Aplomb a Deux(二人だけの自信)

カタカタカタカタカタ…
事務所の中に響き渡るキーボードを打つ音。
小鳥「ふう…今日は本当に午後から休めるのかしら…」
「本当は今日休める予定だったんだけどなあ…」
カタカタカタカタカタ…
小鳥「もう…本当に社長は急にどうしてこんなに持ってきたんでしょう?」
「何か、急にティンと来たとか言ってましたよ」
小鳥「社長の思いつきもたまににして欲しいですね…」
今日は金曜日。貴音とあずさは律子に任せてしまって、他はみんな学校でいない。
「でもあと少しじゃないですか」
小鳥「だって今日は…貴方との時間が沢山欲しかったから…」
本来は休みの予定だったプロデューサーと小鳥。しかし社長に急に呼び出されて仕事の処理に追われているようだ。
「俺もあとはこの連絡だけで終わりますから、終わったら社長に報告して今日は上がりましょう」
小鳥「そうです…ね」
 
小鳥「終わったわ…これで全部ね」
「じゃあ俺はちょっと社長の所に行ってきますよ」
小鳥「分かりました。その間に私は着替えてきます」
「はい。今日はそっちでいいんですよね?」
小鳥「明日はどうなんです?」
「明日は…昼の紫陽花のイベントと夜にあずささんですね」
小鳥「それなら、今日はやっぱり私の家で…貴方に元気を出してもらわなくちゃ…ね」
「…はい」
少しだけ顔を紅くした二人。今日は何やらあるようです。
………
プロデューサーの車の中…
「まったく、社長も人使いが荒いんですから…ねえ」
小鳥「本当にね。今日って有給のはずなのに…」
「ケーキの予約時間ギリギリですよもう」
ん?ケーキの予約時間?
小鳥「でもこうして社長からお詫びも貰えましたから」
「確かにケーキ代くらい貰っても悪くは無いでしょう」
小鳥「これで何か別な物も買います?ケーキ代は別にあるんでしょ?」
「はい。じゃあちょっと何か買い足しますか、折角の誕生日ですから」
今日は9月9日の金曜日、つまりは小鳥の誕生日なので二人とも休みにしていたのだ。
小鳥「それなら…今日はさらに元気を出してもらうために…アレ買って行きましょ」
「…アレですか?もうそんなことしたら止めませんよ今日は」
小鳥「…もともとそのつもりだったくせに、貴方…」
チュッ
信号で停まっている車の中、二人の唇が合わさった。
「分かりましたよ。今日は小鳥がもうやめてって言ってもやめませんから」
小鳥「フフフ…貴方ももうやめてって言ってもやめないから…」
「あ、そうだ。行く前に俺の家に行っても良いですか?ちょっととってきたい物があるんで」
小鳥「ええ」
車はプロデューサーの家へと進路を変えていった。
………
所変わってここは小鳥のマンション。
「何だか変な気分ですよ」
小鳥「…でも、この時期だからまだ過ごし易いでしょう?」
「でも誰かに見られたらどうするつもりなんですか」
小鳥「大丈夫。ここはセキュリティだけはしっかりしてるわ」
「まさかこんな恰好で昼食から食べるなんて…」
小鳥「これからお風呂に入るし…それにもう何回も見合ってるんですから」
そう…実は二人とももう何も身に付けていないのだ。
「いつも見合っているのは夜じゃないですか」
小鳥「でも今日はもともと一日中のつもりだったでしょ?」
「まあそうですけど…」
小鳥「だから…ね」
チュッ
「んっ…!」
プロデューサーの少し感じるところに唇を付けた小鳥。
「小鳥…じゃあお返しっと」
チュゥッ
小鳥「んぁっ…!もうっ…」
あーあ、お風呂に入る前に第一ラウンドが始まっちゃった…
 
「…それにしても本当に良かったんですか?」
ここはお風呂の後のベッドの上…もちろん二人は何も身に付けていない。
小鳥「…えっ?何のことですか?」
「他の子のことですよ。小鳥は公認してくれてるけど…」
小鳥「フフフ…みんなから何も聞いてないの?」
「えっ…?」
小鳥「みんなやっぱり貴方のことを好き…なの。最初に自らを導いてくれた人だもの」
「………」
小鳥「好き、でも貴方には私が…その葛藤に悩んでいたのよ」
「それで…でも、どうして小鳥は?」
小鳥「律子さんやあずささん、それに春香ちゃんにも相談されたの。個別に受けたけど殆ど同じ内容だったわ」
「そうだったんですか…」
小鳥「自分がその基を作ってしまったんだもの。でも私はこのくらいのことで貴方の心が動くことは無い…そう感じたわ」
「ああ、それだけは言えるさ」
小鳥「だから、今回だけって…仕事もいくつかは私の案でお願いしたの…」
「小鳥…」
小鳥「でもここまでやって分かったわ」
「分かった?」
小鳥「貴方が…」
チュウゥゥッ
小鳥はプロデューサーの唇に吸い付いた。
小鳥「こんなことで決して心傾かない人だってこと…それから私が愛するべきただ一人の男の人だってこと…」
「小鳥っ!」
ぎゅうっ
プロデューサーは小鳥を抱きしめた。
「ああ。どんなになっても心の中にはいつも小鳥が居たさ」
小鳥「貴方…」
「小鳥が自分の愛するべきただ一人の女の人だから…それは自信を持って言えるよ」
小鳥「…良かった。こんなに私のことを想ってくれる人に巡り合えて…」
「…俺もだよ」
ギュッ
小鳥もプロデューサーを抱きしめ返した。
小鳥「…貴方…また元気になってる…」
「そう言う小鳥だって俺の方に伝ってるよ…」
小鳥「今日は…私のこと好きにして…」
「小鳥も…俺のこと好きにしてよ…」
お互いの温もりの交換、どうやらまだ終わりは見えないようだ…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
誕生日SSシリーズ、小鳥さん編です。そして、鈴音天晶10周年記念SS…こんなのでいいのかなあ…。
今までのある意味解答編のような感じです。考えてみたらそうですよね、なぜ小鳥さんが何も言って来ないのか。
それが今回のタイトルの「自信」に籠められています。揺らぐことのない心が無くてはどうもなりません。
Happy Birthday!! Kotori OTONASHI.
 
P.S.
今日、新潟での長谷川明子さんのイベントに行きました。報告まで。詳しくは知ってる方はブログへ。
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2011・09・03SAT
飛神宮子
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