ある夏の日の寮の芳乃の部屋… |
朋 | 「最近のCGは凄いわ。まるで本物の水みたい」 |
芳乃 | 「わたくしはせいれーんの役でしたからー、水を操るのは容易い事でしてー」 |
朋と芳乃は一緒に先日の芳乃のグラビア写真のデータをタブレットで観ていた。 |
朋 | 「フフフ、そうね。セイレーンって船を沈めてしまう魔物だもの」 |
芳乃 | 「船を水底へと誘い込む魔物はー…一度見定められましたら逃れられないのですー」 |
朋 | 「芳乃ちゃんだったらアタシは喜んで連れ去られるかもしれないわ」 |
芳乃 | 「…でも朋殿にそんなことはできませぬー」 |
朋 | 「あら、そのまま一緒に添い遂げられるならいいと思ったんだけど」 |
芳乃 | 「その言葉は…ありがたく受け取っておきますー」 |
朋 | 「それにしても本当に幻想的よね。あとメインは春菜ちゃんと美玲ちゃんだったわよね」 |
芳乃 | 「はいー」 |
朋 | 「撮影の方はどうだった?」 |
芳乃 | 「今回のテーマが小悪魔でしたのでー、皆さん特に後半がそれはー」 |
朋 | 「それは?」 |
芳乃 | 「それは少なからず妖艶な気配の中の撮影でありましたー」 |
朋 | 「確かにグラビアで見たけど、特に春菜ちゃん凄かったわね」 |
芳乃 | 「それはそれは驚かされましたー。そこまで変われるものなのかとー」 |
朋 | 「でもアタシが一番好きで良かったと思ったのは…」 |
チュッ |
朋は芳乃の頬へそっと口付けた。 |
朋 | 「芳乃ちゃんのだからね」 |
芳乃 | 「朋殿ぉ…」 |
朋 | 「そういえば後半は春菜ちゃんが昼間で、美玲ちゃんが夕方の写真だったわよね」 |
芳乃 | 「はいー」 |
朋 | 「夜の芳乃ちゃんまで一日で撮影したの?」 |
芳乃 | 「本当はそのような流れの予定だったのですがー、そう上手くは行かずー」 |
朋 | 「7人も撮影するんだもの。特に昼は全員だったんだしそうは行かないわよね」 |
芳乃 | 「わたくしの場合ー、セットの船もありまして時間がー」 |
朋 | 「撮影は夜だったのよね?」 |
芳乃 | 「実はこの空の光はー自然の光でしてー」 |
朋 | 「その光も合成じゃなかったの!?」 |
芳乃 | 「そちらの方が自然な写真が撮れるとのことでー」 |
朋 | 「えっ、じゃあつまり…」 |
芳乃 | 「そうですー、日の出の光なのですー。水の方に映る物は後からの合成ですがー」 |
朋 | 「大変だったでしょ?」 |
芳乃 | 「朝は弱くはありませぬのでー、撮影される方々は大変そうでしたー」 |
朋 | 「本当におつかれさま」 |
芳乃 | 「ありがとうございますー」 |
朋 | 「それでこの水着ってもらえたんでしょ?」 |
芳乃 | 「2着とも頂きましたがー」 |
朋 | 「芳乃ちゃんの水着姿、この目で見てみたいなーって…ダメ?」 |
少し考える芳乃。 |
芳乃 | 「それならばー、朋殿が海の家の時に着た物を着ていただけるならー」 |
朋 | 「あら、それくらいでいいの?それなら今持ってくるわよ」 |
芳乃 | 「それでわたくしはどちらをご所望でしょうー?」 |
朋 | 「そうね、それなら同じことして欲しいから…お昼の方でっ!」 |
芳乃 | 「それならばー…しかしーその用意などはー」 |
朋 | 「大丈夫。もともと今日一緒に食べるつもりで、準備はこっちでしてあるから一緒に持ってくるわね」 |
芳乃 | 「行ってらっしゃいませー」 |
……… |
数分後… |
シャッシャッシャッシャッ |
芳乃 | 「朋殿ー、この氷はどうしたのでしてー?」 |
朋 | 「最近のは専用の製氷カップが付いてるのよ。はい、芳乃ちゃん」 |
芳乃 | 「ありがとうございますー」 |
朋 | 「やっぱり昨日のうちに菜帆ちゃんから借りておいて正解だったわ」 |
芳乃 | 「そうだったのですかー」 |
朋 | 「シロップも菜帆ちