さて、ここはどこだろうか? |
貴音 | 「今宵の月は綺麗…ですね、雪歩殿」 |
雪歩 | 「はい、四条さん」 |
貴音 | 「このお湯加減も丁度良く…」 |
ん?お湯加減? |
貴音 | 「雪歩殿はいかがでしょう?」 |
雪歩 | 「はい、私もとても…周りが雪景色なのに不思議ですね」 |
貴音 | 「昨日まではこちらは雪だったそうで、私たちのためでしょうか?フフ」 |
雪歩 | 「そうかもしれないですね、フフフ」 |
カポーン |
どうやらどこかの温泉のようだ。 |
貴音 | 「しかしながら先日のライブですが、雪歩殿の衣装はかなり妖艶でありましたね」 |
雪歩 | 「あ、あれは、恥ずかしかったですよぉ…」 |
貴音 | 「わたくしよりもファンの方々から注目を浴びておられましたよ」 |
雪歩 | 「プロデューサーが持ってきたのがあんなに際どかったなんて思わなかったです」 |
貴音 | 「然るに前の方の方々には、何と言いますか…」 |
雪歩 | 「うう…やっぱりそうですよね」 |
貴音 | 「しかし最初にお会いした頃に比べましたら、雪歩殿も随分と綺麗になられました」 |
雪歩 | 「そ、そうでしょうか?」 |
貴音 | 「以前もお綺麗でしたが、何と言いましょうか…魅力が増したと思われます」 |
雪歩 | 「ありがとうございます。四条さんにそう言ってもらえるなんて嬉しいです」 |
貴音 | 「いえ、わたくしの思った通りの言葉です」 |
雪歩 | 「でも、そう言う四条さんも…ですよ」 |
貴音 | 「そ、そうでしょうか?」 |
雪歩 | 「ライブでも、あの身体の魅力を惜しみなく出していて羨ましいです」 |
貴音 | 「わたくしの身体など…そんなに魅力がありましょうか?」 |
雪歩 | 「あの衣装、セクシーさでは私なんか勝てないです」 |
貴音 | 「そんなこと…雪歩殿の身体だって充分魅力的では?」 |
雪歩 | 「でもっ…」 |
ジャブンっ |
浴槽の中で貴音の身体へと抱きつく雪歩。 |
貴音 | 「ゆ、雪歩殿!?」 |
雪歩 | 「羨ましいですぅ…」 |
スリスリ |
雪歩は貴音の身体の水面上に出ていた部分へと頬擦りまでし始めた。 |
貴音 | 「んっ…そ、それはやめていただけませんか…ひゃっ…」 |
雪歩 | 「どうして私はこんなにひんそーでちんちくりんなんだろぉ、うう…」 |
貴音 | 「しかし、ファンは今の雪歩殿を好んでいられるのでしょう?」 |
雪歩 | 「そ、そうなんでしょうか?」 |
貴音 | 「ええ。わたくしもその一人です」 |
ツツツ |
貴音は雪歩の首筋をそっと撫ぜた。 |
雪歩 | 「んっ!し、四条さん…」 |
貴音 | 「綺麗な白い肌…です、雪歩殿」 |
雪歩 | 「四条さんこそ…綺麗ですよ」 |
貴音 | 「いえ、わたくしなど雪歩殿には及びません」 |
雪歩 | 「でも…この髪の色に合っていて素敵です」 |
貴音 | 「ありがとうございます、そう言われると悪い気はしません」 |
雪歩 | 「フフフ、それじゃあそろそろ上がります?」 |
貴音 | 「そうですね、湯冷めせぬようにしましょう」 |
……… |
ガーーーーーー |
洗面台で髪を乾かしている貴音。 |
雪歩 | 「四条さん、手伝います」 |
貴音 | 「はい…何をでしょう?」 |
雪歩 | 「長い髪だと乾かすのって大変ですよね?」 |
貴音 | 「ええ…確かに毎日かなり大変ではあります」 |
雪歩 | 「だから、乾かすの手伝いますね」 |
貴音 | 「ありがとうございます、雪歩殿」 |
ドライヤーが2台になり髪の乾くスピードも格段に速くなる。 |
雪歩 | 「四条さんの髪、綺麗に手入れしてありますね」 |
貴音 | 「この長さですから、怠るとすぐ傷んでしまいますので…」 |
雪歩 | 「私はこの長さだから、そういうのは分からないです」 |
貴音 | 「雪歩殿の髪型はそれはそれで可愛らしく思えます」 |
雪歩 | 「そ、そうですか?」 |
貴音 | 「貴方の性格に合致しているからでしょう。とてもお似合いです」 |
雪歩 | 「フフっ、ありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです」 |
貴音 | 「しかし、プロデューサーもわたくし達だけ残して帰られてしまうとは…」 |
雪歩 | 「何だか凄いトラブルだったのかなあ。キャンセル待ちして帰っちゃったくらいですし」 |
貴音 | 「いったい何があったのでしょうかね」 |
雪歩 | 「でも私たちも明日の夕方の便で東京に戻らないと…名残惜しいです」 |
貴音 | 「わたくしも、雪歩殿と同じ想いです」 |
雪歩 | 「あの…四条さん」 |
貴音 | 「何でしょう?雪歩殿」 |
雪歩 | 「今日の夜は二人きりってことですよね?」 |
貴音 | 「今宵…そうなりますか」 |
雪歩 | 「四条さんと二人だけ…ですね」 |
貴音 | 「…はい」 |
貴音も何のことかは理解したようだ。 |
雪歩 | 「蒲団、一つにしちゃいます?」 |
貴音 | 「それは…」 |
すっかり赤面の貴音と雪歩。 |
雪歩 | 「昨日までベッドでしたけど、あの1mの距離がもどかしくて…」 |
貴音 | 「それはわたくしも同じでした」 |
雪歩 | 「だから今日は…」 |
貴音 | 「蒲団、隣合わせて眠りましょう」 |
雪歩 | 「はいっ」 |
……… |
その後、ここは蒲団の中… |
雪歩 | 「四条さんの身体…温かいです」 |
貴音 | 「雪歩殿の温もり、しかと受け取っております…」 |
蒲団の中で二人は身を寄せ合っていた。 |
雪歩 | 「四条さん」 |
貴音 | 「何でしょう?」 |
雪歩 | 「私…四条さんとユニットが組めて良かったです」 |
貴音 | 「雪歩殿…」 |
雪歩 | 「私のことを優しく受け止めてくれて…」 |
貴音 | 「それならば、わたくしも雪歩殿と一緒になれたことを嬉しく思っています」 |
雪歩 | 「四条さん…」 |
貴音 | 「こちらに来た時、本当に不安でした。そんなわたくしを優しく受け入れていただけて…」 |
雪歩 | 「だって、大好き…でしたから」 |
貴音 | 「わたくしも、大好きな貴方とのユニットと聞いた時は…心躍りました」 |
雪歩 | 「これからもずっと…」 |
貴音 | 「はい…」 |
明かりの消えた部屋。月明かりだけがただ彼女たちの部屋へと差し込んでいた… |