Get back to the Basics(原点回帰)

とある日の事務所、プロデューサーは頭を抱えていた。
「合格枠は2、でもよりによって相手がなあ…」
あずさ「どうかしたんですか〜?プロデューサーさん」
「あずささん、今度のオーディションなんですが」
あずさ「話はもう彼女の方から聞きました…分かってます」
「そうですか。どうします?今回はパスしますか?」
あずさ「いいえ、やらせてください。これだけはゆずれませんから」
「わ、分かりました。そこまであずささんがやる気ならば、俺としても全力でバックアップしますね」
あずさ「はい、お願いします」
それから前日まで、2人のレッスンは熾烈と化していた。
………
時は流れてオーディション当日…
「大丈夫ですか?あずささん」
あずさ「はい…ここまでやるだけのことはやりましたから」
そこに来たのは…
美希「そっか、プロデューサーさんが今プロデュースしてるのはあずさだったんだ」
あずさ「久しぶりね、美希ちゃん」
美希「ミキが来るのは知ってたんだよね?」
「もちろん書類で確認はしてる」
美希「へえ、それでも勝負に来たんだ」
あずさ「そうよ〜、こういう機会はなかなか無いでしょう」
美希「プロデューサーさんはいいの?」
「あずささんが自分で行くって言ったんだ。俺はそんなあずささんは止められない」
美希「そこまで肩入れしてるって、もう…ミキには心傾かないんだね」
「それはどうかな」
美希「えっ…」
「ま、でも勝負は勝負だ。今日は本気で美希を倒しにいくからな」
美希「フン、掛かってくればいいの」
スタスタスタ
そう言い残して美希はその場を去っていった。
あずさ「プロデューサーさん…」
「あずささん、もう一度確認しますが大丈夫ですね?」
あずさ「はい…やりましょう」
………
オーディションの結果は…
美希「嘘…ミキが負けるなんて…」
あずさ「美希ちゃん…」
美希「あずさ、ミキは1位じゃなきゃ意味が無いの!」
あずさ「でも…」
美希「もうミキは、あの事務所に居られないの…」
あずさ「それってどういう…」
「美希、話は黒井社長から聞いた」
あずさ「あ、プロデューサーさん…私、勝ちましたよ」
「おめでとうございます、あずささん」
美希「バイバイあずさ、もうたぶん逢うことはないからね」
「ちょっと待て美希、まだ話は終わってない」
ガシッ
その場を去ろうとした美希の腕を掴んだプロデューサー。
美希「放してプロデューサーさん、ミキはここにいちゃいけないの!」
「いや、放さない」
美希「どうして!」
「美希はこのままで終わっていいのか?」
美希「でもミキにはもう、どうすることもできないの」
「なあ美希、今は時間が無いからこれだけ言っておく。明後日の午前10時に○○駅東口な」
美希「プロデューサーさん…」
「あずささん、収録の準備に行きましょう。美希、自分に素直になれよ」
………
そして約束の日の○○駅東口…
美希「でも…もうプロデューサーさんになんか顔見せできないの…」
約束の時間に美希はそこに居た。
美希「でも自分に素直…だよね。そう言ってくれたよね」
「美希っ!」
美希「プ、プロデューサーさんっ!」
「ゴメンな、美希を探すのに手間取った」
美希「そんなのいいの。だって、だって…」
もう美希の中では押さえられなかったようだ。
美希「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!」
プロデューサーの胸へと飛び込んで周りを憚らずに泣き出した美希。
トントン トントン
プロディーサーはそんな美希の背中を優しく叩いてあげた。
美希「ミキ、どうしたらいいのか分からなくなったの」
「こっちに戻ってくればいいさ」
美希「…っく、いいの?だってあんなことしちゃったし」
「千早も律子もあずささんも、そして社長も戻って来いってさ」
美希「ミキ、戻ってもいいんだね?」
「ああ。ただ一つだけ約束がある」
美希「やく…んっ…そく?」
「もう、あんなことで出ていかないこと。それだけだ」
美希「うー…うん。でもミキ達のこと、961プロよりももっと大切にしてね」
「ああ…えっ?ちょっと待て…達って何だ?」
美希「貴音、響、出てきてなの」
貴音「お久し振りです…あなた様。あなた様の指導の粋には、ぐうの音も出ませんでした」
「久しぶりだな765プロ。律子の的確なあのアピールには、さすがの自分も参ったぞ」
「美希、話を聞かせてくれないか?」
美希「同じ日に貴音は伊織に、響はやよいに負けたの。」
美希とあずさが闘ったその日、別の場所では貴音と伊織、響とやよいがそれぞれ別のオーディションで闘ったのだ。
美希「プロデューサーさん、知ってたんだよね?」
「ああ。今のあの3人なら、今のお前たちに負けるとは思わなかったからな」
美希「ありがとうなの…ミキ達を目覚めさせてくれて」
「…美希、響、貴音、行こうか、765プロに!」
3人「はいなのっ」 「そうだなっ」 「はい…」
………
数週間後…
あずさ「美希ちゃん、これ食べて〜」
美希「おにぎり!?あずさ、これどうしたの?」
あずさ「今日のライブは夕方からじゃない、お腹空くわよ」
美希「あー、そうだったの。サンキュなの」
「あずささん、俺の分ってあります?」
美希「プロデューサーさんの分は…んぐっ、もう無いの!」
「あずささんのお手製のおにぎり…食べたかったなあ…」
あずさ「あら〜、今度はプロデューサーさんの分も作ってきますー」
美希「それならミキも作って来るの。それでいいよね?」
「…食べられるくらいの量でな。よし、今日は二人とも頼むぞ!」
あずさ・美希「はい〜」 「分かってるの!」
「…もう大丈夫だな、この二人なら…いや、この『infinity』なら」
もうこの光景を二度と離すまい、そう心に誓ったプロデューサーであった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
美希の961プロとしての初書き。かなり黒くしてます。美希の場合、完全にライバル視しているということで…。
正直、今回書いていて心がかなり痛みました。何度も同じ部分で書き直したくらいですから。
最後の『infinity』は【三】浦と【星】井、そしてそれが関連した某曲のタイトルからです。
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2010・03・20SAT
飛神宮子
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