ある休日の寮の居室でのこと… |
薫 | 「あいお姉ちゃーん」 |
あい | 「何だい?薫」 |
薫 | 「かおるにね、リコーダーを教えてくださーい」 |
あい | 「リコーダーかい?構わないよ」 |
薫 | 「今度ね、音楽の時間にテストがあるんだー」 |
あい | 「それなら楽譜とリコーダーを持ってきてもらえるかい」 |
薫 | 「分かりまー」 |
……… |
あい | 「ソラシドレだけで吹ける曲だね」 |
薫 | 「うんっ」 |
あい | 「それなら…薫、まずは吹いてみてくれるかな」 |
薫 | 「はーいっ」 |
♪〜 |
薫の持つリコーダーから音色が流れ出す… |
あい | 「ふむ…レに繋がるところが苦手のようだね」 |
薫 | 「指が上手く動かなくて難しいんだけど…」 |
あい | 「右手でちゃんとリコーダーを支えていれば大丈夫だよ」 |
薫 | 「そっかー」 |
あい | 「次の学年になったら右手も音に使うようになるだろうね」 |
薫 | 「そうなの?大変になるんだね」 |
あい | 「確かそのリコーダーは、ソプラノだとドから高いラまで出るはずだからさ」 |
薫 | 「へー、知らなかったー」 |
あい | 「まだそれは来年のことさ、さあもう一回吹いてみよう」 |
薫 | 「やってみるねー」 |
|
♪〜 |
薫 | 「どうかな?」 |
あい | 「だいぶ良くなったんじゃないかな。あとは練習すればいいと思うよ」 |
薫 | 「良かったー。ありがとうございまー」 |
あい | 「どういたしまして。前にも言ったけれど私のサックスも原理は似たようなものさ」 |
薫 | 「でも難しそうだから、かおるにはまだ無理だよー」 |
あい | 「まだ薫はリコーダーの全てを学んではいないからね」 |
薫 | 「そっかあ」 |
あい | 「でも薫にも音楽的な才能はあるから、いずれ教えてあげるつもりさ」 |
薫 | 「かおるもあいお姉ちゃんみたいに吹けるようになるかな」 |
あい | 「きっと大丈夫だ。私はやれると信じているよ」 |
薫 | 「うんっ!」 |
あい | 「おっと、いい時間だ。薫はお腹空いてないかい?」 |
薫 | 「あー、お腹空いてるかも…」 |
あい | 「食堂も開く時間だ。リコーダーは一度お休みにして食べに行こうか」 |
薫 | 「はーいっ。分かりまー」 |
……… |
薫 | 「あー、こずえちゃん達と雪美ちゃんたちだー」 |
雪美 | 「こんにちは……」 |
千秋 | 「こんにちは、あいさん、龍崎さん」 |
あい | 「こんにちは、みんな一緒の時間になったみたいだね」 |
こずえ | 「ふわぁ……かおるとあいもー……ごはん食べるのー……?」 |
アヤ | 「あいさん達も来たのか。これは賑やかな昼ご飯になりそうだな」 |
あい | 「ふむ…せっかく集まれたのだから何か話しておくことがあれば、今のうちにしておいた方が良さそうだね」 |
千秋 | 「そうだわ。あいさん、昼食を取ってきてもらってからで構わないのだけれど…」 |
あい | 「了解した。薫、ご飯を取りに行こうか」 |
薫 | 「うん。ちょっと行ってくるねー」 |
席を確保した二人は配膳される場所へと向かった。 |
あい | 「さて今日のラインナップは…」 |
薫 | 「あー、苦手なのがあるー…」 |
あい | 「食べられないわけではないのだろう?」 |
薫 | 「うん。でも…」 |
あい | 「私は甘やかすことはしないつもりだからね」 |
薫 | 「うー…うん…」 |
あい | 「どうしても食べられないのなら、1個は絶対に食べなさい」 |
薫 | 「1個で…いいの?」 |
あい | 「これは他の人の言葉だけどね、1個でも大丈夫なら増やせるかもしれないけれど、0個だとずっと0個なんだよ」 |
薫 | 「そっか…うん、頑張ってみまー…」 |
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あい | 「すまなかったね薫、ついつい話し込んでしまってこんな時間になってしまった」 |
薫 | 「ううん、雪美ちゃんもこずえちゃんもいたから大丈夫だよ」 |
あい | 「そうか、それなら良かった」 |
薫 | 「あいお姉ちゃんたち、みんなむずかしそうな顔してたよー」 |
あい | 「色々話し合うことがあったからね。でも良い方向には行けそうだよ」 |
薫 | 「そうなんだー」 |
あい | 「くれぐれも今日話したことはプロデューサーくんには秘密だよ」 |
薫 | 「うん。分かりまー」 |
あい | 「それでお昼ご飯はちゃんと全部食べられたじゃないか」 |
薫 | 「苦手だけど、がんばってみたよっ」 |
あい | 「少しずつでも食べられればいいんだよ。好き嫌いは良いことじゃないからね」 |
薫 | 「そうだねー」 |
あい | 「ところで今日は時間は大丈夫かな」 |
薫 | 「今日は…うーん、せんせぇは今日はお休みだって言ってたー。明日はとときら学園に行ってくるねー」 |
あい | 「大丈夫みたいだね。それなら一緒に買い物に行こうか」 |
薫 | 「何を買うのー?」 |
あい | 「寮で必要なものだとか、今の部屋で必要なものとかになるかな」 |
薫 | 「いっしょに行ってもいいの?」 |
あい | 「もちろんさ。選んでほしい物もあるから付いてきて欲しいんだ」 |
薫 | 「それなら一緒に行きまーっ」 |
あい | 「部屋に戻ったら行く準備をしよう」 |
薫 | 「何を用意すればいい?」 |
あい | 「特に用意するものは無いな。寒くないように外に出られるような格好になってくれればいいよ」 |
薫 | 「はーい」 |
……… |
あい | 「今日は一日オフとはいえお疲れみたいだね」 |
くぅ…すぅ… |
時は22時。薫はベッドの中ですっかり夢の中のようだ。 |
あい | 「親元を離れてもこうしてしっかり成長していくのだから凄いものだよ」 |
サラサラサラサラ |
あいは薫の髪を一撫でした。 |
あい | 「さて、私も明日はレッスンだ。そろそろ休もうか」 |
パチっ |
あい | 「おやすみ薫、また明日」 |
薫の部屋の電気を落としながら自室へと戻っていった… |