Attractive Troll(艶かしい輪唱)

ここは8月も終わりの…
「うわー、やっぱり暑いなあ」
「真は誕生日がこの時期だからなあ」
「でもこの季節、ボクは好きですよ」
「そっか、でもやっぱり真は響と同じくらい夏が似合うな」
「あ、ありがとうございます!」
「さてそろそろ始めていいか?」
「はい、お願いします」
「じゃあカメラ回すから、自分のタイミングで始めていいぞ」
プロデューサーは真にカメラを向けた。
「はいっ、皆さんこんにちは!菊地真です。今日は誕生日ということで旅行に来てます」
真はカメラに向けて笑顔で喋り始めた・
「ここがどこかというと…」
プロデューサーはカメラを引きながら少し下がった。
「ここは長野県は松本です。今日と明日、ボクともう一人で長野県の松本と長野を旅します」
ここで真は手招きをした。
「では今回一緒に旅をしてくれる人を紹介します。隣に来て」
雪歩「はい、真ちゃん」
「今の声を聞いてもう分かりましたね?では、今回一緒に旅をしてもらうのは…」
雪歩「こんにちは、萩原雪歩ですぅ」
「というわけで今回は雪歩と一緒に旅をします。今日はこの松本市を…」
雪歩「明日は長野市に行っちゃいます」
「それでここでは…何をするんですか?プロデューサー」
「ここでは昼ご飯だな…と言いたいんだけど、まずは移動だ」
「え?どこに行くんですか?」
「ちょっと北西の方だな。じゃあ電車に乗って行くぞ」
雪歩「お昼ご飯はそっちで食べるんですね?」
「そういうことになるな。ちゃんと我慢できるかな?」
「え…」
「ま、着いてからのお楽しみってとこだ」
雪歩「私たち、何を食べさせられるのかなぁ?」
「我慢って言ってたけど…うーん、まずは行ってみようよ」
雪歩「そうだね、行こっ真ちゃん」
二人はプロデューサーに付いていった…
 
時はまだ夕飯前、ここは長野のかなり北の方にあるとある温泉宿の家族風呂…
「ふう…今日は何だか凄い一日だったね」
雪歩「うん…でもこうやって一日一緒に過ごせて…」
ぴとっ
温泉の湯船に浸かりながら真に寄り添った雪歩。
雪歩「良かったなあって」
「でもお昼ご飯はまさかだったね」
雪歩「プロデューサーも酷かったね、ワサビ尽くしなんて」
そう、昼ごはんの行き先は…
………
「さあ、この電車に乗って隣の市に行くぞ」
「この路線って…大糸線…聞いたことある?雪歩」
雪歩「ううん、どこに行くのかも全く知らないよ」
「ああ、行く場所は隣にある安曇野市だ」
「聞いたことある?」
雪歩「んー、何となくしかないかなあ」
「まあ着いてからのお楽しみだから、楽しみにしておいてな」
………
「あの我慢する雪歩の顔…」
つんっ
真は雪歩の頬を突いた。
「可愛かったなあ」
雪歩「もう、真ちゃんったらぁ…」
そうされた雪歩の顔は満更ではなさそうである。
「でも今日は暑かったね」
雪歩「うん、さすがに長湯は厳しいかな」
「じゃあそろそろ上がって身体流そうよ」
雪歩「そうだね」
ザパッ ザバンッ
二人は浸かっていた湯船から上がって洗い場へと移った。
 
「雪歩はやっぱり色白だなあ」
雪歩「そうかな?真ちゃん」
「うん、ほらボクと比べたらずっと白いって」
雪歩「でも真ちゃんみたいに健康的な色っていいなあって思うよ」
「あんまり気にしないのも良くないって、この前プロデューサーに怒られちゃった」
雪歩「フフフ、確かに急に焼けちゃうとお仕事に支障でちゃうし」
「そうだよなあ、ボク達は急に変わったりできないからさ」
雪歩「少しずつ変わっても、テレビとか雑誌とかって一瞬を見てもらう物だもん」
「それだよそれ。だからこの時期はまた気を使わないとね」
雪歩「でも今日の真ちゃん、いつもと違う感じだったね」
「あ、ありがとう雪歩。誕生日だからちょっといつものイメージと違うのにしたんだけどさ」
雪歩「ファンのみんなはどう言うか分からないけど、その…私は…」
チュッ
雪歩は横で身体を洗っていた真の頬にキスをした。
雪歩「そういう真ちゃんも好きかなぁ」
「…雪歩はああいうのも好き?」
雪歩「…うん。男の子みたいなのも女の子みたいなのも…どっちもね」
「何だかそう言われると照れるんだけどさ…」
雪歩「真ちゃん、そういうところが可愛い…」
「え…うう…何だか恥ずかしいなあ」
そこで真は話をはぐらかすように…
「ほらほら雪歩、ちゃんと身体洗おうよ」
雪歩「う、うん。もうすぐ夕ご飯だから急がないとかな」
「今は軽くで、また後で入ればいいじゃん」
雪歩「そうだね…」
 
そして夕飯後、再び寝る前に汗を流すために家族風呂へと戻ってきた。
雪歩「そういえば真ちゃん、どうして誕生日にみんなこうして旅行してるか知ってる?」
「そうだなあ…そういえばどうしてなんだろう?」
脚だけ湯船に浸けて談笑していた二人。
雪歩「あれ?真ちゃんって誰にも聞いてない?」
「そういえば旅行に行ったって話しか聞いてないや」
雪歩「この前、貴音さんと真美ちゃんに聞いちゃったんだ」
「へえ、それで…」
すくっ
真の言葉を遮るかのように急に立ち上がった雪歩。
「…ってどうしたの!?雪歩」
そして…
「うわあっ!?!?」
ドサンっ
真の身体はそのまま床へと押し倒された。
「雪歩っ!?いきなりどうして!?」
ぎゅうっ チュウッ
そのまま真に覆いかぶさり口付けをする雪歩。
雪歩「あのね…みんなこういうことしてたんだって…」
「えっ…」
雪歩「好きな人と一緒に行くってことで…みんな夜はこういうことになっちゃったって」
「そうだったんだ…そういえばみんなイメージ変わってたって思ってたけど…」
雪歩「貴音さんと亜美ちゃんも、真美ちゃんと小鳥さんも…その…ね」
「雪歩は…どう?」
雪歩「真ちゃんは?」
「そんなの…」
チュウッ
真は雪歩の唇へと吸い付いた。
「雪歩のこと…今日は寝かさないよ?」
雪歩「真ちゃぁん…っ!」
温泉、寝床、そして朝のお風呂、二人の艶歌の輪唱は紡がれ続けていった…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
飛神宮子です。
2012年誕生日SSシリーズ、真と旅するのは…雪歩になりました。
導入を除けばシリーズ10本目にして二人とも初登場。でもいつもの二人でしたね(苦笑)
大糸線は松本から実際に乗ったので何となくではないですよ。時期的に蕎麦ってわけでも…でしたから。
HAPPY BIRTHDAY!! Makoto KIKUCHI.
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2012・08・25SAT
飛神宮子
短編小説に戻る