2月のとある土曜日の346プロエントランス… |
美羽 | 「はぁ…」 |
一人の少女が壁を背にしたベンチへと腰を下ろしていた。 |
美羽 | 「うーん…きっと…その…」 |
そこに… |
みく | 「あれ、美羽ちゃんどーしたんだにゃ?」 |
美羽 | 「へ?あっ、みくさん」 |
みく | 「何か悩みでもあるの?」 |
美羽 | 「その悩みって程じゃないんですけど」 |
みくは美羽の隣へと腰を下ろした。 |
みく | 「…ここじゃ話し辛そうだね」 |
美羽 | 「そういうわけでも…どうなのかな…ってみくさん!?」 |
みく | 「にゃっ!?今までの会話は何だったんだにゃ!」 |
美羽 | 「え?私もしかして今、上の空でみくさんと!?」 |
みく | 「…何か思いつめてたみたいだったから声を掛けたんだけど、どうしたの?」 |
美羽 | 「あっ…でもみくさんに相談すれば…参考になるかも」 |
みく | 「みくが参考になること?」 |
美羽 | 「はい」 |
みく | 「みくが参考になるってことは…猫のことじゃなければ…」 |
美羽 | 「そういうことです…」 |
みく | 「それはここじゃ話し辛いね」 |
美羽 | 「みくさん!気持ち分かりますか!」 |
みく | 「そ、そんな急に迫らないで欲しいにゃ」 |
美羽 | 「だってみくさん達、この346プロで1、2位を争うくらいの…」 |
みく | 「あー…うん、そう言われちゃってるね」 |
美羽 | 「それなら相談に乗ってもらっても…いいです?」 |
みく | 「今日はレッスン終わってるし時間もあるから構わないにゃ」 |
美羽 | 「お願いします、みく先生」 |
……… |
ここは寮でみくの住む階の談話スペース。 |
みく | 「みくの部屋、今ちょっと掃除中だからここでいいかにゃ?」 |
美羽 | 「はい。こっちからお願いしているんですから」 |
みく | 「でもこういうことで相談乗られるの初めてだから、答えられなかったらゴメンね」 |
そこに… |
美優 | 「あら…みくちゃんに…美羽ちゃん…?」 |
美羽 | 「あ、美優さんこんにちは」 |
みく | 「こんにちはー。仁奈ちゃんはどうしたのかにゃ?」 |
美優 | 「仁奈ちゃんは、とときらの収録に行ってるから…」 |
みく | 「あー、次の収録回出なきゃダメなんだよにゃ〜…」 |
美羽 | 「そうなんですか?みくさん」 |
みく | 「うん。今日レッスン前にPちゃんに言われたにゃ」 |
美羽 | 「あのスモックは一度着ましたけど、この年になって着るのはやっぱり恥ずかしかったですね」 |
みく | 「この年になって好き好んで着る物じゃないからね」 |
美優 | 「それで今日はどうしたの…?美羽ちゃんは通いよね…」 |
美羽 | 「ちょっと今日はみくさんに相談することがあって…その…」 |
みく | 「美優さんは時間あるのかにゃ?」 |
美優 | 「特に今はやることもないから…」 |
みく | 「それなら大人の意見として美優さんの話も聞いてみたいにゃ」 |
美優 | 「ええっ…」 |
みく | 「突然だったから無理ならいいにゃ」 |
美優 | 「…そう言われると…みくちゃん、大人をそうやって使うのは良くないわ…」 |
みく | 「………ゴメンなさい…」 |
美優 | 「美羽ちゃんの相談…どういう話なの…?」 |
みく | 「美優さん、意外と乗り気だったにゃ!」 |
美羽 | 「えっと…その…今度の14日にイベントがあって…」 |
みく | 「美羽ちゃん、平日なのにイベントって大変だね」 |
美羽 | 「それで加奈ちゃんと一緒に来週お菓子を作るんです」 |
美優 | 「そうなのね…。それで…?」 |
美羽 | 「そのですね、加奈ちゃんと二人きりで過ごすとなると…みくさんは分かりますよね」 |
みく | 「…うん」 |
美優 | 「…はい…?」 |
みく | 「あの、みくがりーなチャンを連れて来てる時に、美優さんにたまに怒られてることかと思うにゃ」 |
美優 | 「そうでしたか…美羽ちゃんと加奈ちゃんも…そんな関係で…」 |
みく | 「みくは色々と話はどこかから聞いてたから知ってたけどね」 |
美優 | 「でも…美羽ちゃんはまだ14歳よね?」 |
美羽 | 「はい…」 |
美優 | 「まだ…経験の時期…じゃないのかしら」 |
美羽 | 「経験…ですか?」 |
美優 | 「お互いにまだ、みくちゃん達ほどではないでしょう?」 |
美羽 | 「どうなのかな…みくさん達がどれくらいか分からないですし」 |
美優 | 「行き過ぎた関係になるのも経験よ…」 |
みく | 「やっぱり美優さんの話は大人な意見だにゃ…」 |
美優 | 「好きなら好き…美羽ちゃんくらいの歳ならそれで良い気がするの…」 |
美羽 | 「それで本当にいいんですか?」 |
美優 | 「それが後で糧にも参考書にも…なるの」 |
美羽 | 「美優さん…」 |
美優 | 「みくちゃんもよ。でもみくちゃんは暴走するのをもうちょっと抑えたほうがいいかしら…」 |
みく | 「はい…」 |
美優 | 「この階にも小さい子はいるんですから…ね」 |
みく | 「反省してるにゃ…」 |
美優 | 「でもそうやって…青春できる相手がいるのは幸せね…」 |
美羽 | 「そういえば美優さんはどうなんですか?」 |
美優 | 「わ、私…?」 |
みく | 「ちょっと気になるね。大人組の人でそういう人がいるのってあんまり聞いたことないにゃ」 |
美優 | 「言われてみればあまりいないかもしれないわ…」 |
美羽 | 「有名なところだと千夏さんと唯さんくらいかな?」 |
美優 | 「そうね。思い出したところだと…あと2、3組くらいね」 |
みく | 「やっぱりお酒のところでそういう話もするにゃ?」 |
美優 | 「みんなそういう話、好きなの…みくちゃんとかの話も出るかしら…」 |
美羽 | 「へー、なるほど。あ、でも久美子さんもそういう話してるって言ってたかも…」 |
みく | 「そっかあ、みくの話…悪いこととか言われてない?」 |
美優 | 「皆さん…呆れてますから…」 |
みく | 「りーなチャンに今度よく言っておくにゃ…」 |
美優 | 「あら、もうこんな時間になってたのね」 |
ふと時計を見やった美優。 |
みく | 「美優さんこれからお迎えかにゃ?」 |
美優 | 「ええ…仁奈ちゃん達を事務所にね…」 |
みく | 「美羽ちゃんもそろそろ家に帰らないとダメでしょー?」 |
美羽 | 「もうこんな時間かー、うん。じゃあ私も帰ろっかな」 |
みく | 「じゃあそろそろ散会するにゃ!」 |
美羽 | 「二人とも今日はありがとうございました」 |
その美羽の言葉に悩みが少し取れていたように二人は感じていた… |