とある日の事務所への帰り道、プロデューサーはある人を見つけた。 |
P | 「ん?あの後ろ姿は…」 |
気付かれないように近づいていくプロデューサー。 |
トントン |
そしてその人の肩を叩いた。 |
貴音 | 「何奴!?」 |
P | 「驚かせてゴメン、俺だよ俺」 |
貴音 | 「…っ!あなた様でしたか…」 |
P | 「久しぶりだな、貴音」 |
貴音 | 「お久しゅうございます、双海亜美のプロデューサー様」 |
P | 「貴音はもう帰りか?」 |
貴音 | 「はい…先ほど事務所から出てきたばかりですが」 |
P | 「夕飯はもう食べたのかい?」 |
貴音 | 「私はまだですが…そちらは?」 |
P | 「俺もまだなんだ、どうだ?これから一緒に」 |
貴音 | 「そんな…あなた様とだなんて…黒井殿に知られたら何を言われてしまうか…」 |
P | 「ん?じゃあこの前俺に付いてきたのは、どういう風の吹き回しだったんだ?」 |
貴音 | 「それは…」 |
P | 「この近くに美味しい屋台のラーメン屋があるんだけどな…」 |
貴音 | 「ラーメン…なっ…食べ物で釣るとは卑怯ではないですか」 |
P | 「え?(確かに分かって言っているけどさ)」 |
貴音 | 「そう言われたら…私が付いてくるとでも思っているのですか?」 |
P | 「いや、別に良いんだ。どうせ一人で食べて行くつもりだったし」 |
貴音 | 「…あなた様がそんな意地が悪いなんて…」 |
P | 「ん?いや、別にそんなつもりは無いんだけど?」 |
貴音 | 「…負けましたわ、やはりあなた様には敵いません」 |
P | 「それじゃあ行く?」 |
貴音 | 「はい…せっかくのお誘いですから」 |
貴音は導かれるがままに、プロデューサーと階段を上っていった。 |
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行った先には何軒もの屋台が軒を連ねていた。 |
貴音 | 「この辺は…確かに初めてになりますか」 |
P | 「初めてって…あれから他に行ったのか?」 |
貴音 | 「…はい。あなた様と食べたラーメンが忘れられないので」 |
P | 「何だ、それならもっと早く誘ってやるべきだったかな」 |
貴音 | 「しかし…私とあなたは敵同士ではないですか」 |
P | 「美味しいものを食べる時に、そういうのは言いっこ無しさ」 |
貴音 | 「…本当にあなた様には敵いません」 |
P | 「ほら、行くぞ」 |
貴音 | 「はい…」 |
のれんの下へと入っていく二人 |
大将 | 「お、いらっしゃい。おう、そっちのはお前さんの女かい?」 |
P | 「違いますよ大将、ただの知り合いです」 |
大将 | 「ん?それにしても見たこと…気のせいだな。で、何にする?」 |
トン トンっ |
と言いながら二人に水を置くお店の大将。 |
P | 「えっと…この子には普通の、俺にはチャーシュー麺を」 |
大将 | 「あいよ、堅さはいつものでいいな?」 |
P | 「はい、それでお願いします」 |
貴音 | 「ここは…どんなラーメンなのですか?」 |
P | 「そうだな…まあ食べてもらえば分かるけどスープに特徴はあるかな」 |
貴音 | 「あなた様のお気に入りなのですか?」 |
P | 「まあね、気に入ってくれればいいけどさ」 |
……… |
大将 | 「あいよ、ラーメンにチャーシューメン」 |
P | 「どうも、いただきます」 |
貴音 | 「それでは私も、いただきます」 |
出来立てのラーメンを食べ始めた二人。 |
貴音 | 「これは…生姜ですか」 |
P | 「うん、これがまたこの醤油に合うんだよ」 |
貴音 | 「確かに…この味は私には未知な体験です」 |
P | 「そうだろうな、このタイプのラーメンはそうそう巡り合えないだろうよ」 |
貴音 | 「何だか少し、身体が火照ってまいりました」 |
P | 「それはそうだろうなあ」 |
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ここは行く時に上ってきた歩道橋の階段。 |
貴音 | 「本日はラーメン、御馳走さまでした」 |
P | 「こちらこそ、一緒に食事ができて良かったよ」 |
貴音 | 「本当にこちらからお支払いしなくても…」 |
P | 「いいって、俺の勝手で連れてったわけだしさ」 |
貴音 | 「それならば…フフフ、お言葉に甘えさせていただきます」 |
P | 「うん、やっぱり貴音には笑顔の方が似合ってると思うけどね」 |
貴音 | 「なっ…」 |
その言葉に少し顔が紅くなってきた。 |
P | 「うん、紅くなっているところも可愛いな」 |
貴音 | 「そっ、そんな…もうあなた様には敵いません…」 |
P | 「俺だって、貴音の魅力には敵わないさ」 |
トンっ… |
ふとプロデューサーと同じ段で止まる貴音の足。 |
P | 「ん?どうしたんだ?貴音」 |
プロデューサーの顔が貴音を向いた刹那… |
貴音 | 「本当に本日は…ありがとうございました」 |
チュッ |
その唇へと注がれる本当の感謝の口付け… |
P | 「た、貴音!?」 |
貴音 | 「フフフ、またお会いできる日を楽しみにしております。では…」 |
P | 「あ、ああ…またな」 |
プロデューサーの唇には少しラーメンの風味が残った唇の感触がいつまでも残っていた… |