Delicious Blasting(美味しい響き)

♪〜
美希の携帯電話にメールの着信を告げる音が鳴り響いた。
美希「あっ、ハニーからだ☆」
美希はそのメールを見た瞬間から、歩みが少しずつ速くなっていった…
………
そして事務所に入るなり…
美希「律子は居るの?」
律子「………美希?」
美希「あ、いたの」
律子「律子さん…でしょ?」
振り向いた律子の目は明らかに怒っている。
美希「ご、ごめんなさいなの、律子…さん」
律子「それでどうしたのよ?」
美希「ハニーから来ちゃったの」
律子「来たって…ああ、あれね?」
美希「うん…」
律子「どれどれ?ヒントはどんな感じかしら」
美希「それがぜーんぜん分かんないの」
(1)妖怪
(2)2000年
(3)物置
美希はヒントとなるメールを律子へと見せた。
律子「まあ美希の場合はもう考えられる選択肢は二つしか無いから、安心しなさい」
美希「そうなの?律子」
律子「だーかーらー!」
美希「あ、律子…さん」
律子「まあ結論から言うとそうなのよ。でもどっちかしらねえ…」
美希「それってどことどこなの?」
律子「神奈川と鳥取なのよ。このヒント…また難しいわね」
美希「単語ばっかりだからかな」
律子「そうね、単語だけっていうのはあんまり無かったわ。それにしてもこの2000年って…」
美希「ミキ、生まれた頃くらいだから分からないかも」
律子「私も生まれてからそうは経っていないかしら。幼稚園かそこらだわ」
美希「そんな頃の記憶なんて無いよね」
律子「物心は付いていたけど、覚えているかって言われると…ちょっとね」
美希「それでこの妖怪って、お化けだよね?」
律子「妖怪といえば…鳥取にそういう所はあるのよ。でもいまいち決め手に欠けてるわ」
美希「それだけじゃないってこと?」
律子「そうなのよ。あんのプロデューサー、人を悩ませるのは得意なんだから。今までのヒントも何癖もあったの」
美希「そっかあ…」
そこに…
ガチャ
真美「おっはよーん!」
律子「あら、おはよう真美。今日は何かあったかしら?」
真美「今週末のラジオのゆきぴょんとの打ち合わせだよん。ついでにうちのママがこれ事務所に持って行けって」
美希「これは?」
真美「昔の患者さんから贈られてきたんだって。昨日食べたけど美味しかったよ」
ごとんっ
真美が何やら食べ物が入った袋を机に置いて一つを取り出した。
真美「律っちゃん梨ー!」
律子「へ?」
真美「ほら、ここにちゃんとシール貼ってあるっしょ」
貼られていたシールには「あきづき」と書いてあった。
律子「あー、名前だけは聞いたことがあるのよね」
美希「梨って美味しいよねー」
真美「うんうん、ミキミキも食べる?」
美希「うんっ」
真美「それじゃあ誰かに剥いてもらわないと…」
律子「はいはい、ちょっと剥いてくるから2、3個よこしなさい」
真美「わーい」
………
社長や小鳥にも分けてから戻ってきた律子。
律子「それにしても大きい梨ね」
美希「うんうん、いつも食べてるのってもっと小さなカンジ」
真美「でもでも食べ応えがあっていいよね」
律子「ちゃんと残しておきなさいよ、雪歩も来るんでしょ?」
真美「その時はまた律っちゃんが剥いてくれればいいっしょ」
律子「もう…そういえばこの前は別の梨だったわね」
美希「ハニーがお土産にしてきたの?」
真美「この前のは二十世紀だっけ、あれも美味しかったよね」
律子「あぁ…」
急に頭を抱えた律子。
美希「どうしたの?律子…さん」
律子「何でこう発想の転換ができなかったのよ…2000年で鳥取って二十世紀のことじゃない!」
美希「あーっ!そうなの」
 
小鳥のデスクへと移動した美希。
小鳥「あら?美希ちゃん、どうしたの?」
美希「小鳥、さっきハニーから来たメールのなんだけど…」
小鳥「プロデューサーさん?…今日なのね」
美希「うんっ」
小鳥「それで答えは?」
美希「答えは鳥取…だよね?」
小鳥「………」
小鳥は無言になって…
カチャカチャ ガチャンッ
机の鍵が掛かっている引き出しを開けてそこから一枚の封筒を取り出した。
小鳥「はい、美希ちゃん」
その封筒が美希へと渡された。
小鳥「プロデューサーさん、待ってるわ。明日行ってらっしゃい」
美希「うんっ、行ってくるの」
小鳥「ちょっと待ってね」
PiPiPi♪…
小鳥はとある場所へと電話をかけ始めた。
Trrrrrr…Trrrrrr…
小鳥「もしもし、765プロダクション事務の音無です……はい……では明日品川駅新幹線改札口に10時15分でお願いします」
カチャンッ
小鳥は受話器を戻した。
小鳥「明日10時に品川駅に着くくらいで行くから、ちゃんと準備しておいてね」
美希「持ち物はあの紙に書いてあったので良いの?」
小鳥「ええ。楽しんできて、美希ちゃん」
………
翌日の品川駅改札口…
小鳥「五十嵐さんですね、私は765プロ事務の音無です」
響子「はい、910プロダクションの五十嵐響子ですっ」
そこには右サイドテールの女の子が一人、美希の到着を待っていた。
小鳥「今日はうちの星井をよろしくお願いしますね」
美希「よろしくお願いするの、五十嵐さん」
響子「えっ…五十嵐さんだなんて、同い年ですよね?」
美希「え、そうなの?」
響子「私は15歳ですっ!」
美希「それならミキも15歳だから同い年なの。それじゃあ…下の名前は何だっけ?」
響子「響子ですよ、五十嵐響子です」
美希「それなら響子でいいかな?ミキ、基本的に呼び捨てにしちゃうから…それでもいい?」
響子「はいっ、星井さん」
美希「むー、ミキのことは美希って呼んで欲しいの。響子だけがそれってちょっと違うよ」
響子「じゃあ美希さん、でいいですか?」
美希「うんっ☆」
小鳥「それでは五十嵐さん、2日間よろしくお願いします。美希ちゃん、行ってらっしゃい」
美希「行ってくるの、小鳥」
 
新幹線の車内、二人は隣同士に座っていた。
美希「うー…お腹が空いてきたの…」
響子「どうしたんですか?」
美希「ミキ、ちょっと今日寝坊しちゃって朝ごはん食べられなかったんだ」
響子「それなら…」
響子は上の荷物置きに上げていたバスケットを下ろした。そこには…
響子「これ、本当はお昼ご飯にしようかなって思ってたんですけど…」
美希「おにぎりなのっ!これどうしたの?」
響子「私、取り柄が家事全般くらいなんで」
美希「そーなんだ」
響子「それで飛行機じゃなくて新幹線で行くならお弁当くらいは作りたいなって」
美希「これ食べちゃっていいの?」
響子「はい、食べてもらえると嬉しいです」
美希「それならいっただっきまーす」
響子「召し上がれ、美希さん」
すっかり打ち解けた二人は経由地の大阪までの時間もあっという間だったそうな…
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あとがき
飛神宮子です。
2013年誕生日SSシリーズ、美希は鳥取です。
一緒に行くことになったアイドルは、鳥取出身で五十嵐響子さん、美希とは意外にも同い年です。
ヒントですが(1)は境港市で有名ですね、(2)は文中のまま、(3)は物置→イナバ→因幡です。
HAPPY BIRTHDAY!! Miki HOSHII.
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2013・11・23SAT/NAT
飛神宮子
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