♪〜 |
律子の携帯電話にメールの着信を告げる音が鳴り響いた。 |
律子 | 「プロデューサーからね…」 |
律子はそのメールを見ながら、事務所の鍵を開けた… |
……… |
そして事務所に入って… |
律子 | 「さてまずはやよいが来るまで待ちましょうか」 |
律子はそのメールを見ながら少し思案していた。 |
律子 | 「大体予想はしていたから…実はもう2択なのよね」 |
そこに… |
がちゃっ |
やよい | 「おはようございまーすっ!」 |
元気な声でドアを開ける音。 |
律子 | 「おはようやよい」 |
やよい | 「おはようございます、律子さん」 |
律子 | 「どうしたの?こんなに早く来るなんて」 |
やよい | 「だって11時から収録ですよね?だから早く来てテンション上げたいなーって」 |
律子 | 「え?11時から?」 |
やよい | 「えっ…11時からラジオの収録があるって…」 |
律子 | 「やよい、11時からじゃなくて午後の1時からよ」 |
やよい | 「えーっ!?そうだったんですか?」 |
律子 | 「ほらそこのホワイト…えっ!?」 |
よくよくホワイトボードの予定を見ると… |
『空のなないろ収録:11時〜 ※先方の都合で時間が早くなりました』 |
と書かれていた。 |
律子 | 「11時!?」 |
やよい | 「プロデューサーから昨日メールが来てましたよ?」 |
律子 | 「昨日…ああっ!!もしかしてあの未読のまま削除したメール!」 |
やよい | 「どうしたんですか?」 |
律子 | 「昨日寝る前に間違って削除しちゃったメールがあったのよ…それだわ」 |
やよい | 「律子さん、何時にここ出ますか?」 |
律子 | 「そうね…11時には着かないとだから10時前には出ましょ」 |
やよい | 「はいっ…あれ?そういえば律子さん、どうして携帯電話を握り締めてたんですか?」 |
律子 | 「私の時はやよいと一緒だったわよね」 |
やよい | 「もしかして、誕生日のアレですか?」 |
律子 | 「ええ…これなんだけど…」 |
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律子はヒントとなるメールをやよいへと見せた。 |
律子 | 「どうかしらね?これ」 |
やよい | 「内臓って何でしょう?」 |
律子 | 「心臓とかってことよね、きっと」 |
やよい | 「でも内臓って…」 |
律子 | 「他の物からだけど、確信はないけれど答は殆ど見えてるのよ」 |
やよい | 「そうなんですか!?」 |
律子 | 「これはラジオの収録が終わった後話すわね」 |
やよい | 「この有名な温泉って、熱海とか草津とかですか?」 |
律子 | 「そうね…それ以上にこの世界遺産っていうのがヒントかもしれないわ。これである程度絞られたもの」 |
やよい | 「それでどうして分かったんですか?両方ともあるのって、いっぱいある気がします」 |
律子 | 「それはね…やっぱり今やよいにだけ話すわ。やよい、耳貸して」 |
やよい | 「えっ…?」 |
律子は誰もいないながらもやよいにだけ聞こえるように… |
律子 | 「実はね…行き先は…で、やよいも新潟だったでしょ?伊織の大阪で気が付いたのよ…ね…こうなの…でしょ?」 |
やよい | 「あーっ!?それで私は新潟で、伊織ちゃんが大阪だったんですね!」 |
律子 | 「だから私の行き先は……と……しか考えられなかったの。東京が無いってことはね」 |
やよい | 「それで律子さん、もう安心した感じだったんですね」 |
律子 | 「ということだから、小鳥さんが来たら一言伝えて行きましょ」 |
やよい | 「はいっ!」 |
そこに… |
ガチャっ |
小鳥 | 「おはようございます…あら?二人とも今日は早いわね」 |
やよい | 「おはようございまーっす!」 |
