The Adversary doesn't mean Mislike(敵と嫌いは違う意味)

「ん?あの子は…」
夕方の帰り道、プロデューサーは向こう側から走ってくる見覚えのある少女を見つけた。
「こらーイヌ美ー!待てーっ!」
と、その少女がふと視線の先にプロデューサーを見つけ…
「あ!765プロー!イヌ美を捕まえてくれー!」
「え?あ、ああ分かった!」
パシッ
プロデューサーはとっさに引きずられていたリードを引っ張った。
きゃうんっ
プロデューサーは少し引っ張られながら踏ん張ってその犬を止めたようだ。
「サンキュな…ってな、765プロ!?」
「何だよ、捕まえてくれって言ったのは響の方だろ?」
「う…それだけは礼を言うさ」
「それで今度はどうしてペットを逃がしたんだ?」
「料理してたら肉が足りなくなってさ、イヌ美の餌用の肉を使ったらこの有様だ」
「餌用って…大丈夫なのか?」
「別にただの牛肉だから大丈夫さ。たまには食べさせてやらないとさー」
「それで逃がしてここまで追ってきたってことか」
「切り途中の肉を半分くらい咥えて逃げたからな」
「それで追ってる途中に俺が居たってところか」
「まさか765プロがこんなところにいるなんて思わなくて、とっさに叫んじゃったんさ」
「それにしても響がペット逃がしている時によく会うよなあ…」
「何か知らないけど、765プロの方に逃げるんさ」
「ま、俺はいいけどさ」
「でもどうしたんだ?765プロの事務所は違う場所だろ?」
「こっちであいさつ回りがあったんだ。その帰りだ」
「ふーん、思ったより大変なんだな」
「これもアイドルを育てるための大切な足がかりさ」
「ま、自分はそんなことしなくても大丈夫だけどな」
「そうだよな。そうだ、美希は元気か?」
「美希か?まあ元気してるさ。相変わらず765プロのこと言ってるけどな」
「あー…やっぱりか」
頭をポリポリ掻くプロデューサー。
「ほんっとあれだけ未練がましいところを見ると、美希はアンタのこと好きなんだなー」
「いや、本当に美希には未だに悪いなと思ってるんだけどさ…ってこんなところで話してるのもなんだな…」
「…そうだな、場所変えるか?…って何で自分、765プロとこんな長話してるんだ!?」
「さあ?まあ最初に話を振ってきたのは響の方じゃないか?」
「そうだけど…まあいいや。でも自分たち敵同士の割に、こういう時によく会うさー」
「まあな。でも別に今は敵味方はどうでもいいだろ?」
「そうか?」
「今はお互い公私で言ったら私の方だろ?」
「確かにそうだけどな…あれ?765プロは帰る途中だよな?」
「別に直帰だから、事務所に直接戻らないし大丈夫だ」
「そういうことか。まあと言ってもこの辺何も無いからなー…うちに来るか?」
「いいのか?」
「家にまでは社長の目は向いてないから大丈夫さ」
「いやそうじゃなくて…女の子の部屋だけど俺が行ってもいいのか?」
「…まあお世話にはなってるし、せっかくだから他の動物も見てもらおうと思うからな」
「じゃあちょっと寄らせてもらおうかな」
………
「ただいまー!みんなー!」
響がマンションのドアを開けた瞬間、さまざまな鳴き声が響き渡った。
「うわっ!本当にいっぱいいるもんだな」
「ほらイヌ美、入ってろ」
ワンワンっ
イヌ美も犬小屋に入って行った。
「765プロ、ちょっとそっちの部屋に行ってて。今餌やりするからさ」
「分かった…本当にケージに入っているとはいえ凄い数だな…」
 
ここはどうやらリビングのようだ。
「よしこれで終わりだな。もうみんな寝ていいぞー」
「これだけ居ると大変だな、みんな違う物を与えてさ」
「まあ自分も好きでやってるからさ」
「でもどうしてこんなにいっぱい飼ってるんだ?」
「何でって言われると困るけど…一人じゃ寂しいからだな」
「そういえばこっちには一人で来てるんだよな」
「家族…残して独りで来ちゃったからな」
「そっか…」
「でも今は強くなって765プロを倒すことだけしか考えられなくなっちゃったからさ」
「…お手柔らかにな」
「一つ…聞いていいか?」
「何だ?響」
「何で765プロは自分にこんなに優しくしてくれるんだ?」
「え…?」
「だって、別にイヌ美のこと放って帰っても良かったんだしさ…自分、ペットのことだと随分世話になってるさ」
「どうしてって言われると困るな…」
「自分はこんなに敵対心むき出しなんだぞ。それなのにこんなに優しく接してくれるなんてありえないぞ」
「何て言うかさ…俺が敵と思っているのは961プロ自体だから…かな」
「それって…」
「俺自身は、美希も貴音も…そして響も敵だなんて思ったことはないんだ。オーディションは別にしてさ」
「そうなんだ…」
「響こそ、どうして俺なんかを家に入れたんだ?」
「それは…この近くに話すような場所なんか無かったからさ」
「でも、近くに公園くらいはあったよな」
「自分は…お世話になってるからな」
「ま、深くは詮索しないさ」
「あ、でもさ」
「ん?」
「765プロのこと、敵だとは思ってるけど嫌いじゃないぞ」
「…そっか」
「セクハラプロデューサーだとは思ってるけどさ」
「だから…それは誤解だっていつも言ってるじゃないか」
「でも今日で分かったさ。765プロはそんなことする人じゃなさそうだなって」
「そう思ってくれるならありがたいな」
「そうだ。765プロ、夕飯食べてくか?」
「え?いいのか?」
「別に構わないぞ。下ごしらえの途中だったから、すぐに出来るからさ」
「それならご相伴に与かるよ、折角だし」
「じゃあちょっと待っててな」
どこか心に刺さっていたトゲが抜けていく、それを感じた二人なのであった…
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あとがき
どもっ、飛神宮子です。
やっぱり初のPとの単騎は961プロとして。貴音もそうだったので響もそうしました。
何と言いますか、響も本質的な部分では嫌ってはいないと思うんですよ。
まあでも3人の中ではプロデューサー自身のことを一番嫌だとは思ってたでしょうけどね。
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2010・08・09MON
飛神宮子
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