アヤ | 「こずえ、起きてるか?」 |
5月20日の寮の一室の前。 |
こずえ | 「くぅ…すぅ…」 |
アヤ | 「そりゃそうか、今日は大変だったもんな」 |
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時はお昼ごろまで遡る… |
アヤ | 「10位まではこうなったか」 |
こずえ | 「アヤー、まだだねぇ」 |
アヤ | 「そうだな。10位まで出したってことは残りの9人が今年の選抜か」 |
こずえ | 「入ってるかなぁ…」 |
アヤ | 「入ってるぞ。今年は特に頑張ったからな」 |
こずえ | 「うんー。マーチングバンドも楽しかったよぉ」 |
アヤ | 「最後の最後にお仕事転がり込んでくるんだから、こずえも運が良いよな」 |
こずえ | 「えへー…」 |
アヤ | 「さていよいよ残りの発表だ。中間は総合8位だったよな」 |
こずえ | 「うんー。どきどきしてるよぉ」 |
アヤ | 「(こずえもいつもとは違って緊張してるんだな…)ほらこずえ、手を貸して」 |
こずえ | 「んー…?」 |
アヤ | 「握っといてやるからさ。これで少しは緊張しなくなればいいけどな」 |
こずえ | 「…ありがとぉ、アヤー」 |
アヤ | 「お、最後の9人が発表されるぞ」 |
こずえ | 「うん…」 |
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司会 | 『総合第4位、キュート部門1位………遊佐こずえさん』 |
こずえ | 「呼ばれたぁ…呼ばれたよぉアヤぁぁ…」 |
アヤ | 「ああ、呼ばれたな。おめでとうこずえ」 |
こずえ | 「…ありがとー…アヤ…」 |
アヤ | 「ほら、前に行ってこい。アタシはここで待ってるからさ」 |
こずえ | 「行ってくるねぇ…」 |
ぎゅっ |
こずえはもう一度アヤの手を握りしめてから離して壇上へと向かって行った… |
……… |
アヤ | 「さすがのこずえもやっぱりちょっと泣いてたな」 |
千秋 | 「こっちの佐城さんもよ」 |
ここはアイドルルーム。アヤと千秋は連絡等を受けているこずえと雪美を待って待機していた。 |
アヤ | 「千秋さんは雪美が来たらどうするんだ?」 |
千秋 | 「私はそのまま一緒に寮に戻るわ。アヤもそうでしょう?」 |
アヤ | 「いや、ちょっとどうしようかなって。こずえ次第だな」 |
千秋 | 「そう…」 |
アヤ | 「今週がこぼれ話の週で今日収録予定だったから良かったよ」 |
千秋 | 「…アヤ、もしかして…」 |
アヤ | 「千秋さんは担当が今日じゃなければなー」 |
千秋 | 「…私も来週はそうさせてもらうわ」 |
アヤ | 「せっかくのこういう機会だしな」 |
ガチャっ |
雪美 | 「千秋……ただいま……」 |
こずえ | 「アヤー、まってたー?」 |
千秋 | 「おかえりなさい佐城さん。疲れたでしょう?」 |
アヤ | 「おつかれさまこずえ。おう、待ってたぞ」 |
雪美 | 「これからどうするの……千秋」 |
千秋 | 「特にプロデューサーから連絡が無ければ寮に戻るわよ」 |
雪美 | 「うん……」 |
こずえ | 「アヤー、こずえはー…?」 |
アヤ | 「そうだった。今日時間は大丈夫か?」 |
こずえ | 「時間ー?学校はお仕事で早退したから、もう何もないよぉ」 |
アヤ | 「それならこれから一緒に出掛けようか」 |
こずえ | 「でかけるのぉ、えへー」 |
アヤ | 「アタシのやってるラジオに出てもらいたいんだ。今日収録だったからさ…どうだ?」 |
こずえ | 「んー…出るー」 |
アヤ | 「よし、じゃああと5分したら出よう」 |
こずえ | 「うんー」 |
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♪〜 |
アヤ | 「レッドバラードのRED NIGHT BALLAD。水曜日はアタシ、桐野アヤが担当だ」 |
オープニングの音楽が少し落ち着いたところでアヤが話し始めた。 |
アヤ | 「この番組が収録なのはご存知かと思うけど、今日はこの週の月曜日の夕方収録なんだ」 |
こずえ | 「そうだねー」 |
アヤ | 「今週はうちの事務所としてはアイドル総選挙があったんだけど…結果はホームページを確認してもらえればいいかな」 |
こずえ | 「やっと終わったねぇー」 |
アヤ | 「まあアタシはまだまだだったけど、応援してくれたみんなありがとうな」 |
こずえ | 「ありがとー」 |
アヤ | 「さっきから声が入ってるから分かると思うけど、そんなのがあったから今日はゲストを呼んだんだ。どうぞ」 |
こずえ | 「ふわぁ…遊佐こずえだよー。今日はよろしくねー」 |
アヤ | 「よろしくな、こずえ。今回の事務所の総選挙でキュート部門1位、総合4位だったアタシの相方だ」 |
こずえ | 「えへー、こずえがんばったよー」 |
アヤ | 「おう、今回は特によく頑張ったな。それじゃあ今日はこずえと1時間一緒にお送りするぞ」 |
こずえ | 「アヤといっしょにおおくりするー」 |
アヤ | 「へへっ、じゃあCM開けたら前にラジオに来た時以降に来た質問でも答えてもらおうかな」 |
こずえ | 「こたえるよー、どんな質問かたのしみだねぇ」 |
……… |
こずえ | 「んむ…」 |
アヤ | 「こずえ、起きたか?」 |
部屋の鍵を開けて入ろうとした時、ようやくこずえが目を覚ました。 |
こずえ | 「ふわぁぁ…アヤ、ここはどこー?」 |
アヤ | 「寮の部屋の前だぞ。もう降ろしていいか?」 |
こずえ | 「うんー。アヤの背中あったかかったー」 |
ぽすっ |
こずえはおんぶされていたアヤの背中から降りた。 |
アヤ | 「そうか、それは良かった。緊張とかで疲れてただろうし、外でご飯食べたらすぐ寝ちまったもんな」 |
こずえ | 「今日はいっぱい色んなことがあったねー」 |
アヤ | 「…ああ。これからはもっと忙しくなるぞ」 |
こずえ | 「そうだねー。でもぉ…」 |
アヤ | 「ん?」 |
こずえ | 「アヤといっしょならだいじょうぶだよー」 |
アヤ | 「嬉しいこと言ってくれるじゃんか。おう、忙しいときは全力でサポートしてやるからな」 |
こずえ | 「ありがとねー」 |
アヤ | 「よし、それじゃご飯も食べたことだし寝る前にお風呂行くぞ」 |
こずえ | 「んー。おふろに入ったらもうねていいー?」 |
アヤ | 「歯磨きしてからな。今日は疲れただろうからゆっくり休もうな」 |
こずえ | 「アヤもいっしょだよー」 |
アヤ | 「え?」 |
こずえ | 「アヤもいっしょにねるのー」 |
アヤ | 「…ま、今日くらいはいいか。でも点呼の時だけはちょっと離れるからな」 |
こずえ | 「ふぁーい…」 |
間近で見守る幸せ、それを感じたアヤだった… |