですよね。確か一日経ったら凄い変わりようだった時ありましたっけ」
あずさ「あの3日後すぐに急に仕事が入った時ですよね」
「そうですそうです。1日で仕上げてきてみんなびっくりしましたよ」
あずさ「プロデューサーさんのこと…困らせたくありませんでしたから…」
「あずささん…」
あずさ「でもプロデューサーさんには私も色々助けてもらいました…」
「本当に二人三脚で…ここまでやっと来れましたね」
あずさ「はい…」
「あずささん、一つ聞いてもいいですか?」
あずさ「何でしょう?」
「アイドルとしてやり残したことって…ありますか?」
あずさ「どうでしょうか…難しい質問です〜」
「その…もう一度聞きますけど、この世界に入った切欠って運命の人を探すことでしたよね?」
あずさ「はい…」
プロデューサーの目がそこで変わったように見えた。
「この仕事が終わったら言おうと思っていたんです」
あずさ「えっ…?!」
「あずささん…左手出してもらえますか?」
少し戸惑いながら左手を出すあずさ。
カパッ つつつつつ
その左手の薬指に指輪を通したプロデューサー。
「俺と結婚…してくれませんか?」
あずさ「プ、プロデューサーさんっ…!」
ぎゅうっ
プロデューサーにしな垂れるあずさ。
あずさ「プロデューサーさん、私で…良いんですか?」
「これからもずっと一緒に過ごしたい…俺はあずささん以外それが考えられませんでした」
あずさ「あの…その…はい…」
あずさのその瞳には一筋の嬉し涙が溢れていた。
そしてその指には銀色で宝石が嵌められた一つのリングが確かに輝いていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
あなたへの想い、あずさ編です。
あずささんの場合は元より運命の人を探すことがこの世界に入った目的。
当たり前に傍に居てくれたから…この世界に入ったのはきっとこの人とともに過ごすため…ということでしょう。
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2011・09・20TUE
飛神宮子
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