Who has the Same Birthday?(1/366の同じコト)

これは5月のとある日の話…
亜子「プロデューサーちゃん、どしたの?」
夕方の事務所に、普段は3人ユニットで活動している子の一人だけがいた。
「泉とさくらの二人はどうした?」
亜子「先に帰ったけど何か用あったん?」
「何だ冷たいな」
亜子「明日の朝から実家で用事だって言っとった」
「あ、帰ったってそっちか。実家の方で用事なら仕方ないな」
亜子「前々からプロデューサーちゃんに言ってなかった?」
「あー、あれかー。そういえば言ってたな」
亜子「本当はさくら一人の用事やったけど、さくらだけだと心配やからって泉も付いてったらしいん」
「亜子は一緒じゃなくて良かったのか?」
亜子「泉も実家に何か取りに行くって言ってたからな。アタシのは泉に頼めるくらいの用事やったし」
「前からの知り合いってそういうところが便利なんだな」
亜子「そやね。それでプロデューサーちゃん、アタシに用事だったんじゃないん?」
「ああそうだったそうだった。これから時間ある?」
亜子「アタシ?女子寮帰る以外はもう用事は無いけど…」
「何だ、てっきり寮でもお祝いとかあると思ったけどさ」
亜子「ああ、それはアタシと笑美ちゃんが2日連続だから昨日一緒にしてもらったから」
「そういうことか」
亜子「この4連休で一時帰省する人もまあまあいたらしいし、今日やるより昨日の方がみんな都合がいいってことでね」
「そうなるよなー」
亜子「プロデューサーちゃんはどうなん?」
「この業界にそう暦どおりの休みがあると思ってたか?」
亜子「そうやろうけどなー。それで用事は無いけどどうしたん?」
「ケーキってまだ残ってたよな」
亜子「まだ半ホールは残ってたと思うけど…」
「ちょっと持ってくるか」
プロデューサーは冷蔵庫のある給湯室へとケーキを取りに行った。
「よし、まだろうそく残ってるな」
亜子「そういえば何でこんな大きいのだったん?」
「大きいかな?」
亜子「いつも一人の時ってこんな大きいのにしてない気がするし…」
「ちひろさんも、本当はもっと来ると思ってたんじゃない?」
亜子「んー、でもちひろさんも今日事務所に来る人数は、把握していたんと違うかなあ」
「まあ亜子はそう言うってことは、把握していたのはやっぱりちひろさんと俺だけか」
亜子「へ?」
「ろうそくもまだ残ってるし、もう一度点けるか」
亜子「どういうことなん?もう一回アタシに消せってこと?」
「ううん、それは俺が消す分」
亜子「えっ、もしかして…」
「あの場では亜子が主役だからさすがに言えないって」
亜子「プロデューサーちゃんもアタシと同じ誕生日やったんか」
「そういうこと」
そう言いながらプロデューサーはもう一度点けたろうそくを消した。
亜子「おめでとさん。あの場で言ってくれれば良かったのに」
「アイドルのみんなに気を使わせる気は無かったんだよ」
亜子「そんなこと言って、それはプロデューサーちゃんの悪い癖だと思う」
「何とでも言ってくれ。でもそれが仕事の一つだと思ってるんだから」
亜子「でもプロデューサーちゃんも同じ誕生日かー」
「まさかこの仕事始めたときには、自分と同じ日の子が入ってくるとは思ってなかったけどさ」
亜子「しかもプロデューサーちゃんがアタシ達の担当になるなんてね」
「こればかりは偶然の神様に感謝ってところかな」
亜子「それでこれだけのためにアタシはここで待たされたの?」
「いや、もう仕事終わるからこれからどこか夕食食べに行くかって思ったんだけど」
亜子「アタシが一緒でいいの?」
「自分の誕生日のお祝いも兼ねてだからな」
亜子「それなら一緒させてほしいなー」
「よし、じゃあ行くか」
亜子「あ、ちょっと待って。寮に夕食いらないって連絡しないとだし」
「ん、それくらいは待つからさ」
………
ここは某ホテルのレストランバイキング…
「ふう…まあこれくらいだな」
亜子「プロデューサーちゃん、よく食べるなあ。やっぱり男だわ」
「亜子も意外と食べてた気がするけど」
亜子「一応考えて食べてたから、まだこれからデザート食べてお終いやね」
「え、まだ食べるのかい…本当に女の子は分からないな…」
亜子「甘いものは別腹って言うやろ?」
「まだ時間内だからいいけどね、ゆっくり選んできな」
亜子「ほーい」
 
デザート類を取って戻ってきた亜子。
亜子「さーて、デザートデザートっと」
「また色々と…本当に全部食べられるんだな?」
亜子「全部食べないといけないんやろ?」
「ルールはそうだから、ちゃんと食べてくれよ」
亜子「自分のことは自分がちゃんと知っとるから大丈夫」
「いいけどさ」
亜子「ねえねえプロデューサーちゃん」
「ん?」
亜子「あーん」
そう言いながら、プチケーキを刺したフォークを差し出す亜子。
「えっ?!」
亜子「ほら、アタシのあーんなんて滅多にないんやから」
「え、あ…あーん」
亜子「はい、あーん」
パクっ
プロデューサーはそのプチケーキを一口で食べた。
「最初からこれだけは、これするつもりで持ってきただろ」
亜子「あ、バレた?」
「だってこんなビターなケーキ、亜子が食べるとは思わないからな」
亜子「でも美味しいとは思うけど?」
「美味しいのは美味しいけどな。じゃあそれ貸せ」
亜子「え?」
プロデューサーも亜子の皿からプチケーキの一つをフォークで刺して…
「ほら、あーん」
同じように亜子へ向けて差し出した。
亜子「う、アタシもしなきゃダメ…なの?」
「最初にこっちにしたのは亜子だからな?ほら」
亜子「そう言われると拒否はできないわ…」
「はい、あーん」
亜子「う、うん。あーん…」
パクっ
亜子はそのプチケーキを食べた。
亜子「…ありがと、プロデューサーちゃん」
「や、やっぱり恥ずかしいな」
亜子「そ、そうやね」
「早く食べて帰ろうか」
亜子「そうしよか、じゃあさっさと食べるわ」
………
そして女子寮の前…
亜子「今日はありがと、プロデューサーちゃん」
「俺もいい気分転換になったよ」
亜子「何かアタシだけこういうのって悪いなって思うけど」
「ま、それも誕生日の巡りあわせが良かったってことだからさ」
亜子「そうやね、でも本当にありがと」
「どういたしまして。よし次の仕事は…来週末か」
亜子「そうなるな。レッスンは休日って空いてるん?」
「それはトレーナーさんに相談してくれ」
亜子「はーい」
「じゃ、また事務所でな」
亜子「あ、プロデューサーちゃん」
「ん?」
亜子「今日は嬉しかったわ。アタシ、プレゼント用意してなかったから…」
チュッ
亜子の唇がプロデューサーの頬へと重なった。
「あ、亜子っ…」
亜子「じゃ、じゃあまたなー」
亜子は次の瞬間にはこちらに振り返ることもなく寮へと入っていった。
その顔は少し紅かったと、後でプロデューサーは他の寮生に聞かされたという…
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あとがき
飛神宮子です。
一日遅れの自分の誕生日SSです。自分と同じ誕生日の子がいるっていいですよね。
それにしてもちょっと難しかったです。亜子の特徴って実は完全ではなくて中途半端な関西弁なので。
HAPPY BIRTHDAY!! Ako TSUCHIYA and Me.
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2014・05・03SAT/NAT
飛神宮子
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