ある日のとあるアイドルルーム… |
沙理奈 | 「これが千枝ちゃんの…何年前だったかしら」 |
春菜と比奈、そして沙理奈は一緒にブライダルの写真を見ていた。 |
比奈 | 「確かひーふー…三年前じゃなかったスかね」 |
春菜 | 「千枝ちゃんの練習風景、私達で見守ってたんですよね」 |
沙理奈 | 「ちょうどここにいる三人だったわ」 |
春菜 | 「卵が上手に割れて笑顔になるのは本当に可愛かったです」 |
比奈 | 「それから…本当に色んな意味で成長しちゃったスよねえ…」 |
沙理奈 | 「アタシの影響は…ううん、アタシは教え込んだ記憶はないのよ」 |
比奈 | 「本当、どうしてあんな小悪魔属性に成長しちゃったスかねえ」 |
春菜 | 「周りの人の影響って怖いですね」 |
沙理奈 | 「まあそれはいいのよ、問題はこっちの写真よ…」 |
もう一枚の写真を出した沙理奈。 |
比奈 | 「瑞樹さん…これはやっちゃったっスねえ…」 |
沙理奈 | 「ここまでガチガチの和装とはね…」 |
春菜 | 「同い年の早苗さんは洋装でしたよね…」 |
沙理奈 | 「早苗さんは千枝ちゃんと一緒の時だったもの、確かあの辺だとはぁとさんが和装だったっけ」 |
春菜 | 「でもはぁとさんの写真は可愛く見えました。髪を下ろしているので、いつもと雰囲気は違いましたけど」 |
比奈 | 「はぁとさんは可愛いとこがあるっスからね…でもこの瑞樹さんはガチっスよねえ…」 |
沙理奈 | 「和装で三三九度とか、完全に結婚式の途中よねえ」 |
春菜 | 「これってプロデューサーのこと相手として設定してますよね」 |
沙理奈 | 「確かメインの三人の写真はプロデューサーが相手役として付き合うんじゃなかったかしら」 |
比奈 | 「ここまでガチの撮影だとプロデューサーも正装してそうっスね」 |
沙理奈 | 「『気持ちを入れるためにプロデューサーくんも着て』とか言ってたりね」 |
春菜 | 「そういえばあの撮影の日、帰ってきたプロデューサーさんを見ちゃいましたけど」 |
沙理奈 | 「けど?」 |
春菜 | 「だいぶ疲れてました。瑞樹さんの撮影が大変だったと言ってましたし」 |
比奈 | 「あー、じゃあそれっスね」 |
春菜 | 「あ、去り際に『婚姻届は…婚姻届だけは…』とか小さく聞こえてたような…」 |
比奈 | 「瑞樹さん…それはダメっスよ…」 |
沙理奈 | 「…もうこの辺でこの話はお終いにした方が良さそうね」 |
春菜 | 「はい…あ、そういえば沙理奈さん、ネコチャンチャレンジお疲れさまでした」 |
沙理奈 | 「楽しかったわよ。みくちゃんの指導は凄い熱量だったわね」 |
比奈 | 「春菜ちゃんの眼鏡くらいっスか?」 |
沙理奈 | 「方向性は違うけどそうかもしれないわ」 |
春菜 | 「ええっ、そんなこと無いですよ。アタシの眼鏡の…」 |
比奈 | 「否定は自覚の現れっスよ、春菜ちゃん」 |
沙理奈 | 「…そうね」 |
春菜 | 「で、でもどうでしたか?」 |
沙理奈 | 「それは写真を見てもらった方が早いんじゃないかしら」 |
沙理奈はスマホに保存してあった写真を二人へ見せた。 |
比奈 | 「沙理奈さん、写真に撮られる時はセクシーっスよね」 |
春菜 | 「これプロデューサーの反応はどうでしたか?」 |
沙理奈 | 「ああ、舞台の方はゲネの時に一度楽屋裏で堕ちたわ。鼻血の処理大変だったわよ」 |
比奈 | 「ああ分かるっス。ここまで胸が強調される衣装、よく着れるっスねえ…」 |
沙理奈 | 「それがアタシのウリだもの、自信を持ってみせていかないとでしょ」 |
春菜 | 「魔女の時もセクシーさ凄かったですし、魅せ方とか見習わないといけないですね」 |
沙理奈 | 「そこは人それぞれじゃないかしらね。こっちが練習の時の写真よ」 |
比奈 | 「おお、これもまた身体のラインが…ヒップまで。これ参考資料に頂いていいっスか?」 |
沙理奈 | 「後で送ってあげるわね」 |
