菜々 | 「いらっしゃいませー、お一人ですか?」 |
加奈 | 「あ、はい」 |
菜々 | 「それではこちらのテーブル席へどうぞー」 |
ここはある夕方の事務所内のカフェ。そこに加奈が一人やってきた。 |
菜々 | 「こちらメニューです、ご注文が決まりになりましたらお呼びください。では…」 |
加奈 | 「えっと、どうしようかなぁ…今日のレッスンは終わりだし、夕方からのお仕事は繰り上がって終わっちゃったし…」 |
メニューを見ながら何やら思案しているようだ。 |
加奈 | 「あっ、そっか。えっと…」 |
加奈は持っていたメモを見返した。 |
加奈 | 「お仕事があるからって寮の夕食をキャンセルしてたんだから、食べてかないとだったんだ…」 |
ご飯物の方へと目を移した加奈。どうやら一つのメニューを見定めたようだ。 |
加奈 | 「すいませーん、注文いいですかー?」 |
菜々 | 「あ、はーい!今行きますねー」 |
加奈 | 「菜々さん、これとこれでお願いします」 |
菜々 | 「はい。あれっ、この時間なのにご飯物ですけど大丈夫です?」 |
加奈 | 「大丈夫です。今日お仕事が予定より早まっちゃって、元々外で食べる予定でしたからっ」 |
菜々 | 「分かりました。ではちょっと行ってきますねっ」 |
菜々は加奈からメニューを受け取ってカウンターの方へと向かった。 |
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そのカウンターには… |
菜々 | 「マスター、これお願いします。………ってそろそろこのカウンターでいびきかいてる子は起こしちゃいましょう」 |
マスターに注文表を渡して、カウンターにいるそのアイドルの方へと向かった菜々。 |
ゆさゆさ ゆさゆさ |
菜々 | 「ちょっとここは仮眠室じゃありませんよー!起きてくださいー」 |
紗南 | 「んあう…あと1時間ー」 |
菜々 | 「そうやってもう3時間も店にいるじゃないですかー!」 |
紗南 | 「じゃああと…んん…30分ー」 |
菜々 | 「30分でも1時間でも一緒です!いい加減にしないと担当プロデューサー呼び出します!」 |
紗南 | 「うえええっ!プロデューサーさんはちょっとタンマっ!起きるっ、起きるよっ!」 |
菜々 | 「まったく、また夜更かししたんですね?」 |
紗南 | 「新作が面白くて、一気に攻略したくなっちゃってね」 |
夜更かしが祟ってカウンターに突っ伏して寝ていたようである。 |
菜々 | 「もう…ちょっとカウンター片付けたいですから、そっちのテーブル席の方に行っててください」 |
紗南 | 「あーい…あっ、加奈さんだ。こんばんはー」 |
加奈 | 「あれ?紗南ちゃんだったんだ、こんばんは紗南ちゃん」 |
紗南 | 「ねー、菜々さーん。加奈さんと相席しててもいいー?」 |
菜々 | 「あーそうですねぇ、これからまた混むかもしれない時間帯ですしそうしてもらえるとありがたいですね」 |
紗南 | 「じゃあこっち座ってるね」 |
紗南は加奈と同じテーブルの席へと腰を下ろした。 |
菜々 | 「はい、加奈ちゃんのコーヒーと…紗南ちゃんはこれを飲んでシャキッとしてください!」 |
加奈 | 「ありがとうございます菜々さん」 |
菜々 | 「食事はできたら持ってきますってマスターが言ってましたから」 |
加奈 | 「分かりましたっ」 |
紗南 | 「え゛っ…菜々さんこれって青汁じゃ…」 |
菜々 | 「眠たそうにしてたじゃないですか、いい薬ですからねっ」 |
紗南 | 「うう、HP回復薬だと思え…うぐっ…思ったほどじゃないけど苦い…」 |
菜々 | 「それじゃあナナも失礼しますね」 |
菜々もそのテーブルの空いた席へと腰を下ろした。 |
加奈 | 「あれっ?菜々さんいいんですか?」 |
菜々 | 「これから1時間くらいしたら混む時間帯なんです。なので先に休憩もらいました」 |
紗南 | 「そうなんだ。でも休憩も大事だよね」 |
菜々 | 「あっ、そういえば聞きましたよ加奈ちゃん。美羽ちゃんとのCMが好評だって」 |
加奈 | 「えへへ、思った以上にあちこちで良いって言ってもらえたんで嬉しいですっ」 |
紗南 | 「美羽ちゃんとの息がぴったりだよね。あたし美羽ちゃんのあんな表情、一緒に居る時は見たこと無かったなあ」 |
加奈 | 「紗南ちゃんにそう言われると恥ずかしいなっ…」 |
菜々 | 「本当に美羽ちゃんのことになると加奈ちゃんは弱いですねぇ…」 |
加奈 | 「こういうの人に話すのってまだ慣れてないんですっ…菜々さんこそどうなんですか?」 |
紗南 | 「え?え?ちょっと、話が読めないんだけど…」 |
少し赤ら顔になっている菜々と加奈に対して、頭の上に?マークが浮かんでいるような紗南。 |
菜々 | 「あれ?紗南ちゃんは知らなかったんですか?美羽ちゃんと加奈ちゃんのこと…」 |
紗南 | 「んー、あーあたしあんまりそういう話とか聞いてないのかも」 |
