Your Lip Blinks on My Heart's Light(心の明かりも灯す唇)

もうすぐ冬に入ろうかというある日の事務所…
「ええっ!?自分がか!?」
「ああ。受けるか?」
とある仕事のオファーを持ちかけられた響。
「もちろんさ。こんな仕事受けられるなんて思ってなかったぞ」
「でもな、この仕事に関してはもう一人了承が必要でな」
「そうなのか?」
「書類をよく見れば分かるだろ?」
「…あ、ほんとだ」
「まあ大丈夫だと思うけどな、まだ来てないから分からないけど」
そこに…
千早「おはようございます、プロデューサー、我那覇さん」
「おはよう、千早」
「おっす、おはよう千早」
そのもう一人がやってきたようだ。
「ちょうど良かった千早、ちょっといいか?」
千早「はあ…何でしょうか?」
「このイベントなんだが…どうだ?」
千早「お仕事の依頼ということですか?」
「そういうことだ。詳細はこれを見て欲しい」
千早「…なるほど。しかしなぜ我那覇さんとなのでしょうか?」
「さあ?」
「何だよ千早ー、自分とじゃ嫌なのか?」
千早「そうじゃなくてこういうイベントで私が呼ばれる方が意外なのよ」
「そうでもないんじゃないか?」
千早「えっ…?」
「聖なる夜に向けたイベントなんだから、千早の澄んだ声は合うと思うけどな」
千早「プロデューサー…」
「じゃあ何で自分が呼ばれたんだ?」
「明るいイベントなんだから、響みたいな元気な子も欲しいんだろうな」
「そっか…プロデューサー」
「それでどうする?千早」
千早「私なんかで良かったら…はい」
「よし、決まりだな」
千早「それでなんですが…この『歌』とは何でしょうか?」
「点灯式の前に盛り上げるために歌って欲しいんだって」
「なるほどなー」
「それで向こうで指定された曲がこの1曲と…」
と、二人に楽譜を渡すプロデューサー。
「1曲と?」
「自分たちの曲を1曲やっていいってさ。クリスマスっぽい曲との指定はあるけどな」
千早「それなら、神さまのBirthdayですね」
「だろうな。響はどうだ?」
「自分もそれでかまわないぞ」
「じゃあそっちもこれで決まりだな」
千早「しかしさっき戴いたこの譜面…二人でしかもアカペラでハモるということですか…」
「そういうことだな。千早はいいとしても響は大丈夫か?」
「アカペラ?うー、どうだろう?」
「もうレッスン部屋はとってあるけど、どうだ?これから」
「いいのか?」
「ああ。少なくとも千早くらいは自主レッスンに来るかと思って空けといたから」
千早「プロデューサー…そんな、私のために…」
「まあうちのだから来なかったら来なかったで問題は無いし、他の人が来たら貸すつもりだったしさ」
千早「しかしこんな天気の中では来ようにも…」
そう、外はみぞれが混じったような雨になっていた。
「そもそも今日は仕事休みなのにどうして来たんだ?響」
「へ?そうだったっけ?あるつもりで来たんだけど」
「…響、一昨日に俺が送ったメール見てないだろ?」
「え?一昨日、何か送ったのか?」
「やっぱり…お前から来たメールに返信しただろ?」
「そだっけ?ちょっと見てみる」
千早「プロデューサー…我那覇さんとそんな仲なんですか…?」
「ご、誤解するなって千早。そんなメールじゃないから」
千早「本当ですか…?(じとー)」
妙にじと目になる千早。
「本当だって、だよな?響」
「え?自分が送ったのって、明日買い物に付き合って欲しいってのだぞ」
千早「プロデューサー!」
「いや、餌の買い出しに車が欲しいって言われただけだぞ」
千早「そう…ですか」
「あ、あったあった。プロデューサーからのが無題だったから、見逃してたみたいだ」
「今日から見て明後日の夜って書いてあるだろ?」
「あーほんとだ。ゴメンゴメン」
「でも逆に来てくれてよかったよ。この話も出来たしさ」
千早「でも…餌の買い出しとは言え、我那覇さんと二人っきりで買い物だったんですね?」
「それは…」
千早「もう…私のことなんて…」
「千早!」
ギュッ
響も居る前で千早を抱きしめるプロデューサー。
千早「プ、プロデューサーっ!?」
「本当に千早は焼きもち焼きさんだな…」
千早「だって…」
「あのー、プロデューサー?」
千早「この頃全然かまってくれなかったから…」
「そんなこと…」
つんっ
千早の額を突いたプロデューサー。
千早「んきゅっ!」
「ないだろ?たった4日じゃないか」
千早「でも…寂しくて」
「あのー、おふたりさーん」
「本当に千早は寂しんぼさんなんだから」
千早「私をそんな風にしたのはプロデューサーではないですか」
「俺はそんな千早にした憶えは無いけ…」
チュッ
千早の唇はプロデューサーの唇を捉えていた。
千早「んっ…」
「!?!?」
それを目の当たりにした響はたまったもんじゃない。急展開に目を白黒させていた。
「ちょ、ちょっと千早!響も居るんだぞ!」
千早「…っ!?」
その言葉にようやく我に返った千早。
千早「…ごめんなさい!我那覇さん…」
「うう…ゴメン千早。何か自分、悪いことしちゃったみたいだな」
千早「そんなことないわ。それくらいプロデューサーなら当然のことだもの」
「プロデューサー、もう少し千早にかまってやらなきゃダメだぞ。千早はあんまりそういうこと主張したがらないんだからな」
「う…分かったよ。今度の休み、一緒にどっか行くか?」
千早「はい…」
「それにしても自分が見てる前で…よく堂々とするんだな」
千早「えっと…」
「プロデューサーって、結構デリカシー無いよなー」
千早「プロデューサーは悪くないわ、だって今のは私の衝動なんだから」
「千早もなー。自分だってプロデューサーが好きなのに、目の前であんなことされちゃあなー」
「千早は悪くないぞ。俺がしっかりしてない方が悪いんだから…ってええ!?」
千早「やっぱり…それなら、プロデューサー」
「いいんだな?千早」
千早「ええ。これからは仲間でありライバルの証として…」
「分かってる。響、覚悟はいいな?」
「な、何をするんだ!?」
その刹那…
チュッ
プロデューサーと響の唇が重ね合わされていた。
「んんっ…」
「ゴメンな、響。千早の後になっちゃって」
「ううん、いいんだ。自分はまだプロデューサーに伝えてなかったからな」
千早「これで私と我那覇さんはライバルね」
「そうだな。負けないぞ千早」
「それはそうと二人とも、まずはこの仕事な」
千早「はい…」
「うんっ」
わだかまりが無くなった二人は、とあるイルミネーションの点灯式を無事にやり遂げたという…
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あとがき
ども、飛神宮子です。
今度は千早と響。前回のあずさと貴音のものと対になっているようなそうでないような…
じゃ、今回の最後は昔作った短歌で締めようかと思います。
星空と ※光輝き 重ねれば 大小空に 広がる光 ※の読み=ひかりかがやき/イルミネーション
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2009・11・14SAT
飛神宮子
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