比奈 | 「ありがとうっス」 |
春菜 | 「沙理奈さん、このレースの猫耳ってどうしたんですか?」 |
沙理奈 | 「これ?これはパーティグッズにこういうのあるのよ。見てみたいなら今度持ってくるわ」 |
春菜 | 「そうだったんですか、お願いします」 |
沙理奈 | 「そういえば春菜ちゃんも猫好きだったのよね」 |
春菜 | 「はい!メガネだけだと思われているのが…最近本当に悲しくなってきてます…」 |
比奈 | 「日頃の行いってヤツっスね…」 |
春菜 | 「うわーん…比奈ちゃんまでそういうこと言うんですかぁ…」 |
沙理奈 | 「でもそれも事実よ、少しは改めなさいね。この前だって勝手にノッて来たじゃない」 |
春菜 | 「あのデレぽは…はい、反省します」 |
沙理奈 | 「あ、もう一枚宣伝用に撮った写真があったわ」 |
比奈 | 「こっちはこっちでフェチいっスねえ」 |
沙理奈 | 「カメラマンと衣装さん、それからプロデューサーの趣味全開だったわね」 |
春菜 | 「こう写真になるとセクシーなようでカッコよさもありますね」 |
沙理奈 | 「上がこんなじゃない。その分胸は強調しないポーズを考えたのよ」 |
比奈 | 「いつものセクシー小悪魔っぽさもないっスから、演技力も凄いっスよ」 |
沙理奈 | 「これくらい大人になればできるわよ」 |
春菜 | 「これが大人力ですか…」 |
沙理奈 | 「大人の女は誰だって本性を隠し持っているものよ。比奈ちゃんもそうでしょ?」 |
比奈 | 「そう言われればまあ…多少なりともあるっスね」 |
春菜 | 「ええっ!?比奈ちゃん、そうだったんですか…」 |
比奈 | 「多少は猫被って生きているところはあるもんスよ、春菜ちゃん」 |
春菜 | 「比奈ちゃん…まだ私に見せていないトコロがあったんですね…」 |
沙理奈 | 「本当に二人ともお熱いわね…」 |
比奈 | 「お目汚し失礼したっス」 |
沙理奈 | 「ま、この時の話はこれくらいかしら。あ、比奈ちゃんも最近あったわよね」 |
比奈 | 「ああ、アレっスか。その写真ならアタシのスマホに…」 |
比奈はスマホに保存してあった写真を二人へ見せた。 |
沙理奈 | 「なーにデートで良い雰囲気になってるの比奈ちゃん」 |
比奈 | 「これはあくまで参考資料のためっスよ…」 |
春菜 | 「いいなあ、プロデューサーさんが羨ましいです」 |
比奈 | 「春菜ちゃんとはこの前お家デートしたじゃないっスか」 |
春菜 | 「あれは掃除洗濯でデートじゃないじゃないですかーっ!」 |
沙理奈 | 「またなの比奈ちゃん」 |
比奈 | 「はい…」 |
沙理奈 | 「いい加減に年下にお世話してもらうのは自重しなさいね」 |
比奈 | 「でも…でも、春菜ちゃんがしてくれるのが分かっているからその…」 |
沙理奈 | 「ねえ春菜ちゃん、本当に比奈ちゃんで良かったの?」 |
春菜 | 「…う、好きは好きですから…いいんですっ」 |
沙理奈 | 「まあ二人がそうならこれ以上は言わないけれども。そういえばこんな服持ってたのね」 |
比奈 | 「いやあ、何着るか迷った挙句に前日に買いに行ったんスよ」 |
春菜 | 「とても似合ってます。比奈ちゃんがとっても女の子らしくって」 |
沙理奈 | 「ええ。店員さんのおススメそのままな気もするけれど」 |
比奈 | 「…沙理奈さんの目は誤魔化せないっスねえ…」 |
春菜 | 「この前掃除の時にこれだけはちゃんとタンスにきちんと畳まれてたんですよ」 |
比奈 | 「そ、それだけは言わない約束っスよ!」 |
沙理奈 | 「あらー、比奈ちゃんも女の子ね」 |
比奈 | 「大切にしたい一着でもあるんスよ。けっこう高かったっスから」 |
春菜 | 「それなら今度の…その時は…」 |
比奈 | 「しょうがないっスね、春菜ちゃんの頼みなら断れないっスよ」 |
春菜 | 「エヘヘ…」 |
そんな二人の光景をどこか微笑ましく眺める沙理奈といつの間にか来ていたプロデューサーであった… |