Surprising Vertex(意外な最高点)

6月の終わりを迎えそうなある日…
早苗「椿ちゃんは飲めないから烏龍茶でゴメンね♪」
椿「いえ、こういう場は雰囲気を楽しむものですので。それに今回は撮影も楽しみます」
「こういう所ではお酒は避けられませんから」
芽衣子「楓さん…乾杯前にそれは場が冷めますよっ」
早苗「まあまあいいじゃないの芽衣子ちゃん。それでは…LIVEロワイヤルおつかれさまでした…かんぱーい!」
三人『かんぱーい!』
早苗「ごきゅん…ごきゅっごくっ…はあっ!仕事終わりの一杯は最高っ!」
芽衣子「こくっ…こくっ…ぷはあ…そうですねっ!早苗さん、いい飲みっぷりです」
「ごくっ…ごくっ…はあっ…美味しいわ…」
椿「こくんっ…はあ…皆さん結構イケるのですか?」
早苗「そうね…あたしはお酒なら何でもね。やっぱりビールが好きだけど♪」
「私はどちらかと言えば日本酒かしら。温泉とかも好きだからそうなのかもしれないですね」
芽衣子「私はやっぱり梅酒とかちょっと果実系が好きかなー。和歌山といえばねっ」
椿「大人の方の中でも個性があるんですね」
早苗「そうねぇ。あとは志乃さんとかはワイン党だし、レナちゃんらへんがシャンパン系ね。蒸留酒系はどうだったかしら?楓ちゃん」
「私もあまり聞かないですけど、たぶん飲める人は呑めるんじゃないかしら」
早苗「そろそろ食べる物を持ってこようか」
「あと日本酒と芽衣子ちゃんのお酒と…早苗さんのお代わりも一緒にね」
ここは楓の住むマンション。4人はLIVEロワイヤルの打ち上げに集まっていた。
芽衣子「椿ちゃん、じゃあ持ってこようかっ」
椿「そうですね」
椿と芽衣子は台所へと移動した。
早苗「でも芽衣子ちゃんも椿ちゃんも料理任せちゃってゴメンねー」
椿「いいんですよー早苗さん。選ぶのだけでも色々楽しめましたし」
芽衣子「楓さーん、日本酒ってどれですかー?」
「冷蔵庫のドアポケットの方を先に空けたいからそっちをー」
椿「楓さーん、鍋とか借りますよー」
「はーい、どうぞ器具も食器も調味料も自由に使ってー」
椿「芽衣子さん、これから枝豆茹でるんでもう向こうで呑んでいてもいいですよ」
芽衣子「オッケー、じゃあ後はおつまみ持っていったら待ってるね」
芽衣子が飲み物とおつまみをお盆に載せて食卓へと戻ってきた。
早苗「あら、椿ちゃんは?」
芽衣子「これから枝豆を茹でるみたいです」
「枝豆なら冷凍のものでも良かったのに…マメなのね」
芽衣子「私もそう思ったんですけど、これだけは椿ちゃんが用意するって」
早苗「椿ちゃん約束通りね、ぐっじょぶっ!」
椿「早苗さん期待しててくださいねー」
芽衣子「ささ、食べましょう。日本酒これで良かったんですよね?コップは…」
「あっ、ビールの……んぐっんぐっ…はあ…これでいいわ」
芽衣子「はい、じゃあ…」
トクトクトクトクトク
「あらぁ…美人にお酌してもらえて幸せだわー」
芽衣子「もうっ、上手いんですから。あ、早苗さんももう一杯ビール行きます?」
早苗「そうね、いただくわ」
芽衣子「では…」
トットットットットットッ
早苗「いいねぇ、芽衣子ちゃん。注ぎ方上手いっ」
芽衣子「そうですかっ、ありがとうございます」
早苗「芽衣子ちゃんも注いであげるわね」
芽衣子「あ、ありがとうございます…ごきゅんっ」
トクトクトクトク
「その梅酒は実家からのよ」
芽衣子「えっ、そんなのもらってもいいんですか?」
「ええ。芽衣子ちゃんとのユニットが実現した記念だもの」
早苗「それにしても偶然よねえ。あたしたち新潟組も今回初めてだから」
芽衣子「そうだったんですか。最近都道府県ごとでのユニットも増えたからもうやってたかと思ってました」
「三人のところは結構多かったみたいだけれど、二人のところはあまり無かったみたいね」
早苗「なるほどねぇ…椿ちゃーん、そろそろかしらー?」
椿「あともう少しで茹で上がりますー」
「えっ…と、大鍋が二つも…なべかしら?」
早苗「芽衣子ちゃんも一緒に買出しだったのよね?」
芽衣子「はい。でも枝豆だけは椿ちゃんが買ってくるって言われたんですよっ」
「あんな大きなザルはこの家には無かったはずだけど…」
芽衣子「それは私が椿ちゃんに頼まれて100円ショップで買ってきたんですよー」
早苗「そうね。分かるわー」
椿「あつっ…うん、早苗さーん、固さは普通でいいですよねー、冷やした方がいいですかー?」
早苗「固さは普通で、水で普通に冷やすくらいでいいわー」
椿「それじゃあザルに上げたら持っていきますねー」
ザーーーーー ザーーーーーー
大きめのザルに各々の鍋から枝豆が山盛りに入っていった。
椿「あとは流水で冷やしてから…ちょっと塩振って…」
シャーーーーー ザッザッザッ シャーーーーー ザッザッザッ
