P | 「ん?あの子は…」 |
夕方の帰り道、プロデューサーは向こう側から走ってくる見覚えのある少女を見つけた。 |
響 | 「こらーイヌ美ー!待てーっ!」 |
と、その少女がふと視線の先にプロデューサーを見つけ… |
響 | 「あ!765プロー!イヌ美を捕まえてくれー!」 |
P | 「え?あ、ああ分かった!」 |
パシッ |
プロデューサーはとっさに引きずられていたリードを引っ張った。 |
きゃうんっ |
プロデューサーは少し引っ張られながら踏ん張ってその犬を止めたようだ。 |
響 | 「サンキュな…ってな、765プロ!?」 |
P | 「何だよ、捕まえてくれって言ったのは響の方だろ?」 |
響 | 「う…それだけは礼を言うさ」 |
P | 「それで今度はどうしてペットを逃がしたんだ?」 |
響 | 「料理してたら肉が足りなくなってさ、イヌ美の餌用の肉を使ったらこの有様だ」 |
P | 「餌用って…大丈夫なのか?」 |
響 | 「別にただの牛肉だから大丈夫さ。たまには食べさせてやらないとさー」 |
P | 「それで逃がしてここまで追ってきたってことか」 |
響 | 「切り途中の肉を半分くらい咥えて逃げたからな」 |
P | 「それで追ってる途中に俺が居たってところか」 |
響 | 「まさか765プロがこんなところにいるなんて思わなくて、とっさに叫んじゃったんさ」 |
P | 「それにしても響がペット逃がしている時によく会うよなあ…」 |
響 | 「何か知らないけど、765プロの方に逃げるんさ」 |
P | 「ま、俺はいいけどさ」 |
響 | 「でもどうしたんだ?765プロの事務所は違う場所だろ?」 |
P | 「こっちであいさつ回りがあったんだ。その帰りだ」 |
響 | 「ふーん、思ったより大変なんだな」 |
P | 「これもアイドルを育てるための大切な足がかりさ」 |
響 | 「ま、自分はそんなことしなくても大丈夫だけどな」 |
P | 「そうだよな。そうだ、美希は元気か?」 |
響 | 「美希か?まあ元気してるさ。相変わらず765プロのこと言ってるけどな」 |
P | 「あー…やっぱりか」 |
頭をポリポリ掻くプロデューサー。 |
響 | 「ほんっとあれだけ未練がましいところを見ると、美希はアンタのこと好きなんだなー」 |
P | 「いや、本当に美希には未だに悪いなと思ってるんだけどさ…ってこんなところで話してるのもなんだな…」 |
響 | 「…そうだな、場所変えるか?…って何で自分、765プロとこんな長話してるんだ!?」 |
P | 「さあ?まあ最初に話を振ってきたのは響の方じゃないか?」 |
響 | 「そうだけど…まあいいや。でも自分たち敵同士の割に、こういう時によく会うさー」 |
P | 「まあな。でも別に今は敵味方はどうでもいいだろ?」 |
響 | 「そうか?」 |
P | 「今はお互い公私で言ったら私の方だろ?」 |
響 | 「確かにそうだけどな…あれ?765プロは帰る途中だよな?」 |
P | 「別に直帰だから、事務所に直接戻らないし大丈夫だ」 |
響 | 「そういうことか。まあと言ってもこの辺何も無いからなー…うちに来るか?」 |
P | 「いいのか?」 |
響 | 「家にまでは社長の目は向いてないから大丈夫さ」 |
P | 「いやそうじゃなくて…女の子の部屋だけど俺が行ってもいいのか?」 |
響 | 「…まあお世話にはなってるし、せっかくだから他の動物も見てもらおうと思うからな」 |
P | 「じゃあちょっと寄らせてもらおうかな」 |
……… |
響 | 「ただいまー!みんなー!」 |
響がマンションのドアを開けた瞬間、さまざまな鳴き声が響き渡った。 |
P | 「うわっ!本当にいっぱいいるもんだな」 |
響 | 「ほらイヌ美、入ってろ」 |
ワンワンっ |
イヌ美も犬小屋に入って行った。 |
響 | 「765プロ、ちょっとそっちの部屋に行ってて。今餌やりするからさ」 |
P | 「分かった…本当にケージに入っているとはいえ凄い数だな…」 |
|
ここはどうやらリビングのようだ。 |
響 | 「よしこれで終わりだな。もうみんな寝ていいぞー」 |
P | 「これだけ居ると大変だな、みんな違う物を与えてさ」 |
響 | 「まあ自分も好きでやってるからさ」 |
P | 「でもどうしてこんなにいっぱい飼ってるんだ?」 |
響 | 「何でって言われると困るけど…一人じゃ寂しいからだな」 |
P | 「そういえばこっちには一人で来てるんだよな」 |
響 | 「家族…残して独りで来ちゃったからな」 |
P | 「そっか…」 |
響 | 「でも今は強くなって765プロを倒すことだけしか考えられなくなっちゃったからさ」 |
P | 「…お手柔らかにな」 |
響 | 「一つ…聞いていいか?」 |
P | 「何だ?響」 |
響 | 「何で765プロは自分にこんなに優しくしてくれるんだ?」 |
P | 「え…?」 |
響 | 「だって、別にイヌ美のこと放って帰っても良かったんだしさ…自分、ペットのことだと随分世話になってるさ」 |
P | 「どうしてって言われると困るな…」 |
響 | 「自分はこんなに敵対心むき出しなんだぞ。それなのにこんなに優しく接してくれるなんてありえないぞ」 |
P | 「何て言うかさ…俺が敵と思っているのは961プロ自体だから…かな」 |
響 | 「それって…」 |
P | 「俺自身は、美希も貴音も…そして響も敵だなんて思ったことはないんだ。オーディションは別にしてさ」 |
響 | 「そうなんだ…」 |
P | 「響こそ、どうして俺なんかを家に入れたんだ?」 |
響 | 「それは…この近くに話すような場所なんか無かったからさ」 |
P | 「でも、近くに公園くらいはあったよな」 |
響 | 「自分は…お世話になってるからな」 |
P | 「ま、深くは詮索しないさ」 |
響 | 「あ、でもさ」 |
P | 「ん?」 |
響 | 「765プロのこと、敵だとは思ってるけど嫌いじゃないぞ」 |
P | 「…そっか」 |
響 | 「セクハラプロデューサーだとは思ってるけどさ」 |
P | 「だから…それは誤解だっていつも言ってるじゃないか」 |
響 | 「でも今日で分かったさ。765プロはそんなことする人じゃなさそうだなって」 |
P | 「そう思ってくれるならありがたいな」 |
響 | 「そうだ。765プロ、夕飯食べてくか?」 |
P | 「え?いいのか?」 |
響 | 「別に構わないぞ。下ごしらえの途中だったから、すぐに出来るからさ」 |
P | 「それならご相伴に与かるよ、折角だし」 |
響 | 「じゃあちょっと待っててな」 |
どこか心に刺さっていたトゲが抜けていく、それを感じた二人なのであった… |