In the Cherry Blossom Season(桜の頃に)

ある日の事務所でのこと…
小鳥「んーっ!これで今日の仕事終わりっと」
「やっと終わりましたね、今日はいつもに増して処理する仕事が多かったですよ」
小鳥「ええ、定時で終われたのが奇跡だわ」
小鳥とプロデューサーの2人は残務処理に追われていたようだ。
「今日は小鳥さんの方ですよね、どこかで飲んでから帰りますか?」
小鳥「そうね…明日も仕事がありますし、家で軽くにしましょ」
「分かりました。じゃあ帰りに買い物してからですか」
小鳥「そうですね。あのスーパーに寄ってから行きましょう」
「小鳥さんはもう大丈夫ですか?」
小鳥「あとこれをまとめて…っと、はい。じゃあちょっと着替えてきますね」
「こっちも帰る支度してますから、ゆっくり着替えてきてください」
………
その帰りの道中のスーパー…
小鳥「えっと…プロデューサーさんは今日は何を食べたいです?」
「小鳥さんの料理ならなんでも構わないですよ」
小鳥「そう言われると困っちゃうのよね…あ、プロデューサーさん」
「何でしょう?」
小鳥「帰ったら…ちょっと近くの公園に行きましょう」
「公園ですか?いいですけど、急にどうしたんですか?」
小鳥「ちょうど今、満開に近いですから」
「そういうことですか。じゃあ缶チューハイ2本追加ですね」
小鳥「そうしましょうか。プロデューサーさんはどれにします?」
「俺はこれにします。小鳥さんは?」
小鳥「私はこれにしますね。あと買う物はもうありませんでしたよね?」
「はい。あとは家にある物だけで何とかなりそうです」
小鳥「じゃあこれ買ってまずは小鳥さんの家に向かいましょう」
「ええ。帰ったらそのままの格好で…行きましょう」
………
一旦荷物を家に置いてやってきた近くの公園…
「それにしても綺麗に咲き誇ってますね」
小鳥「そうね。やっぱり宴会しているグループも多いわ」
小規模ながら花見の会場にも利用できる公園とあって、家族連れや小さなグループも多い。
「あのベンチにしますか」
桜の木の基にはぐるっと囲むようにしていくつもベンチがあった。
小鳥「そうね、そうしましょ」
「小鳥さん、そこの屋台で何か買います?」
小鳥「おつまみになるようなのは何かあります?」
「んー…お祭りの屋台ですからね…あ、フランクフルトがありますけど」
小鳥「プロデューサーさんはどうです?」
「俺はそれでいいですよ。小鳥さんは?」
小鳥「私もそれで」
「じゃあちょっとひとっ走り買ってくるんで、先にベンチで待っててください」
小鳥「ええ、お願いしますプロデューサーさん」
 
そのベンチで…
「見上げると全て桜の花って…凄いですね」
小鳥「ここはプロデューサーさんは初めてでした?」
「この季節だと小鳥さんのとこから見ることはありましたけど…実際に来るのは初めてですよ」
小鳥「前に来たのは…冬に入る前くらいでしたっけ」
「小春日和で少し暖かい日でしたね」
小鳥「…あの頃から私たちが変わらなくて良かった…です」
「そんな…」
ぎゅうっ
プロデューサーは横に座っている小鳥の身体を引き寄せた。
「何か変わるとでも思ってたんですか?」
小鳥「ううん…」
ぽふっ
そんな小鳥はプロデューサーの胸へと顔を載せた。
「でも少しは変わったかもしれませんね」
小鳥「えっ…?」
「小鳥への愛は…深まったと思ってますから」
小鳥「はい…」
「出張とかで離れている時が辛くて…小鳥も連れて行きたかったくらいでしたよ」
小鳥「フフフ…でも毎日ちゃんと連絡くれてたから…淋しくはなかったわ」
「ああでもしないと、俺の心が持たなかったんですよ」
小鳥「もう…だからって浮気とかはしないでくださいね」
「そんなことしたら…小鳥が悲しむのは分かってますから」
小鳥「信じて…ますから」
ぎゅっ
小鳥はさらにプロデューサーの身体へと腕を絡めて抱きしめた。
小鳥「少しだけ…こうしてて…いい?」
「小鳥の気が済むまで…そのままでいいですよ」
小鳥「今週末は…紫陽花の二人と一緒なのよね?」
「…はい、2泊3日で映画の舞台あいさつ行脚になりますね」
小鳥「この薫りも温もりも…しばらくお預けになっちゃうから…」
「それだったら俺も、小鳥の薫りと温もり…貰いますよ」
小鳥「○○さん…今日、いいですか?」
「小鳥が望むなら、俺は構わないですよ」
小鳥「私にその薫りをちゃんと預けて…欲しいですから」
「俺も…小鳥の温もり、忘れないようにしたいです」
小鳥「○○さん、それならそろそろ…家に戻りますか?」
「…もう、いいんですか?」
小鳥「家でいっぱい、この身体に貰いますから」
「そうですね…でもまず家に戻ったらご飯にしましょう」
小鳥「…そういえば食べてなかったの忘れてたわ」
「でもお酒飲んだんで、軽くでいいですよ」
小鳥「分かりました…それじゃあ行きましょ」
二人は離れて立ち上がり…
ぎゅっ
愛する二人に言葉など要らず、二人の手は握られた。
小鳥「来年も、再来年も…ずっと二人でこの桜、見れますよね?」
「そんなに俺のこと信じられないですか?」
小鳥「そんなこと…」
チュッ
小鳥はプロデューサーの頬へとそっと口付けた。
小鳥「ありません。信じてますから…」
「今度また、桜が咲いてなくても来ましょう」
小鳥「…はい」
帰り道、月灯りと星灯りが優しく二人を照らしていた…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
小鳥さんの単騎。実は去年の年末以来という事は約4ヶ月ぶりとなりました。
まだ肌寒い気温になることもありますが、桜の季節となりましたね。
散りゆくことの美、崩れる物に対する美、それが日本人の美徳の一つと言えるのではないでしょうか。
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2011・04・21THU
飛神宮子
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