The Comforts of the same Hometown(同郷の心地よさ)

学生にとっては休日。しかし学生のアイドルにとっては休日こそお仕事があるわけで…
美玲「はあ、やっと帰ってこれたなっ」
まゆ「今日は疲れましたね」
輝子達のグループが仕事場からアイドルルームへと帰って来たようだ。
乃々「もう…むーりぃー…もりくぼはもうへばりくぼです…」
輝子「フヒ…お隣さんもご苦労様…これ飲む…?」
乃々「いただきます…もりくぼに…こくっ…あんなことさせるなんて…うう…」
小梅「でもあの子も…今日はみんな…良かったって…言ってるよ…」
まゆ「ひっ…い、今はどこなんですか!小梅ちゃんっ」
輝子「まゆさん…あの子は悪い子じゃないとアタシは思うぞ」
まゆ「怖いものは怖いんですよ」
幸子「そうですよ、ボクは…」
小梅「あっ、今幸子ちゃんの方に行った…」
幸子「ええ…ちょ、ちょっと小梅さん!何とかしてくださいぃ!」
そこに…
ガチャっ
「おーい、みんな居るかー?」
プロデューサーがやってきた。
まゆ「はい、みんないますよプロデューサーさん」
「いつもの如く二人は机の下か。そのままでいいから来週のことについて聞いてくれ」
幸子「来週もこのメンバーでお仕事ですよね。また来週もカワイイボクを全国にお届けできます」
「基本的にはそういうことだ」
乃々「もう…今日みたいなお仕事なんて…むりむりむりくぼなんですけどぉ…」
「来週は打ち合わせで決めた通りメインが小梅と乃々。外レポが幸子と美玲、料理スタがまゆと輝子な」
小梅「フフフ乃々ちゃん…来週はよろしくね…」
乃々「小梅さんとならもりくぼは…はい…」
美玲「プロデューサー、来週行くのって原宿だよなっ」
「今のところの予定ではな。ある程度はスタイリストさんがしてくれるけど、寒いと思うから対策は万全にな」
幸子「ボク、今週も外レポでしたけど…まあいいです。ボクのカワイさを伝えるいい機会ですからねー」
まゆ「プロデューサーさん。お料理はメイン食材以外、自由に決めていいんですよね?」
「それで構わないけど、必要な食材リストは今週と同じく水曜までに頼む」
輝子「まゆさん…キノコは使う?フヒ…」
まゆ「輝子ちゃんのキノコは美味しいですから、また使いましょうね」
「よし、みんな来週も頼んだよ」
六人『はいっ』
「じゃあこれで解散。乃々は送っていくから、帰る準備終わったらプロデューサールームの方に来てくれ」
乃々「わかりました…」
「その他でどこか行きたい人はいるか?」
小梅「輝子ちゃん、今日の夕ご飯は寮だよね…?」
輝子「ああ…夕食は頼んであるよ…。外レポ寒かったから…早めにお風呂入りに行きたい…」
幸子「ボクも一緒に行きますね。準備が出来たら内線で呼んでください」
小梅「幸子ちゃん、紗枝さんは…いいの?」
幸子「紗枝さんは今日はゆかりさん達と一緒ですからいいんです」
美玲「プロデューサー、乃々送ったらこっち戻ってくるんだよな?」
「明日の予定組み立てと今日の残務処理もあるからな」
美玲「なーまゆ、ウチらのご飯ってどうだ?」
まゆ「まゆ達は頼んでません。今日は『処理の日』ですよ美玲ちゃん」
美玲「あー、炊飯器セットしてきたもんな。じゃあ設定時間まだだしさ、昨日言ってた買出しもしちゃおう」
まゆ「そうですね…プロデューサーさん、いいですよね?」
「ああ、それくらいなら時間あるからいいぞ。じゃあ行く準備できたら乃々と一緒に来てくれよ」
………
寮へと買い物を終えて帰って来たまゆと美玲。
美玲「…っくあーっ!疲れたーっ」
まゆ「みーちゃん、部屋入ったらまずはご飯にしましょう」
階段を昇って居室のある階の廊下へと着いた。
美玲「そうだな、まゆ姉」
まゆ「まずは荷物を置いて手をちゃんと洗ってからですよ」
美玲「うんっ」
「…まゆと美玲は、寮でそう呼び合ってたのか」
美玲「…えっ…?」
聞こえる予定のしなかった声に思わず後ろを振り返る美玲。
美玲「う、うわぁっ!み、見るなっ!聞くなっ!忘れろプロデューサーっ!」
まゆ「あら、見られちゃいましたみーちゃん」
美玲「何でここにいるんだよっ」
「これから事務所で志希達と打ち合わせだったけど、奏から来てないって連絡来たから連れに来たんだよ」
