アイドル寮のとある談話スペース、そこに6人のアイドルがいた。 |
まゆ | 「美玲ちゃん…輝子ちゃん…乃々ちゃん…∀NSWERのお披露目ライブ、お疲れさまでした…」 |
6人 | 『かんぱーい!』 |
そこにグラスの当たる音が響き渡った。 |
幸子 | 「さあどうぞ、ボク達が作ったんですよ」 |
小梅 | 「まゆさんと幸子ちゃんと…私の三人で作ったの…」 |
美玲 | 「ありがとうっ!凄いなっ、どれもとっても美味しそうだっ」 |
乃々 | 「もりくぼ達のために…どうも…」 |
輝子 | 「みんな…ありがとう…フヒ…」 |
まゆ | 「では、皆さんどうぞ召し上がれ」 |
6人 | 『いただきまーす!』 |
美玲 | 「美味しいっ!この味付けはまゆだよな?」 |
まゆ | 「はい、やっぱり美玲ちゃんには分かっちゃいますね」 |
輝子 | 「このキノコのソテー…美味しい……」 |
小梅 | 「そのソテーのキノコ…私達の部屋のだから…」 |
輝子 | 「新鮮さが違うな…小梅ちゃんの選び方…いいぞ…」 |
小梅 | 「うん…フフフ、ありがとう…輝子ちゃん」 |
幸子 | 「乃々さんもたくさん食べてくださいね」 |
乃々 | 「はい…幸子さん…」 |
幸子 | 「そういえば今日は乃々さん泊りですよね?」 |
乃々 | 「そうですけど…」 |
幸子 | 「誰の部屋に泊まるんでしたっけ?」 |
まゆ | 「まだ決まってないですよ」 |
輝子 | 「そうだな…でも私の部屋は今日は無理だな…」 |
小梅 | 「そうだね、乃々ちゃん怖がっちゃうから…」 |
美玲 | 「幸子の部屋はどうだ?」 |
幸子 | 「ボクの部屋ですか?今日なら…大丈夫ですね。紗枝さんは明日帰省から戻ってきますから」 |
美玲 | 「それなら乃々は幸子の部屋でいいな」 |
乃々 | 「よろしくお願いします…」 |
幸子 | 「はい、じゃあこの会が終わったら届出に行きましょう」 |
乃々 | 「もりくぼもですか?」 |
幸子 | 「本人の署名も必要ですから」 |
乃々 | 「分かりました…」 |
……… |
おつかれさまパーティも終わり… |
美玲 | 「ふいぃ…いいお湯だったぁ…」 |
まゆ | 「フフフ、みーちゃんお疲れですね」 |
その後、みんな一緒の大浴場から部屋へと戻ってきた美玲とまゆ。 |
美玲 | 「うん、大変だった。初めてのことだらけだったもん」 |
まゆ | 「でも乃々ちゃんと輝子ちゃんと一緒に活動するのはみーちゃんの方が先でしたよね」 |
美玲 | 「まゆ姉のアンデスはその後だもんな」 |
まゆ | 「はい。乃々ちゃんと輝子ちゃんと一緒にいるあの空間、心地いいんですよ…」 |
美玲 | 「今回はそこから引っ張り出す形になっちゃったけどな」 |
まゆ | 「ああいう活動的な二人を見るの、新鮮でしたね」 |
美玲 | 「これからウチらの活動の時はそういう方針でいくつもりだぞ」 |
まゆ | 「もちろん分かってますよぉ」 |
美玲 | 「でもアンデスのこともちゃんと考えてるからさ」 |
まゆ | 「うふ、そう言ってもらえると嬉しいです」 |
美玲 | 「んあーっ!だけど疲れたーっ」 |
まゆ | 「大変だったですよね、みーちゃん」 |
美玲 | 「まゆ姉が一番だよ、ウチの苦労分かってくれるのはさ」 |
まゆ | 「この部屋でいっぱい愚痴も聞きましたからね」 |