慣れた手付きでザルを中華鍋のようにして冷やした枝豆を掻き回す椿。
椿「ボウルを敷いてこれでよしっと…あとは手を洗って…これから持っていくんで場所空けておいてくださーい」
早苗「はいはーい、ちょっとこの辺空けるわね」
ドンッ ドンッ
卓に置かれたボウルが二つ。
椿「はいどうぞー、皆さん食べてくださーい」
芽衣子「へっ?これ…?」
椿「えっ…?何かおかしいことでもありましたでしょうか?」
早苗「あー、旨ー…茹で加減バッチリよ!どうしたの?楓ちゃんに芽衣子ちゃん」
「えっと…このザルに山盛りなのは…」
椿「見たまんま、枝豆ですよ」
早苗「新潟では山盛りの量を茹でるのが普通なのよ」
椿「新潟は米どころですけど、意外と枝豆どころでもあるんです」
芽衣子「そうだったんですかっ。さすがに面食らっちゃいました…はむっ…」
「あむっ…この茹で具合は居酒屋よりも何倍もイケますね」
椿「ありがとうございます。あ、殻はこちらへどうぞ」
早苗「普段の量じゃ本当は満足できてないのよー。こんな機会だから椿ちゃんにお願いしちゃったの」
椿「お酒が飲めない子供も喜んで食べますよね」
早苗「ほらほら椿ちゃんももう座って座って。一緒に食べましょ」
椿「もちろんです。こんなに山盛りの枝豆がこっちで食べられるのは幸せです…」
早苗「やっぱり椿ちゃんも食べるクチね。もちろんあたしもよ…」
ザルの枝豆をひっきりなしに食べ始めた椿と早苗であった。
………
お酒もいい具合に回ってきた頃。
「そういえば、芽衣子ちゃんっていくつだったかしらー?」
芽衣子「私は楓さんの3つ下ですよーっ」
早苗「椿ちゃんはー?」
椿「私は…けぷ…来年飲める歳になりますけれど…」
芽衣子「あー、ロマンティックツアーズでも一人だけ飲めないもんね」
椿「おかげで夜の宴会とか大変なんですよ」
早苗「全く…飲ませてないでしょうねぇ、芽衣子ちゃん」
芽衣子「それはっ、断じてしていないですっ!」
「確か早苗さんは私よりも3つ年上でしたか」
早苗「ええそうよ。28よ28!瑞樹ちゃんと同い歳っ!」
芽衣子「椿ちゃんは19だねっ、私の3つ下かなーっ」
椿「はい…あれっ?ちょうど3歳飛びで間に二人がいらっしゃるってことは…?」
「そうっ!私と芽衣子ちゃんも合わせて47なのですっ」
早苗「あたしと椿ちゃんでもー、47ってことねー」
「出身者の平均だと、県別で私たちトップだって聞いた気がするんですー」
早苗「トレーナーさんとかって結構高いわよね。栃木だっけ」
芽衣子「あっ、でも栃木は確か…茜ちゃんとかむつみちゃんとかアイドル二人は年齢低いんですよー」
早苗「どうせあたしが新潟の平均年齢引き上げたわよぉ…」
椿「早苗さん、そんなこと私は気にしていないですから」
早苗「本当に?」
椿「はい」
早苗「もう嬉しいこと言ってくれちゃってぇ」
「さて、皆さんそろそろ出来上がったみたいですからお開きにしましょうか」
芽衣子「そうですねぇっ!今日は楓さんとこ泊まって行ってもいいんですよねー?」
「はいー。ベッドの他は布団一組だけだから、どうしようかしら…」
椿「それなら…私、帰りましょうか?酔ってはないですし」
「ダーメ。こんな遅い時間じゃ襲われちゃうわー」
芽衣子「多少お酒臭くてもよければ、私と寝よっか椿ちゃん」
早苗「あたしは掛けるものあればソファでいいわー。このソファ背もたれ倒せるわよねー?」
「確か肌掛けか薄い毛布ならありますから、それでいいですかー?」
早苗「それでいいわ。お願いするわね」
椿「じゃあ洗い物してしまうんでこっちにまとめてください。生ゴミはそのザルにお願いします。串とかはこっちの皿で…」
「あら椿ちゃんったら、私が明日やるつもりでいたんですけどー」
椿「いいんです、ちゃっちゃと終わらせますから」
三人『はーい』
その後、椿の部屋のアルバムコレクションが一冊以上増えていたのは言うまでもないことであった…
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あとがき
飛神宮子です。
今回は先日の『アイドルLIVEロワイヤル雨の日SP』に出た「ラブリーダイナーズ」と「越後小町」の二組です。
この和歌山組と新潟組の隠れた共通点がともに平均年齢が23.5歳とトップタイな点。
そんな二組が同じロワイヤルとなったならやっぱり書かないとでしょう。
そして作者の地元でもある新潟といえば…やっぱりザル枝豆は外せませんよ。
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2016・07・05TUE
飛神宮子
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