It is a Day that Fill in the Cell to the Heart(心のマスを埋めた日)

ここは6月の…
律子「このまま何もボタンを押さなくていいから、私を映してくれる?」
やよい「はいっ!」
やよいは律子からカメラを受け取った。
律子「やよい、私はちゃんと映ってる?」
やよい「OKですよ、律子さん」
律子「じゃあちょっとしばらく頑張ってね、やよい」
やよい「はーい」
律子「はい、皆さんこんにちは、秋月律子です。今日は誕生日ということで旅行に来ています」
律子はカメラの方を向いて喋り始めた。
律子「ここがどこかと言うと…やよい、ちょっとだけ下がってくれる?」
やよい「どれくらいですか?」
律子「後ろの駅が映るくらいでいいわ」
やよいは少しずつ後ろへと下がっていく。
やよい「えっと…この辺でいいかなあ…うん、大丈夫です律子さん」
律子「はい、今日は群馬県は高崎に来ています。パートナーはさっきの声を聞いたら分かりますよね?」
律子はやよいを手招きした。
やよい「律子さん、もういいんですか?」
律子「ええ、一旦こっち来て。それでカメラもこっちにちょうだい」
やよい「はーい」
やよいは律子にカメラを手渡した。律子はそれをやよいの方へと向けた。
律子「はい、今回の私の旅のパートナーは私の相方と言えばこの人しかいないですよね」
やよい「エヘヘー、そう言われると何だか照れちゃいますー」
律子「秋のま〜ちの私の相方の…」
やよい「高槻やよいですっ。私の誕生日の時は伊織ちゃんとだったけど…今回は律子さんと一緒で良かったですー」
律子「メンバーが被らないようにしているから仕方ないわ。私も誰かの誕生日に就いていくことになってるみたいね」
やよい「律子さんって確か…あ、これって言っちゃいけないんですよね?」
律子「そうね、秘密にしないとダメって話だったわ」
やよい「律子さんのファンの皆さんは楽しみにしててくださいね」
律子「じゃあそろそろ今回の旅について説明しましょ」
やよい「そうですね、律子さん」
律子「今日はこの高崎を中心に群馬県の南側を…」
やよい「明日は沼田ってところから群馬県の北側を旅しまーす」
律子「それじゃあ行きましょ、やよい」
やよい「はいっ!旅行を楽しんじゃいましょう律子さん。カメラ、貸してくださいー」
律子「そうね、はいやよい。私たちはこれからお昼ご飯に………」
………
ここは群馬県の北部にある、とある温泉の温泉旅館…
やよい「ふ〜、気持ちいいですねー」
律子「は〜…今日一日の疲れが取れるわー」
二人は離れ宿の4人くらい入ったら満員になるような露天風呂に、向かい合わせて浸かっていた。
律子「でもこうやって二人だけっていうのも、ラジオ以外では最近無かったわね」
やよい「そうですね…律子さんが竜宮小町のプロデューサーになってから、結構少なくなっちゃいました」
律子「やっぱり…ちょっと寂しいわ」
やよい「私も…律子さんが隣にいることが普通だったから…寂しいなって」
律子「だけど、必ずやよいのこと迎えにいくからって言ったでしょ?」
やよい「はいっ、どれだけ掛かっても律子さんのこと待ってます」
ジャプッ ぎゅうっ
やよいは律子の隣へと移って抱きついた。
やよい「律子さん、今日は甘えてもいいですよね?」
律子「ええ。私もやよいに甘えられたいわ」
やよい「一緒に色々やっていた頃より、何だか…何ていうか分からないけど…」
律子「分かるわ、離れていた分一緒にいたい…それは私も一緒よ」
やよい「今は他の人とも活動していますけど、何だか心に少し穴が開いた感じがします」
律子「私の夢のために…やよいに辛い思い…させちゃってるのよね…」
やよい「そんなこと無いです、私だってちゃんと独り立ちしなきゃって…でも…」
律子「無理はしなくていいのよ」
やよい「う…うん…ううっ…」
やよいは律子の肩口を借りて涙を流し始めた。
やよい「律子さぁん…寂しいですぅ…」
律子「やよい…私も…んっ…やっぱり…」
ぎゅうっ
律子もやよいの頭を抱きしめて、そのやよいの涙に呼応するように頬を涙が伝い始めた。
律子「だから今日…言おうって思ってたの」
やよい「えっ…」
律子「こんな悲しい思いをもうやよいにはさせたくないから…」
やよい「………」
律子「来月からやよいのスケジュールもまた全部私持ちにするわ」
やよい「それって…また一緒に活動できるってこと?」
律子「そういうことよ。竜宮小町の方もあるから、前より少しは少ないけどね」
やよい「律子さんはそれでも大丈夫なんですか?」
律子「ええ。いざとなったらプロデューサーにも手伝ってもらえることにもなってるわ」
やよい「私も…自分でできることは自分でやっていきますっ!」
律子「ありがとう、うん…やよいも頼れるお姉さんになったわね…」
やよい「私だって律子さんに追い付けるようにここまで頑張ってきたんですっ」
律子「そうよね…本当に…」
ぎゅうっ
律子はあらためてやよいを抱きしめ直した。
律子「それでこそ…私の世界一の相方よ」
やよい「律子さん…」
律子「この温もり…もう離したくないわ」
やよい「私も…この薫り…もう離れてほしくないです…」
律子「ねえ、やよい」
やよい「何ですか?律子さん」
律子「今日はやよいのこと…もう一回思い出させてね」
やよい「私も…律子さんのこともう一回…ちゃんと知りたいです」
二人の間にはもう言葉は要らなかった。
律子「お風呂上がったら…もう休むだけだから…ね」
やよい「はい…」
チュッ
やよいは律子の唇に口付けをした。
律子「フフフ、もう…」
チュッ
律子もそれにお返しとばかりに口付けを返した。
………
そして布団に入った二人…
律子「やよいとこうして一緒の布団っていうのも…久し振りね」
やよい「律子さんのこういう薫り…久し振りです…」
律子「温かいわ…この温もりを手放してたなんて…」
やよい「今日は……全部……いいんですよね?」
律子「ん…。私もやよいのこと…隅から隅までもう一回ちゃんと覚えるわ」
やよい「はい…律子さん…」
律子「やよい…」
チュッ…
一つのKissは離れていた時間を埋めるための合図となっていった…
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あとがき
飛神宮子です。
2012年誕生日SSシリーズ、律子と旅するのは…うちではやっぱりやよいしかいないでしょう。
この二人は律子がプロデューサーとなった後の二人。心の抜け落ちた部分は思っていた以上でした。
本当は旅行中のストーリーは考えてはいたのですが…あっちの話の方がメインとなる形にしました。そっちの方が自分らしい気がしますし。
HAPPY BIRTHDAY!! Ritsuko AKIZUKI.
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2012・06・21THU
飛神宮子
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