美玲 | 「ゴメンな。自分の思い通りにいかなくてついまゆ姉に愚痴っちゃって」 |
まゆ | 「いいんですよ、それを聞くのもまゆの大切な役目ですから」 |
美玲 | 「ありがと…」 |
まゆ | 「どういたしまして…」 |
ぎゅっ |
二人はリビングのソファでどちらともなく抱きしめ合った。 |
まゆ | 「そういえば…眼帯はいいんですか?」 |
美玲 | 「うん…ウチが向上する足枷になるくらいなら外すって決めたんだ」 |
まゆ | 「まゆだけの…秘密だったんですよね、ずっと…」 |
美玲 | 「そうだったな…でもトレーナーさんに怒られちゃってさ…」 |
まゆ | 「ベテランさんの方ですか?」 |
美玲 | 「うん」 |
まゆ | 「マスターさんの次に厳しい方ですからね」 |
美玲 | 「知ってる。でもこれを外すって決めるまで葛藤したんだ」 |
まゆ | 「みーちゃんの個性の一つですもんね」 |
美玲 | 「だけどさ、これだけがウチの個性じゃないって分かったから」 |
まゆ | 「はい…」 |
美玲 | 「まゆ姉にはちょっと悪いって思ったけどな」 |
まゆ | 「そんな…みーちゃん自身が思ったことなら、まゆは別に何も言いません」 |
美玲 | 「やっぱりまゆ姉は優しいよ…」 |
美玲はより一層甘えるかのように、まゆの胸へと身体の重さを掛けていく。 |
まゆ | 「今日のみーちゃんは甘えん坊さんですね」 |
美玲 | 「だって…だってよ、アイツら…アイツらまとめるの…大変だったんだよぉ…」 |
まゆ | 「でもみーちゃんがあの二人と一緒にやりたいって言ったんですよね?」 |
美玲 | 「そうだけど…こんなに大変になるなんて思わなかったもん…」 |
まゆ | 「でもそれをやりきったみーちゃんは偉いですよ」 |
美玲 | 「まゆ姉…」 |
まゆ | 「この活動でみーちゃんはアイドルとして…ううん、人として成長しました」 |
美玲 | 「そうかな…」 |
まゆ | 「一番そばで見てきたとは言えないですけど、近くで見ていたまゆが言うんですから」 |
美玲 | 「この活動中、まゆ姉にもいっぱいお世話になったよ」 |
まゆ | 「実はですね、凛ちゃんにはそばにいる役割を代わってもらったんです」 |
美玲 | 「えっ…それは知らなかった」 |
まゆ | 「まゆだと、干渉しすぎそうだったから…集中して欲しかったんです」 |
美玲 | 「そうだったんだ…」 |
まゆ | 「距離感が近すぎてまゆに甘えてきちゃうこともある二人ですから」 |
美玲 | 「分かる気がする。机の下だとまゆ姉に安心してるもんな」 |
まゆ | 「本当に一番甘えてくるのは…フフフ、みーちゃんですけど」 |
美玲 | 「ウチは場を弁えてるからいいんだっ…いいんだもん…」 |
まゆ | 「今日はだから…まゆにいっぱい甘えていいですから」 |
美玲 | 「一緒に寝てくれる?」 |
まゆ | 「みーちゃんがそうしたいなら…かまいませんよ」 |
美玲 | 「またこういうことがあったら、まゆ姉に甘えてもいい?」 |
まゆ | 「まゆも逆にみーちゃんに甘えてもいいですか?」 |
美玲 | 「うん…まゆ姉がしたいことをしてあげるのがウチの役目だもん」 |
まゆ | 「…みーちゃん…」 |
ぎゅっ |
美玲 | 「…まゆ姉、そろそろ寝よっか」 |
まゆ | 「…うん…」 |
数十分後、まゆのベッドの中からは仲の良い二つの寝息が春の夜空へとこだましていく… |