Wrapped in the Blanket of Feather(羽根の毛布に包まれて)

春香、19歳の春のこと…
「お疲れさま、春香」
春香「プロデューサーさんも、今日まで本当におつかれさまでした」
「しかし、あの春香がここまで成長してくれるとはなあ」
春香「むー、何ですか?あの春香って」
「冗談冗談だって。でも最初は、ちょっと歌が好きな普通の女の子って感じだったしな」
春香「そう言われると否定できない自分が悲しいですけど…」
「でもこうして全国ツアーを成功させたんだもんな」
春香「フフフっ、でもこれはプロデューサーさんの力があってこそですよ」
「そうかな?」
春香「だって一番大切な、最初のファンの人が傍にずっと居てくれたんですから」
「…そう言ってもらえるとプロデューサー冥利に尽きるなあ」
春香「プロデューサーさん、明日からは今週いっぱい休みですよね?」
「ちょっと待ってくれ………そうだな、とりあえずゆっくり身体を休めてくれ」
春香「ゆっくりできればいいんだけど…」
「ん?何だ?」
春香「ゆっくりしようとしても、最近買い物とかしてると…」
「なるほど、ファンが寄ってくるのか…」
春香「嬉しいんですけど、でもちょっと疲れちゃうんです…」
「まあしょうがないと割り切るしか無いのかなとは思うけど」
春香「そうですけど…むー…あっ!」
「ん?」
春香「今週いっぱい、プロデューサーさんのマンションで過ごしていいですか?」
「えっ!?それってどういうことだ?」
春香「プロデューサーさん、今週は運転手もお願いしますっ」
「別に俺もオフにしてるからいいけどさ…って、家に帰らなくていいのか?」
春香「今週いっぱいは自由にしていいって、もう私だって大人なんですよっ!」
「それなら…でも荷物はどうするんだ?」
春香「明日、一旦帰ってから持ってきます」
「分かったよ、そこまで言うなら来ても構わないぞ」
春香「エヘヘ、ありがとうございます」
「ま、今日は早くホテルに帰って寝るとするか」
春香「えっと、明日の飛行機って何時でしたっけ?」
「11時半だけど大丈夫だよな?」
春香「疲れて寝過ごさなければ、大丈夫だと思うんですけど…」
「何時間くらいで準備できるんだ?」
春香「んー…2時間くらいあればできると思います」
「ホテルから15分で空港だから…まあ8時までに起きなかったら起こすからな」
春香「はい。これで安心かなっと」
「でもそんなに心配なら、俺の部屋で一緒に寝るか?」
春香「プロデューサーさん、いいんですか?」
「えっ…ちょ、ちょっと冗談で言ったつもりなんだけど」
春香「もうダメです、一度言った言葉は取り消ししちゃダメですよ」
「…何だかうまく乗せられた感があるな」
春香「それじゃあ帰ったらお部屋にお邪魔しちゃいますねっ」
………
翌日、時刻は朝の6時半。
「んーっ、もう朝か…」
そのプロデューサーの傍らには…
春香「くぅ…すぅ…フフフ、プロデューサーさん温かい…」
「やっぱり可愛いな、うん」
と、身体を起こしたプロデューサーの腰へと春香の腕が伸びてきて…
春香「プロデューサーさん、放しませんよー」
「…参ったな、これは起こした方がいいか」
ゆさゆさゆさ
春香「んっ…?んんっ…朝なの…かな?」
「おはよう、春香」
春香「えっ、ど…どどどうしてプロデューサーさんが私のベッドにっ!?」
「昨日俺のところに来たいって言ったのはどこの誰だ?」
むにっ むにゅっ
春香の両頬を摘むプロデューサー。
春香「いひゃいいひゃいです思い出しましひゃからー」
「ほら、早いけどそろそろ起きてくれよ」
春香「はーい」
………
そして時は流れてここはプロデューサーのマンション…
春香「そういえば、プロデューサーさんの家って久しぶりです」
「そうだっけ?まあ男一人の所帯だからこんな感じだけどな」
春香「でも広いですよね」
「確かに一人で住むには広いけどな、でも色々考えてたからさ」
春香「えっ…?」
「プロデュースしてるアイドルとかの避難場所にも使えるようにな」
春香「折り畳みベッドがあったのは、それだったんですか」
「まあな。社長にも協力してもらって、一応色々と揃えてもらってる」
春香「これなら私がしばらく居ても大丈夫ですね」
「そうだな、まあゆっくりできるかは分からないけど」
春香「プロデューサーさんと一緒なら、それだけで…」
「そ、そうか…」
 
その夜…リビングのソファーで微睡みながら二人並んで座っていた。
「明日はどうするんだ?」
春香「んー…明日だけはゆっくり休みたいかなって思うんですけど」
「分かった。まあ明後日のことは明日聞くからいいとして…今日はそっちのベッドで寝てくれよ」
春香「え?一緒じゃないんですか?」
「今日の朝、疑われたからなあ」
春香「もう疑いませんからっ、寂しいんです…」
「分かってるって。まったく、本当にこれじゃ先が思いやられるな」
春香「…先ってどういうことですか?」
「これからのことに決まってるだろ?」
春香「そ、そうですよねー」
「ま、それ以外の意味もあるけどな」
春香「えっ…?」
「あのな、こんなことを言うのは照れるんだけどな…」
真剣な眼差しへと変わり…。
「そろそろ…普通の女の子は辞めてみないか?」
春香「それって…プロデューサーさん!?」
突然のことに一気に紅くなってしまった。
「いつからだったのかな…ま、最初に事務所で逢った時からだろうな」
春香「………(こ、これって…そうだよね)」
「それでこのツアーが終わってもその気持ちが変わらなかったら、伝えようと思って…うわあっ」
春香「プロデューサー…さんっ!」
ぎゅうっ
思い切りプロデューサーへと抱きついた春香、そして…
春香「これからは…○○さんのための女の子に、プロデュースしてください…」
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あとがき
ども、飛神宮子です。
急に甘い物が欲しくなりまして(苦笑)、『あなたへの想い』の第3弾です。
タイトルは内容的にもぴったりな、とあるゲームの音楽「羽根のブランケットにつつまれて」からです。
別の曲を題材にすれば、とタイトル探しに手持ち曲一覧を見て気付きましたが…ま、それはそれで。
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2008・10・17FRI
飛神宮子
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