In Compensation for Dirty Word(禁句の代償)

このSSはこちらにカレンダーと共に掲載された3行のセリフを拡張したものです。
なので、その画像と一緒にお楽しみください。
 
「しっかし、東京の寒さは堪えるさー」
節分の寒空の下、765プロへ向かっている南国風な女の子が一人。
「それにしても、うちの社長もアイドル使いが荒いよなあ」
どうやら何かお遣いごとのようだ。
「手近にスタッフもいなかったし、確かに暇してたさ…」
………
「んー、やよい…やっぱり引き込めないかなー」
音楽雑誌を読みながらソファで休んでいた響。
黒井社長「響、今ちょっと時間あるか?」
「あ、社長。別に暇だけど、どうしたの?」
黒井社長「近場にお遣いを頼まれてほしいんだが」
「いいさー、何のお遣いだ?」
黒井社長「この紙袋を765プロに届けてくれないか?」
「え゛っ!?ど、どういうことさ」
黒井社長「いや、さっき行った時に間違えて向こうの物を持ってきてしまってな」
「あれ?他のスタッフは居ないの?」
黒井社長「みんな手が離せないくらい忙しいのだよ」
「もう…しょうがないさ、ちょっと行ってくるさ」
黒井社長「頼むぞ、何かあったら私に連絡してくれたまえ」
………
「でもわざわざ敵の事務所に、アイドルを向かわせるか?」
そんなことを考えているうちに765プロに着いてしまった。
「お、ここだな…相変わらず小さいビルだな」
コンコン
事務所のドアをノックする響。
小鳥「はーい!え?でも配達は今日もう来たし、いったい何かしら…」
とりあえず出てみる小鳥。
ガチャッ
小鳥「はい、どちらさ…あなた、961プロの我那覇響ちゃんよね?」
「こ、こんにちは。はい、自分は961プロの我那覇響です」
小鳥「とりあえずは中に入って。外寒かったでしょ?」
「ありがとう、さすがに寒かったさー」
バタンッ
小鳥「それで今日は何の用で来たのかしら?」
「あの、うちの社長がさっきここに来た時に、間違えて何か持って帰っちゃったらしいんだ」
小鳥「え?それでわざわざ持ってきてくれたの?ありがとう響ちゃん」
「ど、どういたしまして…これ全部だってさ」
小鳥「はい、確かに受け取りました。…って、これ持ってかれてたの気付かなかったわ」
「…ん?この匂い…」
何やら給湯室から漂う良い香り…
小鳥「あ、この匂い?これから豆まきするから、豆を炒ってたのよ」
「う、豆まきかあ…」
小鳥「ん?響ちゃんも豆まきしていく?」
「い、いいの?部外者なのに参加しても」
小鳥「大丈夫よ、きっと。ちょっと聞いてくるから待ってて」
 
さて、ここは控え室…
千早「はあ…どうして私がこんなことに…」
「…じゃんけんに負けたのは千早だろ?」
千早「そうですが…誕生月なのにこんな役割なんて…」
「でも衣装は1着しか無かったんだ、我慢してくれ」
千早「だいたい、こういう役割は男性がやるものだと思いますが…」
「あのなあ、千早は俺のそういう格好を見たいのか?」
どんな格好かと言うと…
千早「それは…」
千早は首までの全身タイツを身にまとい、いわゆる虎柄のビキニをその上に付けているのだ。
「女性用の衣装を男が着るほど気持ち悪いことはないだろ?」
千早「確かに…そうですね」
「まあ運が悪かったと思ってくれ」
千早「…分かりました」
そこに…
小鳥「あのプロデューサーさん、ちょっといいですか?」
「あ、小鳥さんですか。何です?」
小鳥「あのですね…961プロの響ちゃんがいらしてるんですが…」
「あー、どうりで何かそっちが騒がしいわけですね」
小鳥「一緒に豆まきに参加させても良いでしょうかね?」
「…まあそれくらいなら問題は無いんじゃないですかね」
小鳥「分かりました。じゃあ本人にはそう伝えておきます」
小鳥はその旨を伝えに戻って行った。
千早「くっ…響が来てるんですか」
「何だ?嫌なのか」
千早「いや、別にそういうわけではないです…」
「まあ何でもいいけど。じゃあ俺も準備してくるから」
千早「分かりました、行ってらっしゃいませ」
 
みんなが位置について…
「よーし、投げるぞ千早ー」
全員『鬼はー外!』
千早「んっ!」
千早に向かって飛んでくる豆やら小さなお菓子。
全員『福はー内!』
千早「やっぱり…少し痛いわ…」
しかしその中に不穏な掛け声が一つ
「胸ペタはー、外!」
そして方言にしては怪しい掛け声がもう一つ
「ないちちゃー、外!」
それを千早が気が付かないわけもなく…
千早「…あの二人…後で覚えてなさい…」
笑顔ではあるが目は笑っていないことに、その二人は気付くよしもなかった…
 
豆まきも終わり…
「千早、お疲れさま」
千早「プロデューサー、もうこんなことしたくありません…」
「それは本当に重々承知だ、今度は何とかするから」
千早「それはいいですが、一ついいですか?」
「ん?」
千早「えっと…真と響を呼んできてもらえません?」
「どうしてだ?また急に」
千早「いいから呼んできてください!」
「分かった、ちょっと行ってくるな」
凄い剣幕にプロデューサーもただ従うしかなかった。
………
数分後…
「うー、千早怖いよー。もう自分ダメかも…」
半泣き状態の響、そして…
「うう…千早に弱みを握られた…」
こちらも半泣きの真が居た。
千早「まったく、二人とも次に言ったらどうなるか分かってるわね?」
響・真『はい…』
千早はあの格好のまま不敵な笑みを一つ浮かべていた。
その時、プロデューサーの目には千早が本当の鬼に見えていたという…
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あとがき
ども、飛神宮子です。
2月になりました。響を登場させる理由作りがこの作品の悩みどころでした。
しかも一回しろざわさんのダメ出しも受けて…ね。
でも、その分いい作品にはなったと思いますよ。
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2009・02・02MON
飛神宮子
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