Valentine Duet -B Part-(バレンタインの二重奏〔Bパート〕)

上条春菜×荒木比奈

ここは14日昼、寮の春菜と千枝の部屋…
比奈「あれ?千枝ちゃんはどうしたんスか?」
春菜「こんな時間に帰ってくるわけないじゃないですか。まだ小学校ですよ」
比奈「あー、春菜ちゃんはテスト期間だったスか」
春菜「明日までですけど、明日は割とできる教科なんです」
比奈「そういうわけでアタシをこの時間に呼んだんスね」
春菜「事務所じゃ恥ずかしくて…」
比奈「まあアタシも二人きりの方がいいっスからそれは言いっこなしっスよ」
春菜「はい…」
比奈「ところでやっぱり…そういうチョコなんスか?」
春菜「こういう日に渡すのはチョコじゃなくてもいいと思うんです」
比奈「それも一理あるんスよね。チョコ一辺倒とか何か違う気がして」
春菜「比奈ちゃんも趣味で結構目を使いますから…これをプレゼントします」
箱を手渡した春菜。
比奈「これは…?」
春菜「スチームで目元を温めてリフレッシュするアイケアの家電です!時期が時期なので色はブラウンですけど」
比奈「…こんな良い物、もらっていいんスか?」
春菜「いいんです。これは比奈ちゃんのために気持ちを篭めて選んだんですから」
比奈「サンキュっス、春菜ちゃん。アタシからは…こんなのっスけど…」
比奈が取り出したのは薄めの箱。それを開けながら春菜へと見せた。
比奈「…初めてこういうの作ったっスからね…絵は得意ですけどチョコで描くのは難しかったっスよ」
春菜「私達二人の…嬉しいっ…ありがとうございます!…ちょっと勿体無いですけどこれから一緒に食べましょう」
比奈「そうっスね、食べないとそれはそれでヘンっスからね」
それぞれ相手が描かれた部分を仲良く食した二人なのであった…

的場梨沙×結城晴

ここは14日夜、寮の梨沙と音葉の部屋…
「あれ?音葉さんは?」
梨沙「音葉はちょうどお風呂に行ったわ。だから今呼んだのよ」
「ああ、だからきちんと持ってきたぜ。ほい梨沙」
梨沙「あ、ありがとう晴…」
「つーかよ、梨沙がどういうの好みかオレよく知らないんだけど」
梨沙「いーの、晴が選んでくれたことに価値って物があるんだから」
「そういうもんかなあ」
梨沙「そういうものなの」
「というか梨沙のは?」
梨沙「アタシのは…はいコレ。ちゃんと希望通りお手製よ」
「ん、ありがとな梨沙。まあいつもの如く余りなんだろ?」
梨沙「………」
「梨沙…?」
梨沙「去年はゴメン…反省してるの」
「へっ?」
梨沙「去年はパパへの余り物だったけど…今年はちゃんと晴だけのために作ったんだから」
「うえっ!?マジかよ…」
梨沙「パパと晴は同じだけど違う『好き』…だから」
「…へっ、オレもそうだからな梨沙」
梨沙「…ありがと…(かっこいいアタシの傍の王子様でいてくれて…)」
「…あ、ああ…うん」
梨沙の言葉の真意、それを瞳を通してどこか薄く感じ取っていた晴であった…

