ある休日の河川敷… |
悠貴 | 「真尋さん、あとどれくらい行きますか?」 |
真尋 | 「そうだなあ…悠貴ちゃんはあとどのくらい行ける?」 |
悠貴 | 「私はまだ全然大丈夫ですよっ」 |
真尋 | 「それならあと30分行ったら戻ろうか」 |
悠貴 | 「はーい」 |
真尋 | 「久しぶりに長距離走ってるから、やっぱり身体が鈍ってるなー」 |
悠貴 | 「そうですね、ここのところはずっと近くばっかりで…」 |
真尋 | 「私がテスト期間だったからゴメンね」 |
悠貴 | 「いえ、いいんですっ。今度は私がテスト期間になっちゃいますし」 |
真尋 | 「中学生くらいなら大丈夫…だと思うから分かんなかったら教えるよ」 |
悠貴 | 「はい、お願いしますっ」 |
真尋 | 「もうすぐ春かあ…」 |
悠貴 | 「やっと動きやすい時期ですね」 |
真尋 | 「ううん、そうじゃなくてちょっと…最近大きなお仕事出来てないなって」 |
悠貴 | 「えっ…あっ…真尋さんって最後は…」 |
真尋 | 「悠貴ちゃんが気にすることないからさっ。最後は去年のスポドリのかな」 |
悠貴 | 「そ、そうでしたっけ…」 |
真尋 | 「そろそろまた大きな仕事したいなって身体が疼いちゃってね」 |
悠貴 | 「分かります。ちっちゃなお仕事ばっかりだとやる気が空回りしちゃって」 |
真尋 | 「そうだよね…ってあれ?」 |
悠貴 | 「どうしたんですか、真尋さん…って、えっ?」 |
二人の視線の先にいたのは… |
悠貴 | 「プロデューサーさん、どうしたんですか?」 |
P | 「どうしたもこうしたも、ここらへん近所だし…」 |
真尋 | 「プロデューサーさんってこの辺に住んでたの?」 |
P | 「ああ。ちょうどここからあっちに見えるマンションだよ」 |
悠貴 | 「それだと事務所から近いんですねっ」 |
P | 「プロデューサーはみんな割とそうだな。緊急招集とかもあるしさ」 |
真尋 | 「それで今日はどうしたの?」 |
P | 「俺も一応オフだ…夜中の収録に代わりに行ってくれって先輩プロデューサーに頼まれなきゃな」 |
悠貴 | 「それなら…真尋さん」 |
真尋 | 「うん、同じこと思ってるね悠貴ちゃん」 |
真尋・悠貴 | 『プロデューサーさんの家に行きたいなっ』 |
P | 「…だろうな。まあダメって言うけどな」 |
真尋 | 「えー、ケチー」 |
P | 「そんなこと言ったってな、下手に連れ込んでるところ写真でも撮られてみろ。大変なことになるぞ」 |
悠貴 | 「ちゃんと、へ、変装しますからっ」 |
P | 「それでもダメなものはダメ」 |
真尋 | 「むー、プロデューサーさん強情だー」 |
悠貴 | 「プロデューサーさん、ところでここには何をしに来たんですか?」 |
P | 「リフレッシュっていうか、最近仕事で身体鈍ってたからゆっくり伸ばそうかなってな」 |
真尋 | 「それ私と一緒だねっ」 |
P | 「真尋もか?」 |
真尋 | 「うん。テストやっと明けて一心地ってとこだし」 |
P | 「ところで塩梅は?」 |
真尋 | 「最低限は取れてると思うけど…期待はあんまりしないで欲しいなー」 |
P | 「…まあ成績表は来たら預かるからな」 |
真尋 | 「ふぁーい」 |
P | 「悠貴は一緒にランニングってところか」 |
悠貴 | 「はいっ。ここまで長距離は久しぶりでしたけどっ」 |
P | 「確かに事務所から近いって言ったって、車での話だからな。ここまでまあまあ距離あったろう」 |
