Supporter over the Lens(レンズの向こうの味方)

年の瀬の寮、椿の部屋…
マキノ「今年も大狂乱だったわね…」
椿「フフフ、偶然の産物って怖いですね」
マキノ「他人事のように言うのね、全て貴女がやったことなのに」
椿「それもそうですが、全てはスキを見せた皆さんが悪いんです」
マキノ「…段々と私に似てきたわね、椿さん」
椿「マキノちゃんとコンビになって長いですから」
マキノ「あの番組に出したのがあれでほんの一部って言うのだから恐ろしいのよ」
椿「撮れちゃった物も多いですけれどね」
マキノ「貴女、陰でどう言われているか知ってる?」
椿「何でしょう?」
マキノ「『真の一番敵に回してはいけない人』だって」
椿「あら…やり過ぎちゃいました?」
マキノ「私には有益なものも多いけれども、みんなからはきっとそう思われているわ」
椿「それでも撮影係をさせてもらえる限りはやりますよ」
マキノ「それで良いと思うわ。来年も楽しみね…」
椿「もう来年のことを言っても鬼は笑わないでしょうか」
マキノ「ええ。来年はどうなるかしらね…あかりに新しい子も随時増やすと言ってたけれど」
椿「いい年になるといいですね…」
マキノ「そういえば椿さんはいつ帰省するの?」
椿「明日の予定です。新幹線は大丈夫ですけど、在来線が止まらないかちょっと不安で…」
マキノ「在来線?」
椿「雪もそうですけど、風で止まるのが多いんですよ」
マキノ「日本海側は大変ね…」
椿「在来線は山の方を走るか、海の近くを走る路線が多くて…この時期は辛いんです」
マキノ「気を確かにね」
椿「はい。あと地元だと雪かきの手伝いもしないと…」
マキノ「あれは尊敬するわ。何年かに一回のこっちの雪の時も、朝のうちに道が確保されてて助かるもの」
椿「慣れれば楽しいですよ。今度教えましょうか?」
マキノ「遠慮するわ…」
椿「残念です。そういうマキノちゃんはいつ帰省するんです?」
マキノ「私も明日よ。とは言っても年明け割とすぐに戻ってくるわ」
椿「私も同じ日ですけど、地元局に出てからなのでこっちには夜到着ですね」
マキノ「私は遅くとも昼か夕方くらいかしら。必要なデータを揃えてしまえば帰れるから、名古屋朝一のがベストだけれど」
椿「無理はしないでくださいね。この前も無理がたたって風邪になったんですから」
マキノ「あれは自己管理がなってなかっただけよ」
椿「因果関係が分かっているならなおさらですよ」
マキノ「…分かってるわよ」
椿「それで、マキノちゃんは私の部屋に何をしに来たんでしたっけ」
マキノ「番組の反省会と、椿さんが何か渡すものがあるって話でこっちの部屋の方が良いってことで来たのでしょう」
椿「そうでした。ちょっと待っててください」
椿は自身の寝室へと何かを取りに行き、戻ってきた。
椿「これなんですけど」
マキノ「その袋は…あらSDカードにUSBがこんなにたくさん…」
椿「マキノちゃんからお借りしたのをこの中に混ぜてしまって…分かりますか?」
マキノ「USBはこれだけど、カードは…おそらくだけれど確信が無いわ。ちょっとノートPC取ってくるわね」
椿「お手数おかけします」
………
マキノは自らのノートPCに差し込んでいき…
マキノ「これとこれとこれね。椿さんはさすがの量持ってるのね」
椿「撮影係の時は百枚単位で撮影があるので、これでもギリギリ間に合わなかった時もありますよ」
マキノ「そうなの…私の所に持ってきてもらうのはほんの一部ってところかしら」
椿「全体の一割あるかないかでしょうね、きっと」
マキノ「あれが一割だと思うと驚きよ」
椿「フフフ、そうですか?」
マキノ「敵に回すと怖いと言われてる理由が分かるわ」
椿「お互いそうじゃないですか。私もマキノちゃんの分析は怖いくらいの場合もありますよ」
マキノ「そうなの?」
椿「分析で相手の秘密を握ってってところなんて、敵にはしたくないです」
マキノ「違っているようでお互い似た者同士ね…」
椿「まったくもってそうみたいで…」
マキノ「椿さんが味方で本当に良かったわ」
椿「それはお互い様です」
マキノ「フフフ、ええ」
椿「フフッ、はい」
マキノ「ねえ、椿さんはこの後どうするの?」
椿「明日帰省する準備をし終わったら特にすることは…」
マキノ「それなら一つお願いがあるのだけれど…私の部屋に来てもらえるかしら」
椿「いいですけど…」
………
マキノの部屋、そこには…
椿「…どうしたんですか、この状況は…」
マキノ「一昨日の夜中にそこのプラスチックのタンスが崩壊したのよ」
タンスの中身がとりあえず種類ごとに一塊で置かれている状況だった。
椿「それはお気の毒にです」
マキノ「おそらくは経年劣化でしょうけど突然来たのよね…何か別の力でも働いたのかしら」
椿「まさか、普通じゃない力がですか?」
マキノ「急にだもの。壊れる予兆も特に無かったと思うんだけれど」
椿「この事務所だと…考えられなくもないっていうのが…」
マキノ「…そうなのよね…」
椿「それでこっちの箱が新しいのですか?」
マキノ「ええ。昨日のうちに注文して今日届いたのだけど、番組があってとてもじゃないけど組み立てもできなかったの」
椿「分かりました。手伝います」
マキノ「ありがとう椿さん。今度は木と布のボックスだから大丈夫だと思うけれど…」
椿「礼には及びませんよマキノさん。さっそくやりましょう」
椿はマキノとともにタンスを組み立て始めた。
 
数十分後…
マキノ「助かったわ。畳み直しまでさせちゃって。はい、コーヒーで良かったかしら」
椿「ありがとうございます。これくらいなら別に構いませんし」
マキノ「本当は椿さんの方が年上なのに、こき使っちゃうなんてしたくはなかったの」
椿「私が良いと思ってるんですから良いんです」
マキノ「年下の私が言うことじゃないけれど、椿さんって良い子よね…」
椿「敵に回したくないのを差し引いてもですか?」
マキノ「…ええ…」
椿「その間については…一応好意的に受け止めさせてもらいます」
マキノ「最初に顔合わせした頃に比べたら、本当に変わってしまったわ…」
椿「それは…マキノちゃんに色々と吹き込まれたからじゃないでしょうか」
マキノ「そこら辺はお互い様よ…ね」
一緒に居る時はいつも油断ならない、そう思い直したマキノなのであった…
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あとがき
飛神宮子です。
久々の「ファインダー」ことマキノ椿コンビです。
本当にこの二人はある意味で敵に回すと怖い存在に十二分になりえます。
物理的な影響よりもその手の影響の方が後まで怖いこともありますからね…。
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2018・12・28FRI
飛神宮子
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