#002〜階段〜

とある日の事務所への帰り道、プロデューサーはある人を見つけた。
「ん?あの後ろ姿は…」
気付かれないように近づいていくプロデューサー。
トントン
そしてその人の肩を叩いた。
貴音「何奴!?」
「驚かせてゴメン、俺だよ俺」
貴音「…っ!あなた様でしたか…」
「久しぶりだな、貴音」
貴音「お久しゅうございます、双海亜美のプロデューサー様」
「貴音はもう帰りか?」
貴音「はい…先ほど事務所から出てきたばかりですが」
「夕飯はもう食べたのかい?」
貴音「私はまだですが…そちらは?」
「俺もまだなんだ、どうだ?これから一緒に」
貴音「そんな…あなた様とだなんて…黒井殿に知られたら何を言われてしまうか…」
「ん?じゃあこの前俺に付いてきたのは、どういう風の吹き回しだったんだ?」
貴音「それは…」
「この近くに美味しい屋台のラーメン屋があるんだけどな…」
貴音「ラーメン…なっ…食べ物で釣るとは卑怯ではないですか」
「え?(確かに分かって言っているけどさ)」
貴音「そう言われたら…私が付いてくるとでも思っているのですか?」
「いや、別に良いんだ。どうせ一人で食べて行くつもりだったし」
貴音「…あなた様がそんな意地が悪いなんて…」
「ん?いや、別にそんなつもりは無いんだけど?」
貴音「…負けましたわ、やはりあなた様には敵いません」
「それじゃあ行く?」
貴音「はい…せっかくのお誘いですから」
貴音は導かれるがままに、プロデューサーと階段を上っていった。
 
行った先には何軒もの屋台が軒を連ねていた。
貴音「この辺は…確かに初めてになりますか」
「初めてって…あれから他に行ったのか?」
貴音「…はい。あなた様と食べたラーメンが忘れられないので」
「何だ、それならもっと早く誘ってやるべきだったかな」
貴音「しかし…私とあなたは敵同士ではないですか」
「美味しいものを食べる時に、そういうのは言いっこ無しさ」
貴音「…本当にあなた様には敵いません」
「ほら、行くぞ」
貴音「はい…」
のれんの下へと入っていく二人
大将「お、いらっしゃい。おう、そっちのはお前さんの女かい?」
「違いますよ大将、ただの知り合いです」
大将「ん?それにしても見たこと…気のせいだな。で、何にする?」
トン トンっ
と言いながら二人に水を置くお店の大将。
「えっと…この子には普通の、俺にはチャーシュー麺を」
大将「あいよ、堅さはいつものでいいな?」
「はい、それでお願いします」
貴音「ここは…どんなラーメンなのですか?」
「そうだな…まあ食べてもらえば分かるけどスープに特徴はあるかな」
貴音「あなた様のお気に入りなのですか?」
「まあね、気に入ってくれればいいけどさ」
………
大将「あいよ、ラーメンにチャーシューメン」
「どうも、いただきます」
貴音「それでは私も、いただきます」
出来立てのラーメンを食べ始めた二人。
貴音「これは…生姜ですか」
「うん、これがまたこの醤油に合うんだよ」
貴音「確かに…この味は私には未知な体験です」
「そうだろうな、このタイプのラーメンはそうそう巡り合えないだろうよ」
貴音「何だか少し、身体が火照ってまいりました」
「それはそうだろうなあ」
 
ここは行く時に上ってきた歩道橋の階段。
貴音「本日はラーメン、御馳走さまでした」
「こちらこそ、一緒に食事ができて良かったよ」
貴音「本当にこちらからお支払いしなくても…」
「いいって、俺の勝手で連れてったわけだしさ」
貴音「それならば…フフフ、お言葉に甘えさせていただきます」
「うん、やっぱり貴音には笑顔の方が似合ってると思うけどね」
貴音「なっ…」
その言葉に少し顔が紅くなってきた。
「うん、紅くなっているところも可愛いな」
貴音「そっ、そんな…もうあなた様には敵いません…」
「俺だって、貴音の魅力には敵わないさ」
トンっ…
ふとプロデューサーと同じ段で止まる貴音の足。
「ん?どうしたんだ?貴音」
プロデューサーの顔が貴音を向いた刹那…
貴音「本当に本日は…ありがとうございました」
チュッ
その唇へと注がれる本当の感謝の口付け…
「た、貴音!?」
貴音「フフフ、またお会いできる日を楽しみにしております。では…」
「あ、ああ…またな」
プロデューサーの唇には少しラーメンの風味が残った唇の感触がいつまでも残っていた…
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あとがき
久々の「100のお題」、11本目はまたもやアイマスから。
まあ「階段」と言うよりも「ラーメン」な話ですが…(苦笑)
貴音は以前はそんな好きではなかったのですが、最近好きになってきました。
それにしても80行程度となるといつもより少し楽な感じがします。
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2009・07・05SUN
飛神宮子
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