ここはある日の…どこだろう? |
ツルルルル |
誰かが何やら麺類を啜っているようだ。 |
春香 | 「貴音さん、味はどうですか?」 |
貴音 | 「この味はっ!この濃厚な味噌、そしてこの大盛のキャベツとモヤシ…それに程よく火が通っていて…」 |
春香 | 「なるほどぉ…」 |
貴音 | 「そしてこの麺!この味に負けずのこの極太の縮れ麺…この器もすり鉢というのも面白い」 |
どうやらどこかのラーメン屋のようだ。 |
春香 | 「私も食べてみます…」 |
スーーー |
まずはスープから一口飲む春香。 |
春香 | 「うわぁ凄い濃いですね…」 |
春香は薄めるためのスープを自分の椀へと注ぎ足した。 |
貴音 | 「春香はこの味が濃いのですか?」 |
春香 | 「貴音さんは大丈夫なんですか?」 |
貴音 | 「ええ…そのままの味をまずは真剣に味わいたく思いますので…」 |
春香 | 「でもやっぱり私には濃いかなって」 |
貴音 | 「でも確かにこれほど濃いのはわたくしも初めてです…」 |
春香 | 「それにこの野菜の量、凄いですね」 |
貴音 | 「全部食べられますか?春香」 |
春香 | 「んー…たぶん大丈夫だと思いますけど…」 |
貴音 | 「もし野菜が多いようでしたら、わたくしにお分けになってください」 |
春香 | 「分かりました。まず食べられるだけ食べてみます」 |
貴音 | 「しかし…今回のロケは、やよいが来られなかったのは残念でありますね…」 |
春香 | 「確かにこれだけモヤシがいっぱいなら、やよいが喜んで食べそうですよね」 |
貴音 | 「ただ今回やよいは…」 |
春香 | 「はいっ、ラジオの生放送で予定が合わなくって…」 |
貴音 | 「もうこの時間ですからそろそろですね…」 |
春香 | 「あれ?そういえばこのラーメン屋のある県って放送地域じゃなかったですか?」 |
貴音 | 「どうでしょう…店主、こちらにはFM ○○○という放送局はありますでしょうか?」 |
店主 | 『聴くかい?2時からの番組』 |
貴音 | 「よろしいのでしょうか?」 |
店主 | 『ああ、ちょっと待ってな。今ラジオ持ってくるな』 |
貴音 | 「あ、しかしその前に…」 |
春香 | 「ええっ!?も、もう食べ終わっちゃったんですか!?」 |
貴音の前に置かれた丼からはスープまでもが完全に消え去っていた。 |
貴音 | 「大変美味しゅうございました。では、四条貴音のラーメン探訪、今週も素晴らしい出会いがありました。来週も次の出会いを求めて…」 |
スタッフ | 『はい、オッケーでーす!四条さん、天海さんおつかれさまでしたー!』 |
貴音 | 「ありがとうございました…」 |
春香 | 「ありがとうございましたー」 |
貴音 | 「春香、これで収録は終わりですのでゆっくりといただいてください」 |
春香 | 「え?い、いいんですか?貴音さんのこと待たせちゃって」 |
貴音 | 「わたくしは…店主、この塩野菜ラーメンを戴けますか?」 |
店主 | 『あいよ、塩野菜一丁な』 |
春香 | 「えっ!?ま、まだ食べるんですか?貴音さん」 |
貴音 | 「ええ…ですので、春香はゆっくりと食べていてください」 |
……… |
律子・やよい | 『♪〜 秋月律子と 高槻やよいの 空のなないろ!………』 |
店主が持ってきたラジオから土曜二時のラジオが始まった。 |
貴音 | 「律子とやよいのラジオ…始まりましたね」 |
春香 | 「律子さんとやよい、2週間に1回ですけど大変ですよね」 |
貴音 | 「春香の方が大変ではありませんか?毎週テレビでの生放送でありましょう?」 |
春香 | 「私はそうですね…でもあれは1時間だし…」 |
貴音 | 「1時間とは言え、テレビに生放送でなどわたくしは難しいです」 |
春香 | 「でも貴音さんは毎回取材大変じゃないですか?」 |
貴音 | 「わたくしは好きな物を戴いているだけですから…」 |
春香 | 「貴音さん、本当にラーメンが大好きなんですね」 |
貴音 | 「ええ…どの店も個性があり、一つとして同じものはありません。ですがゆえ、飽きることはありません」 |
春香 | 「この後も食べるんですよね?」 |
貴音 | 「はい…夜に春香と入れ替わりに合流するやよいと律子とともに特集回の2つ目の収録をいたしますので」 |
春香 | 「移動まで時間はまだ大丈夫ですか?プロデューサーさん」 |
P | 「新幹線で2つ向こうの駅だから、向こうが着く予定の18時の1時間前に移動開始だ」 |
春香 | 「貴音さん、明日はやよいと一緒に体操ですよね」 |
貴音 | 「はい…でもそちらの方に自信があまり…」 |
春香 | 「貴音さんなら大丈夫ですよ!普段のダンスだってあんなに踊れているじゃないですか」 |
貴音 | 「そうでしょうか…」 |
春香 | 「明日期待してますねっ」 |
貴音 | 「はい…画面の向こうから見守りください…」 |
春香 | 「ん?あれ?何かラジオで私たちのこと言ってません?」 |
貴音 | 「何でしょう?」 |
律子 | 『今日は確かこのラジオを聞けるところに貴音と春香が行ってるわよね』 |
やよい | 『今日のこの放送が終わったら私たちも行くんですよね』 |
律子 | 『そうね。明日の生放送は○○から貴音と一緒に中継です、大丈夫よねやよい』 |
やよい | 『はーい、貴音さん待っててくださーい』 |
律子 | 『春香も気を付けて帰って来るのよ』 |
春香 | 「プロデューサーさん、これから私は東京まで一緒ですよね?」 |
P | 「ああ。戻ったら春香は直帰な」 |
春香 | 「はいっ」 |
P | 「うちら3人で○○で一旦下車して、向こうと合流したらその1本後の新幹線で帰京だ」 |
貴音 | 「わたくしは律子の指示に従えばよろしいのですね」 |
P | 「そうなるな。まず1駅移動してさっき言ってた撮影してからホテルとか言ってたぞ」 |
貴音 | 「わかりました。取材班の方々、この後もよろしくお願いいたします」 |
P | 「明日の中継の準備はこっちの地元の放送局が用意してくれているから」 |
春香 | 「頑張ってくださいっ」 |
貴音 | 「しかし…やはり良い物ですね…」 |
P | 「ん?何がだ?貴音」 |
貴音 | 「このような全員で協同の仕事…961時代はありませんでしたがゆえ」 |
P | 「貴音…」 |
貴音 | 「とても楽しく…フフフ、何と言いましょう、心が気持ち良く感じます」 |
P | 「そうだろうね。今の貴音の笑顔、昔とはすっかり変わって良くなったからさ」 |
貴音 | 「あなた様…」 |
春香 | 「むー、プロデューサーさん、貴音さんのことばっかり…」 |
P | 「ああっ!春香も可愛いって」 |
春香 | 「そんな取って付けたように言って…」 |
春香は拗ねた振りをし始めたようだ。 |
P | 「まったく…せっかくお土産用に新幹線で食べようと思ってお菓子買ってきたのにな…」 |
春香 | 「……プロデューサーさん、物で釣るの、ズルいですよぉ」 |
P | 「そう言われると何も言えないな…」 |
春香 | 「でも…今日だけは釣られてあげますね」 |
春香は拗ねていたのがどこへやら、すっかり笑顔になっていたという… |