悠貴 | 「そうですね。だからあと30分ここのコースで走ったら帰ろうかなって話で」 |
P | 「30分か…ってちょっと待ってくれ電話だな」 |
プロデューサーはポケットに入れていたスマホを受けた。 |
P | 「はいもしもし…あ、はい…え?ええっ、分かりました。すぐに…はい!はい、では」 |
真尋 | 「どうしたの?プロデューサーさん」 |
P | 「ちょっと急で悪い。一回家に戻らないといけなくなった」 |
悠貴 | 「そうなんですか、残念です」 |
P | 「それでなんだけどな、真尋も一緒に来てくれないか」 |
真尋 | 「えっ、私?」 |
P | 「そのまま車で寮経由して現場に行くから」 |
真尋 | 「私は今日オフだったからいいけど…悠貴ちゃんどうする?」 |
悠貴 | 「ど、どうしましょうか」 |
P | 「一緒に乗っていっていいぞ。一人でここから帰すわけにもいかないしな」 |
悠貴 | 「はいっ」 |
……… |
プロデューサーの車の中… |
真尋 | 「その感じだと急なお仕事ってこと?」 |
P | 「ああ。グラビア撮影で一人ダブルブッキングしてたらしいんだ」 |
真尋 | 「珍しいなー。でも現場に来れないの?」 |
P | 「そりゃその子が国内に居れば来れる可能性があっただろうけど」 |
真尋 | 「あちゃー。それでどうして私なの?」 |
P | 「衣装の関係だ。3サイズと身長の近いのが真尋とかだった」 |
悠貴 | 「そういうことだったんですね」 |
P | 「オフの子でまだ何人かはいたらしいんだがな、特に中学生以下だと責任の所在がな…」 |
真尋 | 「私と近い…海外に行ってる…あー!私よりちょっと胸が大きい人かな?」 |
P | 「たぶん真尋ので正解。撮影コンセプトは寮で着替えてきてもらってからになるけど現場で説明する」 |
真尋 | 「大体で良いから教えてっ」 |
P | 「確か今月のは…花だったな」 |
悠貴 | 「花ですかっ?」 |
P | 「確かな………」 |
……… |
楽屋用の部屋… |
真尋 | 「ど、どうかな、プロデューサーさん」 |
悠貴 | 「か、可愛いーっ!真尋さん、とってもキュートですっ!」 |
真尋 | 「エヘヘ…恥ずかしいなぁ…」 |
悠貴 | 「このピンクと水色の衣装もっ、ピンクのリボンもっ」 |
P | 「急遽とはいえ、こういうのも真尋に合うもんだな」 |
真尋 | 「良かったぁ…」 |
P | 「それでな…いつものコレ渡しとく」 |
真尋 | 「アレ持ってきてたの?」 |
P | 「俺担当のグラスフルのメンバーの撮影の時には必ず持ってかないと、後で色々言われて怖くてなあ」 |
真尋 | 「はるにゃんメガネのことに関しては容赦ないもんね」 |
P | 「だからトランクに入れてあるんだよ。撮影までに選んでおいてな」 |
真尋 | 「はーい。悠貴ちゃん、この衣装だとどれが似合うかな?」 |
悠貴 | 「私が選んで良いんですか?それじゃあ…」 |
P | 「真尋、耳だけこっちにお願いな。それで基本的には花を持って撮影という形になるみたいだ」 |
真尋 | 「はーい。花を持つって小さいのかな?」 |
P | 「そうでもないらしいな…大きくしたものを持つみたいで、花の妖精ということだ」 |
悠貴 | 「へぇーそうなんですね。可愛い衣装、羨ましいなっ真尋さん」 |
そんなヒヤシンスを持っておすまし顔で撮られた写真が、みんなに驚かれたのは言うまでもない話だった… |