安部菜々×木村夏樹

ここは14日おやつ時、事務所のカフェ…
菜々「なつきちさん、今日は来てたんですね」
夏樹「ああ、今日はちょっと高校の先生に現状報告がてら顔を出してから来たんだけどさ」
菜々「そうだったんですか、お疲れ様です」
夏樹「それに、これも菜々に渡しときたかったしな」
夏樹は紙袋を一つ菜々へと手渡した。
菜々「これって……あ、ありがとうございます…」
夏樹「平日だけど、これは今日しかないだろ?」
菜々「はい…あの、四時半には今日のシフトが終わるのでナナのはその時で…いいですか?」
夏樹「ああ、待ってるぜ。別に今日はもうやること無いしな」
菜々「分かりました」
夏樹「ほら、そっちで呼ばれてる。おやつ時なんだろ?」
菜々「ああっ、はいはいっ今行きますねー」
夏樹「はあ、やれやれ…」
………
菜々のバイトも終わり…
菜々「夏樹さん、お待たせしました。それでですね…その…」
夏樹「ん、どうしたんだ?」
菜々「肝心のお渡しする物を実は…家に忘れてきたみたいで…」
夏樹「おいおい…じゃあ後ろ乗ってけよ」
菜々「い、いいんですか?」
夏樹「だから言ったろ?これは今日しか無いんだからな…まあアイツら以外はな」
菜々「…らしいですね…はい、じゃあ…ってどうしてナナ用のヘルメットも準備してあるんですか?」
夏樹「それは…ま、気にするな。何となく今日は最初から乗っけたい気分だったんだよ」
菜々「そうですか…フフフ、嬉しいです」
菜々も乗せた夏樹のバイクが冬の道を走り出していく…

黒川千秋×佐城雪美

ここは14日夜、寮の二人の部屋…
千秋「ペロはちゃんとゲージに入れてある?」
雪美「入れてきた……寂しそう……」
千秋「ネコにチョコはNGだから…ペロが病気になったら嫌でしょう?」
雪美「ん……」
コクリと頷く雪美。
千秋「ペロは大丈夫みたいだから開けて見ましょうか」
雪美「楽しみ……」
二人は冷蔵庫を開けてチョコレート型を取り出した
千秋「さて…どうかしら…」
雪美「千秋……出来てる……?」
千秋「実際に出してみるまで分からないわね」
シリコンの型から皿へとチョコを出していく千秋。
千秋「上出来ね。このピンクで肉球の感じも出てるわ」
雪美「……カワイイ……白ネコに……黒ネコも……」
千秋「可愛いけれどちゃんと食べてあげましょう…ね」
雪美「……ん……食べてあげるのも……大切……」
千秋「そうね、向こうのコタツで一緒に食べましょう」
………
千秋「ふう…ごちそうさま」
雪美「ごちそうさま……」
千秋「食べたらちゃんと歯磨きしないと…特に甘いものだからしっかりね」
雪美「千秋……一緒にする……」
千秋「いいわよ…一緒に洗面台に行きましょう」
二人は流し台へ皿を片付け、仲良く洗面所へと向かって行った…

イヴ・サンタクロース×望月聖

ここは14日夜、寮のイヴの部屋…
「イヴさん、今日はバレンタインデーです」
イヴ「そうらしいですね〜…」
こたつに入っている二人。イヴは温かさに蕩け気味である。
「あの…普通はチョコとかそういうのは…」
イヴ「あー…その習慣って日本くらいのものなんですよ〜」
「…そうでした…イヴさんが海外の方なの…忘れていました…」
イヴ「欧米ではお世話になっている人へ愛を贈る日とか、そんな感じですから〜」
「それならイヴさん…これは愛として…一緒に食べましょう…」
聖は傍らに置いていた箱からケーキを取り出した。
イヴ「ありがとうございます〜、こんなに私幸せでいいんでしょうか」
「今フォーク…持ってきますね…。いつもの場所ですか…?」
イヴ「はい〜、食器棚のところに入ってますよ〜」
………
イヴ「聖ちゃん、ごちそうさまでした〜」
「喜んでもらえて…良かったです…」
イヴ「私からも何かお返しを…」
「いいです…」
イヴ「でも…」
「イヴさんとこうして過ごせる時間…それだけで充分です…」
イヴ「聖ちゃん…今度また一緒にデートしましょうね〜」
「はいっ…」
二人だけの空間、コタツの熱よりも暖かい物がそこにはある…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
あとがき
飛神宮子です。
中盤戦の5組、ここまでAとBはアレが無い10組となりました。
ここまでだとなつなな以外みんな寮なので、二人きりにし易いのが分かるかと思います。
恋することに年齢なんて年の差なんて関係ないんじゃないかな…って思います。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
2017・02・14TUE
飛神宮子
短編小説に戻る