ここはとある日の事務所… |
P | 「さってと、そろそろ整理しないとか…」 |
プロデューサーは何やらパソコンのUSB端子に接続したようだ。 |
P | 「しかし随分と溜まったもんだな」 |
机の上にある何枚ものSDカード。そこにはアイドルやグループの名前などが書いてある。 |
P | 「まずはどれからまとめようかな…」 |
と、そこに… |
亜美 | 「兄ちゃん、おっはよーん!」 |
ぎゅうっ |
椅子の後ろから腕が回されて、プロデューサーは抱きしめられた。 |
P | 「その声は…亜美だな?」 |
亜美 | 「当ったりー、よく分かったね?」 |
P | 「真美と若干だけど違うからそれくらい分かるぞ。ん?真美はどうした?」 |
亜美 | 「兄ちゃん、今日亜美たちはオフだよん」 |
P | 「それは分かってるけど、どうして亜美だけなんだ?」 |
亜美 | 「真美はオフだからって出掛けちったんだよ。さっき電話であずさお姉ちゃんと一緒になったって言ってたよ」 |
P | 「そうか、まああずささんもオフだからいいけど…これで迷子の心配も無くなったし」 |
亜美 | 「ところで兄ちゃん何してんの?」 |
P | 「デジカメで撮ってた写真の整理だ。みんなオフにしたし、けっこう溜まってたから纏めないとって思ってな」 |
亜美 | 「見して見してー」 |
P | 「いいぞ。じゃあその椅子座って」 |
亜美 | 「んー」 |
P | 「それなら亜美の写真からまとめるとするか…っと、まずはこれだな」 |
『亜美』と書いてあるSDカードをリーダーに差し込むプロデューサー。 |
亜美 | 「あ、出てきたね」 |
P | 「最初の方は、CDのブックレットを撮った時のやつかな?あずささんも入ってるし」 |
亜美 | 「凄く暑かったよね、でもいっぱい遊べたし楽しかったー」 |
P | 「確かに日向は凄く暑かったな。でもあのCD、凄く好評だったぞ」 |
亜美 | 「友達も凄く良いって言ってくれたよ。サインも弾んじゃったもん」 |
P | 「これからもっと頑張らないとな」 |
亜美 | 「そうだね」 |
と、次の写真にした瞬間… |
亜美 | 「あれ?兄ちゃん、こんな写真撮られた記憶無いよ」 |
そこには木陰で樹にもたれて眠るあずさの膝枕に亜美が寝ている写真があった。 |
P | 「あー…」 |
少し苦笑いするプロデューサー。 |
亜美 | 「うわー、兄ちゃんに盗み撮りされてるー。盗撮だー盗撮ー」 |
P | 「でも上手くは撮れてるだろ?」 |
亜美 | 「上手いけど…これって何かに使った?」 |
P | 「何かに使おうと思って撮ったけど…そういえば特に何にも使ってないな」 |
亜美 | 「それじゃあ誰かに見せた?」 |
P | 「小鳥さんには見せたかもしれないけど、他は無いぞ」 |
亜美 | 「それなら…欲しいかも」 |
P | 「…いいぞ。亜美がそう言うならこの写真は焼いて亜美にあげるよ」 |
亜美 | 「ありがと、兄ちゃん」 |
P | 「こんないい光景、残してあったのすっかり忘れてたなあ」 |
亜美 | 「そ、そうかな?」 |
P | 「だってあずささんの綺麗さと亜美の無邪気さがこの写真には溢れているじゃない」 |
亜美 | 「兄ちゃんにそう言われると、何か恥ずかしいな」 |
P | 「あ、亜美、次の写真見る?」 |
亜美 | 「う、うん」 |
P | 「次の写真は…あのCMの時のやつか」 |
亜美 | 「亜美が犬で、真美が猫で、ひびきんがハムスターだったんだよね」 |
P | 「どうだった?またああいうのやってみたい?」 |
亜美 | 「もしかしてオファーとかって来てんの?」 |
P | 「遊園地とか観光地からCMのオファーは多少あるけどな」 |
亜美 | 「着ぐるみでってことだよね?」 |
P | 「着ぐるみ以外もあるけど、まあ大体はそうだな。亜美の気持ち次第で選んでおくぞ」 |
亜美 | 「面白そうだね、やるやるっ!」 |
P | 「分かった。それじゃあ小鳥さんに1つ通してもらっておくからさ」 |
亜美 | 「いえーい…あれ?亜美だけに聞いたってことは、もしかして亜美だけってこと?」 |
P | 「ああ。今は亜美だけに来てる仕事もかなり多いんだぞ」 |
亜美 | 「そうなんだ。最近は真美とは結構仕事別々になっちゃったなあ」 |
P | 「どうした?また二人で一人に戻りたい?」 |
亜美 | 「んーん、何か淋しくもあって嬉しくもあって複雑なんだ」 |
P | 「…複雑?」 |
亜美 | 「真美にも亜美って名前でやってもらってたから…それは自分だけど自分じゃなかった…」 |
P | 「亜美…」 |
亜美 | 「段々心苦しくなって来たんだよ。真美にも本当の名前で出て欲しくて…」 |
P | 「亜美のその気持ち分かる。俺もそうだったからさ」 |
亜美 | 「だから…真美の単独デビューが決まった時は嬉しかったんだ。ちょっと淋しかったけどね」 |
P | 「そっか…あ、亜美、ちょっとここに座ってくれるか?」 |
プロデューサーは自身の膝の上を指した。 |
亜美 | 「…え?う、うん」 |
ぽふっ |
亜美はプロデューサーの膝の上へと腰かけた。 |
ギュッ |
それを見計らってプロデューサーは亜美の顔をこちらに向けてその身体を抱きしめた。 |
亜美 | 「に、兄ちゃんっ!?」 |
P | 「淋しかったら、いつでも兄ちゃんを頼ってくれていいからな」 |
亜美 | 「う、うん…ありがと…兄ちゃん…」 |
P | 「次の写真、見るか?」 |
亜美 | 「兄ちゃんの膝の上に座ったままでもいい?」 |
P | 「いいよ。今日は好きなだけ亜美にかまってやるからさ」 |
亜美 | 「…兄ちゃんっ!」 |
ぎゅうっ |
真美の知らぬ所、亜美はプロデューサーを抱きしめる力を強めていた… |