16 Times of Reassurance(自信16倍)

奈緒「はぁっ!?アタシがーっ!?」
その日一番の大声がとあるプロデューサールームへと響き渡った。
奈緒「いやいやいやいや、他にも似合うのは居るだろっ」
「ダメなのか?」
奈緒「いや、ダメ…とは言わないけどさ。でもアタシじゃなくたってさあ…」
「まずは落ち着いて書類に目を通してもらえないか」
奈緒「…まあ見るだけ見てみる」
奈緒は書類にザっと目を通した。
奈緒「なあプロデューサー、高校生ならアタシじゃなくてもいいんじゃないのか?特にうちは多いんだし」
「それがな…クール属性限定なんだ」
奈緒「あ、ほんとだ」
「後から属性指定の連絡来てな。おかげで選択肢が三つだけになってなあ」
奈緒「これ統括Pから配分された仕事じゃないの?」
「いや、俺が営業で取ってきたヤツだ。成人と中学生と高校生の一人ずつでやりたいってな」
奈緒「へー」
「それから他のPと融通ってモンがあってな。取ってきたのは俺だから、うちが一番やりやすい高校生を貰ったってわけ」
奈緒「はー、大人って色々と面倒だなー」
「その辺はアイドルの奈緒たちが気にする話でもないな」
奈緒「まあそっか。それで何でアタシなんだ?」
「クール…まあトラプリのことだけど。凛、奈緒、加蓮の中で一番自分に自信が無いタイプは誰だろうねって話」
奈緒「そりゃまあ…………アタシか」
「そんな子に少し自信をくれるっていうのがコンセプトなんだ」
奈緒「ふーん…」
「あれ?案外乗り気でも無いんだな」
奈緒「何だかアタシのこと見透かされた感じがして、ちょっと引いただけ」
「あ、その書類には書いてなかったけど」
奈緒「えっ?」
「終わったら着けてたのはもちろんだけど、もう一着貰えるってさ」
奈緒「それ、本当か?本当なんだな?」
「うわっ、いきなりそんな剣幕で来られても」
奈緒「貰えるっての、マジ話でいいんだよな」
「これは取った時に確認して、きちんと言質は取ってあるぞ」
奈緒「……やる」
「お?」
奈緒「そこまでしてくれるっていうならアタシやるよ」
「ほう、やっぱりこのブランド好きだったんだな」
奈緒「そーだよ。ここまで隠してたけど、やっぱりバレてたかー」
「そりゃプロデューサーだし、取りに行く時も頭の片隅には確か誰かが好きなブランドだって引っ掛かっててさ」
奈緒「アタシこのブランドの服好きなこと言ってたっけ?」
「直接は聞いてないけど、確か未央だったかが言ってたぞ」
奈緒「あー、確かに話したかもなー」
………
そして当日…
奈緒「ここが撮影場所かー」
「まあプールもあるレジャー施設だな。控室は…向こうの『日向』って広間だから、このカードキー渡しとくぞ」
奈緒「了解。じゃあ先行ってていいんだなプロデューサー」
「ああ、スタッフに挨拶してから行くよ」
コンコン
奈緒「失礼しまーす」
??「はい、どうぞ…」
奈緒「ん?この声は…」
ピッ ガチャっ バタンッ
奈緒「こんにちはー」
美優「こんにちは…奈緒ちゃん」
奈緒「そっか、大人枠は美優さんかあ。今日はよろしくお願いします」
美優「よろしくね…奈緒ちゃんが一緒なら心強いかもしれないわ…ね」
奈緒「そ、そうかなあ…ってあれ?中学生枠の人はまだ来てないんですか?」
美優「いいえ…そこに居ますよ…」
奈緒「へ?」
乃々「あの…もりくぼはどうして…こんなところにいるんでしょうか…」
奈緒「…納得した。乃々かー」
乃々「ひぃっ!な、奈緒さんですか…」
奈緒「何だよー、別に取って食おうなんていうわけじゃないぞ」
乃々「こんな身体を大衆の目に晒すなんて、もりくぼは溶けてしまいます…」
奈緒「そんなことないだろって」
乃々「どうしてもりくぼなんかを選んだんでしょうか…プロデューサーさんは鬼畜です…」
奈緒「それだけ見たかったってことだろ…ん?そういえば美優さんは今回の条件面って聞いてた?」
美優「私ですか?確かクールタイプとだけは聞いていますが…」
奈緒「それだけ?」
美優「はい…」
奈緒「美優さんのとこは他だと…あー、選ばれても瞳子さんくらいかあ」
美優「そう…なんですか?」
奈緒「うちのプロデューサーが、自分に自信が無い子が変わる水着だって言ってたんだ」
美優「そうだったんですか…」
奈緒「乃々んとこは…あと中学生は小梅くらいだっけ」
乃々「はい…」
奈緒「そりゃ乃々になるか。小梅はちょっと露出控えてるんだっけ」
乃々「お腹を出す水着は…ダメだとか言ってます…」
奈緒「ああ…見てると心配になるくらいの身体つきだもんなあ…」
乃々「だからってもりくぼにお仕事を回すなんてぇ…」
奈緒「もうここまで来たんだから諦めて腹くくった方がいいんじゃないか」
乃々「はい…」
奈緒「それで水着ってもう用意されてるんですか?美優さん」
美優「さっき業者の人がここから選んでくださいって来ましたよ…」
奈緒が差された方を見るとハンガーラックが3つ並んでいた。
奈緒「おー…これが新作なんだー」
乃々「奈緒さん、目が輝いてます…」
美優「奈緒ちゃんどうしたんです…?」
奈緒「アタシこのブランドの商品大好きでさー、今日は本当に楽しみに来たんだー」
美優「そうだったんですね…」
乃々「このブランドって…奈緒さんがいつも着ている服の…」
奈緒「それそれ。今年も水着が出るって聞いてたんだけどさー。こうやって先に見れるのは役得だなー」
美優「フフッ奈緒ちゃん、はしゃいでるのを見るとやっぱり一人の女の子ね…」
奈緒「ああ、アハハ…何かアタシだけテンション上がっちゃって…」
美優「いいんです…好きなものを見たら誰だってそうなります…ね、乃々ちゃん」
乃々「はい…もりくぼも良い服と良い店員さんなら、ちょっと嬉しくなりますから…」
美優「そうね…その気持ちは分かるわ…」
奈緒「もしかして二人とも押しに弱いタイプ…ですよね」
乃々「店員さんが薦めてくるの、むーりぃー…」
美優「店員さんの成すがままに流されてしまうの…大人としては少しは抵抗しなくちゃとは思ってるのだけど…」
奈緒「今回のモデルの人選、あらためて納得したなあ…」
そんなことを言いつつも撮影自体は多少のためらいで遅れた程度で、スケジュールもそれほど押さずに終われたようです…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
飛神宮子です。
第7回総選挙の16位(奈緒)、32位(乃々)、48位(美優)という16の倍数が順位だった3人のSSです。
今回は水着モデル。どことなく自分に自信が無さそうな三人となりましたので、こういうのもアリかなと。
そういえば何の偶然か一昨年・去年でこの枠で書いた二人(一昨年茄子、去年日菜子)に今年ボイスが付くことになりましたね…。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2018・06・28THU
飛神宮子
短編小説に戻る