Who has the Same Birthday? 3(1/366の同じコト〔3〕)

コンコン
「はい、どうぞ」
ガチャッ
亜子「Pちゃん来たで。ちょっと遅くなってゴメンな」
「プロデューサー、私たちも一緒で良かったの?」
さくら「嬉しいけど、プロデューサーさんの負担にならないですかぁ?」
今は5月2日の夕方、ニューウェーブの三人は学校が終わった後に事務所へと直行していた。
「こればかりは毎年のことだから、一人二人増えたところで変わらないさ。な、亜子」
亜子「そうやな。アタシの誕生日は基本的にゴールデンウィークの真っ只中やし、このご時世やから3年くらい前からは人出の多いトコは避けようてなってな」
「そっか……今でも減ってるとは言ってもいつそうなるか分からない状況だし」
さくら「難しいよねぇ。移動も準備が昔より大変になったもん」
亜子「でもその分ゆったりできるのは嬉しいんよ」
「……そういえば、さくらはプロデューサーの家に行ったことはあるの?」
この後3人はプロデューサーの家で亜子の誕生日会を開くことになっていた。
さくら「わたしは無いよぉ、イズミンは?」
「私も……あれ?亜子、ちょっとそっちで話そうか」
泉の目が徐々に鋭く亜子へと突き刺さっていった。
亜子「ちょ、ちょっと待っていずみ。今の理由聞いてた?」
「……私だってプロデューサーの家には行ってみたかったのに」
さくら「プロデューサーさん、イズミンって渋谷さんにちょっと似てませんかぁ?」
「同じクール系統だから似るのかな……」
「さくら!プロデューサー!」
さくら「イズミン、ゴメンなさぁい」
亜子「そもそもいずみはアタシがわざわざPちゃんとこに行っとる理由を知ってるやろ?」
「え?」
さくら「何だったっけぇ?アコちゃん」
亜子「5月2日がアタシだけじゃないいうこと話したやん」
「だから負担はそこまで増えないんだよな亜子」
「知ってたけど……」
亜子「それにここ3年、アタシの誕生日はみんな実家に帰ったりお仕事だったりしてこっちに居らんかったし」
さくら「そうだねぇ、5連休とかそれ以上だったもんねぇ」
「それを言われると何も言えないかな……」
亜子「アタシはPちゃん自身のご褒美に付き合ってるトコもあるいうことや」
「そういう亜子が羨ましい……」
亜子「ま、今日入れるんだからええやんか」
さくら「プロデューサーさん、あとどれくらいでお仕事終わるんですかぁ?」
「報告書と今度やるライブの企画書草稿を出したら終わりだから、そこのソファで待ってて」
さくら「はぁい、ここのお菓子は食べちゃってもいいんですかぁ?」
「それはさっき別のプロデューサーから俺の誕生日プレゼントに貰ったヤツだから食べてもいいぞ」
「プロデューサーに貰ったのにいいの?」
「さっきそれぞれ摘まんではいるからな」
亜子「そんならありがたく頂かせてもらうわ」
「あんまり食べ過ぎるなよ。これからケーキとかも入るんだからな」
三人「「「はーい」」」
三人は談笑をしながらプロデューサーの仕事が終わるのを待っていた。
………
ところ変わってここはプロデューサーの住むマンション。
ガチャガチャ ガチャンッ パチンッ
「さ、三人とも入って」
さくら「おじゃましまぁす」
「おじゃまします」
亜子「おじゃまするわ」
バタンッ カチャンッ
プロデューサーは三人を入れて、急いで鍵を閉めた。
「四人分ともなると、それなりに増えたな」
亜子「毎年二人分やったからね」
「大丈夫?私達やっぱり払った方が……」
「良いんだって。これは俺と亜子でちゃんと予算組んであるからさ」
さくら「そうなんだぁ」
亜子「毎年のことやからな。アタシらにとっては恒例行事やもん」
「プロデューサーの家ってこんな感じなんだ」
「そんなに期待されても困るけどな。こっちがリビングだから入って」
カチャッ パチッ パチッ
「割と整頓されてるね。さくらの部屋より綺麗かも」
さくら「イズミン、酷いぃ。わたしの部屋だって綺麗でしょぉ」
亜子「んー……いい勝負くらいやない?」
さくら「ええ!?アコちゃんまでぇ?」
亜子「Pちゃん、テーブル借りるよー」
「分かった。俺はちょっと着替えてくるからそれまでに自由に準備頼む。食器の場所は亜子に聞いてな」
プロデューサーは着替えのために一旦退散した。
「それなら亜子とさくらは皿とグラス、あとフォークとスプーンと箸とケーキを切るナイフもお願いね」
亜子「アタシも誕生日なんやけど……ま、ええか。さくら、ついてきてな」
さくら「はぁい、アコちゃん」
「ケーキはここでいいかな。メインのチキンとサンドイッチはここで、サラダはこっちで……」
亜子「はいいずみ、皿はこれしかないからサンドイッチとかは買ってきた紙皿でええよな」
「そうだね、さすがにその皿だとサンドイッチとかチキンは載りそうにないから」
さくら「イズミン、アコちゃん、座る場所はここでいいのぉ?」
亜子「そうやな。テレビも見えた方がええから」
さくら「それならここに置いていけばいいねぇ」
亜子「グラスはここでええな」
「亜子はもう座ってて構わないよ。あとは私達だけでできるから」
亜子「ええよ、ええよ。こういうのは何かやってないとむず痒くなるわ」
さくら「でもアコちゃんも今日の主役だよぉ?」
亜子「主役が働いたらダメってことはないやろ。アタシは今日は祝う側でもあるんやしな」
「何だかそう言える所が亜子らしいね……」
さくら「うん。アコちゃんらしいよぉ」
亜子「なんや二人とも、そう言われると……。ほら!準備の続きするで!」
さくら「あー、アコちゃん照れてるぅ」
「そうは言ってももうあとはケーキにロウソクを刺すくらいだけど」
亜子「実は終わってたんかい」
「だからもう私達でできるって言ったのにさ……でも私達、亜子と一緒で良かったよ」
さくら「アコちゃんが一緒じゃなかったら今はこうしてないもんねぇ」
亜子「そう……なのかな?」
「私達は誰か一人が欠けたって成り立たなかったって思うよ」
さくら「誰かがくじけそうになっても、他の二人が応援してくれるもん」
「それで前を見せて一緒に歩んでくれるからここまでやってこれたなって」
亜子「いずみ……さくら……」
さくら「これからもよろしくね、アコちゃん」
「私達みんなでこれからもニューウェーブであり続けよう。今日は……」
泉・さ『ハッピーバースデー、亜子(ちゃん)』
プロデューサーが着替えてリビングに戻ると、二人に抱き着きながら涙を流していた亜子の姿があったという……
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あとがき
飛神宮子です。
実に6年ぶりの亜子&自分の誕生日SS。今年はニューウェーブで一緒に。
このご時世+GW期間ともなると、どこもいっぱいで少人数で家でというのが精一杯かなと。
実は前回書いた6年前と曜日配列が一緒だったりします。こう飛び石だと印象に残るんですよね。
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2022・05・02MON
飛神宮子
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