I Feel an Affection for You(そんなあなたが愛おしい)

ある日の朝の事務所…
ガチャッ
一人の少女が事務室へと入ってきた。そして忍び足でとある人の座っている椅子へと近付く…
そして…
真美「おっはよーんっ!」
むぎゅっ むにゅっ
律子「ひゃあんっ!」
いきなり座っている後ろから誰かに胸を握られて喘ぐ律子。
律子「ちょ、ちょっと誰よ!…ってその声で分かったわ…」
椅子を回転させてその当人の方へと向けて…
律子「あのねえ…」
グリグリグリグリ
両手でこめかみをグリグリしながら静かに怒っている。
真美「痛い痛い痛いって律っちゃーん!」
グリグリグリグリ
律子「ああいうことしながら挨拶なんて、一体どういうことかしら?真美」
真美「ゴメンなさいー!もうしないから許してー!」
律子「もう…」
ようやく真美の顔は解放された。
律子「そんなことよりおはよう真美、今日は早いのね」
真美「おはよん律っちゃん。だって今日は寒かったから事務所なら暖かいって思ってね」
律子「ん?そういえば亜美はどうしたのよ」
真美「寝てたから置いてきた」
律子「二人一緒じゃないってことは…仕事は無いのね?」
真美「うん。だけど家に居てもつまんないもん」
律子「はあ…まったく、ここは託児所じゃないのよ?」
真美「そういえば今日兄ちゃんは?」
律子「ほら、そこのホワイトボードに書いてあるでしょ」
予定を見るとプロデューサーは何人か連れてグラビアの撮影に海外出張のようだ。
真美「そっかあ…兄ちゃんが居ないとつまんないなあ」
律子「しょうがないじゃない。ほら、仕事の邪魔になるからそっち行ってなさい」
真美「むー…」
律子「そこのパソコンなら自由に使ってていいから。変なことはしないならね」
真美「勝手に使っちゃっていいの?」
律子「いいのよ。その代わりそんなにスペックは高くはないわよ」
真美「これって通信もできる?」
律子「出来るしセキュリティソフトも入れてあるから問題無いわ」
真美「じゃ、しばらくこれで遊んでるねー」
 
しばらくして、時刻は大体午前の10時…
Trrrr… Trrrr…
ガチャッ
小鳥「はい765プロダクションです、いつもお世話になっております………」
どこかから来た電話を、あの後に業務に入った小鳥が受けたようだ。
小鳥「………それでですか…少々お待ち下さい、本人に代わりますので」
PI♪
小鳥「律子さーん、FM-△△△からお電話よー」
律子「用件は何ですか?」
小鳥「今日のラジオのピンチヒッターを頼まれてくれないかですって」
律子「ええっ!?どういうことですか?」
小鳥「詳しくは保留にしてある電話で聞いて欲しいんだけど」
律子「分かりました、受け取りますからこっちの電話機に転送してください」
小鳥「了解」
PI♪
律子「もしもし、お電話変わりました秋月です。いつもお世話になっています、それで………」
 
律子「…その分を上乗せということで…はい、分かりました、お受けいたします」
どうやら話がまとまったようだ。
律子「それで打ち合わせは……はい、その時間までに行けば…分かりました」
そこで律子が何やら思いついた。
律子「あ、一人ゲストを連れて行っても構わないでしょうか?はい、うちの事務所の後輩です…はい」
白羽の矢が立ったことに本人はまだ気が付いていない。
律子「その分はいいですって、本人が暇してるみたいなんで。はい、ではその時間までにそちらへ…では」
カチャンっ
小鳥「受けるのね?律子さん」
律子「ええ。きちんと色々と交渉したのでOK貰えましたから」
小鳥「車は必要かしら?」
律子「小鳥さん、出してくれますか?」
小鳥「それくらいなら構わないわ。それで、さっきの電話で何か言ってたわよね?」
律子「はい。さーて、本人が番組を潰さなければいいけど…」
その本人の座っているデスクへと移動する律子。
律子「真美、ちょっといい?」
真美「何ー?」
律子「今日は何時まで暇かしら?」
真美「夜遅くならなきゃ大丈夫だよー」
律子「それなら…」
………
ポーン♪
♪〜
律子「秋月律子の…空のなないろ!」
軽快な自分の曲と共に入るタイトルコール。
律子「2時になりました。FM-△△△、◇◇◇FM、FM○○○をお聴きの皆さまこんにちは」
律子は慣れた口調で声を乗せていく。
律子「『何で?』と思われた方、大正解です。今週のパーソナリティの□□さんですが、体調不良のためお休みになってしまいました」
少しずつトーンを落としていく。
律子「□□さんゆっくりと休んでてください…ですので今週は偶数週担当の秋月律子がお送りいたします。急でしたので、今週のメールテーマはフリーです」
気遣いは忘れないところが律子らしい。
律子「FAXは〜〜〜〜、メールは〜〜〜〜〜です。携帯からも送れます。奇数週ですがコーナーは今週だけ私のになりますのでお間違えなく」
ブース外ではとある女の子が少し緊張して待機していた。
律子「しかしそれでは□□さんを楽しみにされていた方に申し訳ないので…」
ここで声のトーンを変えて…
律子「事務所の後輩ですが、1人ゲストをお呼びしています。CMの後から登場してくれます!」
そしてオープニングの締めに入る。
律子「それでは、今週も4時までの2時間。ラジオの波が私とリスナーの七色の架け橋になりますように…」
CMに入り…
コンコン カチャッ
真美「律っちゃん、もう入っていいんだよね?」
律子「ええ。でも急だったから断っても良かったのに、ありがと真美」
真美「ううん、だってどーせ暇してたもん。それに…」
律子「それに?」
真美「何だかんだ言っても真美のこと気に掛けてくれてたのが嬉しかったもん」
律子「真美…今日は邪険にしてゴメンね」
真美「気にしなくていーよ、律っちゃん。そういえば今日は真美としてでいいんだよね?」
律子「ええ。あ、もうCM開けるから準備頼むわよ」
真美「うんっ」
CMが空けて…
律子「はい、では登場いただきます。私の事務所の後輩でもある双海真美ちゃんです!」
真美「こんにちは〜」
急な出演であったにも関わらず、聴取率はいつもより高かったというのはまた別の話である…
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あとがき
ども、飛神宮子です。
かなりの変化球な組み合わせになりましたがやってみました。
真美は私の中では思いやりのある子ですよ、ですよ。
さて、明日は…まあお土産話を期待しといてくださいな。
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2009・11・20FRI
飛神宮子
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