律子 | 「おはようございます、小鳥さん」 |
小鳥 | 「よい…しょっと」 |
小鳥は重そうなダンボールを机へと置いた。 |
やよい | 「小鳥さん、そのおっきな荷物どうしたんですか?」 |
小鳥 | 「これ?今度のみんなのライブツアーに使う物よ。プロデューサーが私の方に送ってきたの」 |
律子 | 「どうして小鳥さんの方に?」 |
小鳥 | 「先に確認しておいてもらいたいってことなの。下手に事務所に送られると悪い人に見つかったらってこともあるから、個人の住所なら怪しまれないでしょう?」 |
律子 | 「なるほど…」 |
小鳥 | 「それで今日は…ああ、これからラジオの収録なのね」 |
やよい | 「はいっ!」 |
律子 | 「あのそれでさっきプロデューサーからメールが来て…」 |
小鳥 | 「もう律子さんも誕生日だものね…その表情だともう答えは分かってるのね?」 |
律子 | 「岐阜、ですよね?」 |
小鳥 | 「ええ、正解よ。ちょっとこれの整理もしたいから、今から渡す連絡先に連絡をとってもらえるかしら?」 |
律子 | 「分かりました。えっと…この前の亜美と真美とは違う事務所なんですね?」 |
小鳥 | 「ええ、やよいちゃんの時の事務所よ…」 |
……… |
翌日の品川駅改札口… |
小鳥 | 「涼宮さんですね、私は765プロ事務の音無です」 |
星花 | 「はい、910プロダクションの涼宮星花ですわ」 |
そこには黒髪の女性が一人、律子の到着を待っていた。 |
小鳥 | 「今日はうちの秋月をよろしくお願いします」 |
律子 | 「よろしくお願いします、涼宮さん」 |
星花 | 「そんな…堅苦しくなくても構いませんのに、秋月さん」 |
律子 | 「でも、初対面ですから…」 |
星花 | 「失礼ですが、秋月さんはお歳はお幾つでしたでしょう?」 |
律子 | 「私ですか?私は19ですよ」 |
星花 | 「それならわたくしと同い年ではないですか」 |
律子 | 「そうなんですか!?てっきり涼宮さんの方が年上かと思っていました。とても落ち着いてますし」 |
星花 | 「わたくしこそ、秋月さんの方が年上かと思っていましたわ。フフフっ」 |
律子 | 「そういうことなら…星花さんって呼んでもいいですか?」 |
星花 | 「はい。ではわたくしは…」 |
律子 | 「あ、フルネームだと秋月律子です」 |
星花 | 「それなら律子さん…でよろしいでしょうか?」 |
律子 | 「はい。それでよろしくお願いします。」 |
小鳥 | 「それでは涼宮さん、2日間よろしくお願いします。律子さん、行ってらっしゃい」 |
律子 | 「行ってきます、小鳥さん」 |
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新幹線の車内、二人は隣同士に座っていた。その星花の膝の上には… |
律子 | 「星花さん、そのケースはもしかして…」 |
星花 | 「はい…わたくし、バイオリンをやっておりまして…」 |
律子 | 「そうでしたか。私たちの事務所には楽器をやっている人はいないので、そういうのを見ると新鮮です」 |
星花 | 「小さい頃からお母様に教えていただいたもので…お父様から授かった大切な物ですわ」 |
律子 | 「絆のような大切な楽器なのですね」 |
星花 | 「いつ両親に聞いていただいても恥ずかしくないように、アイドルの活動を始めてからも練習は欠かさないことにしております」 |
律子 | 「向こうに着いて落ち着いたら、私にも聞かせてもらえますか?」 |
星花 | 「それはぜひ…わたくしの音色を、律子さんにも聞いていただきたいです」 |
律子 | 「フフフ、よろしくお願いしますね」 |
星花 | 「はい…」 |
お互い、相手と少し分かり合えたようなそんな微笑みの顔を合わせていた… |
HAPPY BIRTHDAY!! Ritsuko AKIZUKI.