菜々 | 「もう、そうやってイヤホンし続けてると耳悪くしちゃいますよ」 |
加奈 | 「何だか菜々さん、お母さんみたいですっ」 |
菜々 | 「うぐっ…」 |
紗南 | 「そういう意味じゃないんだけどなー。でも加奈さんはどのへんでフラグが立ったのかな?」 |
加奈 | 「フラグ…?」 |
菜々 | 「ああ、フラグっていうのは切欠…ですかね紗南ちゃん」 |
紗南 | 「うーん…細かいところを言うと違うかもだけど大体そうなのかな」 |
加奈 | 「それなら…昔から仲は良かったんですけど、ショートドラマの役作りでデートすることになって…」 |
菜々 | 「あっ、最後の場面で抱きしめ合ってたあのミニドラマですよね」 |
加奈 | 「はい。でもドラマに選ばれたことがフラグだったような気もしますし…」 |
紗南 | 「何か聞いたなあ、美羽ちゃんとデートしてたって」 |
加奈 | 「その日の夜にその…キスというかその…」 |
そう言っている加奈の顔はすっかり真っ赤である。 |
菜々 | 「加奈ちゃん、これ以上は紗南ちゃんも居ますからやめましょう」 |
加奈 | 「そうです…ね」 |
紗南 | 「う、うん…聞いてるこっちもなんだか恥ずかしくなってきたよ」 |
菜々 | 「ゲームとかやっている紗南ちゃんならわかりますよね?」 |
紗南 | 「恋愛ゲームも全くやらないわけじゃないから…菜々さん」 |
菜々 | 「そういえば加奈ちゃんは寮生ですよね。美羽ちゃんのお家には行ったりしたことはあるんです?」 |
加奈 | 「何回かありますけど…美羽ちゃん千葉なんで遠くありませんし」 |
紗南 | 「パッションの14歳組で唯一の自宅通いだもんね」 |
菜々 | 「あら、やっぱり意外と進んじゃってるんですね…フフフ」 |
紗南 | 「そういえば加奈さんは分かったんだけど菜々さんは…?さっきの話がちょっと引っ掛かってて…」 |
菜々 | 「あっ…ナナの話は誤魔化せてるかと思ったのにぃ…」 |
加奈 | 「わたしが話したんですから、菜々さんもですっ」 |
菜々 | 「そう言われると…仕方ないですね。写真集とか見ました?」 |
加奈 | 「先月末に発売のですよね、菜々さん本当に仲良さそうでした」 |
紗南 | 「アスタリスクの…誰か資料に持ってきてたのをチラ見したっけ」 |
菜々 | 「付き合ってたのはその撮影よりずっと前からだったんですけれど」 |
紗南 | 「じゃあ菜々さんのお相手って…夏樹さんだよね」 |
菜々 | 「はい…うう、さっきの加奈ちゃんの気持ち分かりましたよぉ…」 |
紗南 | 「こっちのお話も詳しく聞きたいなあ…」 |
加奈 | 「わたしもです。切欠とかってどうだったのか気になりますっ」 |
菜々 | 「そうですねえ…ナナの場合、フラグと引き金が別だったみたいで…」 |
紗南 | 「李衣菜さんとみくさんの話はあたしのとこでも話題になってたけど、菜々さんと夏樹さんの話って聞かなかったね」 |
菜々 | 「知っている人はナナと夏樹さんの親友くらいでしたから…」 |
加奈 | 「わたしも聞いた時は驚いたなあ。美羽ちゃん経由で聞いたんだっけかな」 |
菜々 | 「付き合う引き金自体は、346プロがよくお世話になってる合宿用の温泉って分かります?」 |
加奈 | 「あ、わたしもイエローリリーで行きました」 |
紗南 | 「あたしは行ったことないけど、うちも誰かが行ったことあるって聞いたよ」 |
菜々 | 「アスタリスク+αの4人で合宿に行ったんです。あれは晩秋でしたかねえ」 |
紗南 | 「あたしも一度行ってみたいな…でもお世話になりそうな機会がなあ…」 |
菜々 | 「そこで夏樹さんが李衣菜ちゃんに振られちゃって、慰めてるうちに…って感じだったんです」 |
加奈 | 「そんなことがあったんですか。でも引き金とフラグでしたっけ?違うって言いましたけど…」 |
菜々 | 「そうなんです。フラグはもうその前から立っていたみたいで…」 |
紗南 | 「ゲームでも本当に遠くの選択肢で決まるのもあるからね」 |
菜々 | 「夏樹さんってよくそこのベンチでギターの練習してるんです。それでたまにこのカフェにも来てくれてて」 |
紗南 | 「あー、それはフラグだっ。それで夏樹さんのこと意識したんだ」 |
菜々 | 「後から考えると、その時からお互いに心の底ではそうだったって」 |
加奈 | 「何だかわたし達より大人な感じがします」 |
菜々 | 「そんな、加奈ちゃんだって青春って感じじゃないですか」 |
加奈 | 「そんなあ…エヘヘ」 |
菜々 | 「ところで紗南ちゃんはどうなんです?」 |
紗南 | 「え?あたし?」 |
加奈 | 「紗南ちゃんにはそういう話を聞いたことが無いね」 |
紗南 | 「うーん…そういうの考えたこともなかったなあ」 |
菜々 | 「これって運命みたいなものですから…ね、加奈ちゃん」 |
加奈 | 「そうです…ね、菜々さん」 |
菜々と加奈の出す雰囲気に少し気恥ずかしくなった紗南であった… |