The Bottomline Kiss(本音の口付け)

ここはとある別荘地…
栞(伊織)「何ぐずぐずしてんのよ、早くいらっしゃい!もう…」
匡(涼)「そんなこと言ったって、こんなに荷物持たせて…」
「何よ…この私に持たせるつもりなわけ?」
「す、すみません!お嬢様!」
「ほら…」
その少女は召使いの少年が持っていたカバンを一つ手に提げた。
「早く来なさいよね」
「はいっ!」
少年は歩き出した少女の後ろを再び歩き始めた…
………
ここはある日の事務所…
「さて、どうだ?伊織」
伊織「これって…雪歩達がやったシリーズよね」
「そういうことだ。相手方からするとそうなるよな」
伊織「そうね、さっき企画書も読ませてもらったわ」
「ああ、まあそういうことなんだけどな」
伊織「私ってああいう風に思われてるのね」
「世間一般からは…きっとそうなんだろうな」
伊織「アンタとしてはどうなのよ」
「そうだな…伊織の気持ち次第だな。まずはやりたいかどうかだけ決めてほしい」
伊織「これねえ…私だって一度やってみたいと思ったわよ。涼のシリーズ、人気なんでしょ?」
「毎回かなりの視聴率たたき出しているとは聞いてるぞ」
伊織「雪歩も春香も、真も美希も出てから変わったわよね…」
「俺も少し世界観が広がった感じはする。今までの知らない自分を知れたとか言ってたしさ」
伊織「でもこの内容は…」
渋い顔を見せる伊織。
伊織「どうしてもやりたくないわけじゃないけど」
「それなら一応は受けておこうか?」
伊織「受けておいて。何とかやる決心を固めておくわ」
「了解。台本が来るまではまずキャラクターを…って作る必要殆ど無いか」
伊織「プロデューサー…それ、どういう意味よ?」
「えっ…でもいつもこんな雰囲気じゃないか」
伊織「アンタからはそう見えているのね…」
「スマン、気を悪くしたか?伊織」
伊織「いいわよ…私の本気、ドラマで見せてあげるわね」
………
それから数日後の765プロのレッスン室…
伊織「涼はどうなの?この役柄」
「うーん…まだまだ弱弱しいって思われてるんだろうなって」
伊織「よくOK出したわね」
「それが運命だから仕方ないって」
伊織「ちゃんと覚悟しなさいね涼」
「え?」
伊織「私の罵倒は精神に応えるって…言われたのよプロデューサーに」
「そ、そうなの?」
伊織「ええ」
「でも伊織さんのプロデューサーは何ともない顔してるけど…」
伊織「あれで結構鍛えられてるの。毎日うちの事務所の女の子達をみんな相手しているのよ」
「そっか…確かに765プロの皆さんって、結構みんな個性強くて…」
伊織「それがもう結構長いわね…これをこなして来たんだから本当に強い人ってことね」
「それで伊織さんの罵倒って…そんなに酷いの?」
伊織「分からないわよ、自覚なんてできないんだから」
「あ、そっか…」
伊織「でもやり過ぎないようにって言われてるわ…そういうことよ」
「分かった…うん、まずはここで一回感じてみるよ」
伊織「じゃあやりましょ。台本は持ってきたわよね?」
「そうだね」
 
「はあ…はあ…」
「どうしたのよアンタ」
「お嬢様、少しお待ちください。ちょっと…」
「何ぐずぐずしてんのよ、早くいらっしゃい!もう…」
「そんなこと言ったって、こんなに荷物持たせて…」
「何よ…この私に持たせるつもりなわけ?」
「す、すみません!お嬢様!」
「ほら…」
その少女は召使いの少年が持っていたカバンを一つ手に提げた。
「早く来なさいよね」
「はいっ!」
少年は歩き出した少女の後ろを再び歩き始めた…
「今日から過ごすのはこちらでございますか」
「あら、匡は連れてきたことが無かったかしら?」
「僕はこちらにはまだ一度も…」
「そう、それなら説明するから荷物を置いて来たら付いてらっしゃい」
「はい、お嬢様!」
………
「ここが匡にいてもらう部屋よ」
「こちらからですと、お嬢様の部屋までは…はい、把握いたしました」
「今日のところは夕食と浴室の準備だけでいいわ」
「分かりました。何時頃お持ちしましょう?」
「そうね…ってどうして匡はそうなのよ…」
「えっ、お嬢様…」
「二人きり…なのよ」
「………」
「二人きりにしてもらった…この意味分かってよ!」
ドンッ
少女はその少年をベッドへと押し倒した。
「匡は、匡は私のこと…どう思ってるの…」
「お嬢…」
「匡!名前で…お願い…」
「栞様…」
「………」
チュゥゥ
栞の唇は匡の唇に重ね合わされた。
「やっと…名前で呼んでくれた…」
栞のその瞳からは小さな涙が零れ始めていた。
「栞様…こんな僕が栞様の…」
「いいの…私が…好きになったんだから」
栞の腕はそのまま抱きつくように匡の後ろへと回されていった…
スタッフ『はい、オッケー!これから次の場面セットができるまで休憩ー!』
「ねえ伊織さん、オッケー出たよ?」
なぜかそのままの体勢から離れようとしない伊織。
伊織「あっ涼…ちょっとボーっとしてたわ。すぐ離れるわ」
伊織はようやくその腕から涼を開放した。
「どうしたの?」
伊織「何でもないわ何でも。さ、休憩しましょ」
ベッドから降りた伊織は、涼に背を向けて重ねた温もりが残る唇を優しく触っていたという…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
涼ドラマシリーズの第5弾、伊織です。
伊織の役柄と涼との関係からして某アニメが見え隠れしていそうですが…偶然ですよ?
伊織が離さなかった理由…若干の放心状態だったんでしょうね、きっと。
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2012・09・03MON
飛神宮子
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