まゆ「プロデューサーさんの担当している人、寮生は全員この階ですからね」
美玲「廊下で不用意に話していたウチとまゆ姉も悪いけどな…」
まゆ「もう知られちゃったものは仕方ないです。あっ…それじゃあ夕ご飯を食べては行けないですか…」
「今日のところは時間がな。今回はゴメンなまゆ」
まゆ「まゆはいつでも待ってますから」
「お、みんなやっと部屋から出てきたな。じゃあ二人ともまた明日な」
美玲「うん。でもこのことは、絶対に他で話すなよなっ!」
まゆ「はぁい、お疲れ様です」
ガチャンッ
二人はプロデューサーを見送って居室の鍵を開けた。
カチャッ バタンッ
美玲「はあ…まさかプロデューサーに見つかるとはなあ…」
まゆ「気にしちゃったらダメですよ。荷物を置いたら夕ご飯にして落ち着きましょう」
美玲「…う、うん」
まゆ「まゆは準備しておきますから、みーちゃんはまゆの分の荷物も置いてきてくれますか?」
美玲「ああ。机の上でいい?まゆ姉」
まゆ「はい、お願いしますね」
 
美玲「これで木金土の分全部食べ終われたな。ごちそうさまでした、お腹いっぱいだっ」
まゆ「お粗末さまでした。みーちゃんに手伝ってもらえていつも助かっちゃいます」
美玲「弁当のおかずの残りとは言っても、まゆ姉の作るのはどれも美味しいもん」
まゆ「フフフ…そう言ってもらえると嬉しくて、またつい作りすぎちゃうかも」
美玲「いつも作ってくれる時は美味しいご飯をありがと」
まゆ「どうしたんですか?みーちゃん」
美玲「いや何となくまゆ姉にお礼言いたかったんだ」
まゆ「そういう時ってたまにありますよね」
美玲「感謝って言葉にしないとなかなか伝わらないものだもんな」
まゆ「その一言が大事だったりしますから。じゃあこれを片付けたらお風呂にしましょう」
美玲「お風呂入って今日はもう寝るだけでいいよね」
まゆ「みーちゃん、学校の宿題は終わりました?」
美玲「宿題は軽かったから、昨日の夜レッスンの後に終わらしてるぞ」
まゆ「それなら安心してお休みできますね」
美玲「まゆ姉、今日も寒いし早く行こうよ」
………
ガチャっ
まゆ「みーちゃん…」
美玲「あれ…こんな時間にどうしたんだ?まゆ姉」
時は深夜。眠ろうとベッドに入っていた美玲の寝室へと枕を持って入ってきたまゆ。
まゆ「そのぉ…眠れないんです…」
美玲「まゆ姉がそんなこと言うなんて珍しいな」
まゆ「さっき小梅ちゃんに廊下で会って…その怖くて…」
美玲「ああもう、全部言わなくても分かった」
まゆ「だから…今日はみーちゃんと…」
美玲「うん。まゆ姉の頼みなら聞かないわけにはいかないな」
まゆ「お邪魔します」
まゆは美玲のベッドへと入っていった。
まゆ「急にごめんなさい」
美玲「ううん、まゆ姉が困った時は助けてあげるのがウチの役目だもん」
まゆ「みーちゃんの布団…温かい…」
美玲「もう身体冷え切っちゃってるじゃんか」
ぎゅっ
まゆ「そんなことしたら、みーちゃんが冷えちゃいますよ」
美玲「いいの。ウチがしてあげたいんだから」
まゆ「ありがと…お姉ちゃん、そんなみーちゃんが大好き…だよ」
美玲「まゆ姉…ウチがこの瞳をちゃんと見せられるのは家族と…大好きなまゆ姉だけだからな」
まゆ「みーちゃん…」
美玲「…もう遅いし、そろそろ休もうよ」
まゆ「はい…おやすみなさい、みーちゃん」
美玲「おやすみ、まゆ姉」
パチッ
寒い一夜、同郷の二人は同衾で心も身体も温もりを伝え合っていた…
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あとがき
飛神宮子です。
今回はまゆと美玲。インディヴィとアンデスの片方だけに属する両人です。
この二人、偶然にも同郷(厳密に言えばまゆは『仙台』で美玲は『宮城』ですが)なんですよね。
一緒に住んでいたらこういう風に呼び合っている気がします。…実は最後までLilyにするか迷いました。
この二人だからこそ、温かく輝子と乃々を見守れるんでしょうね。
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2017・01・21SAT
飛神宮子
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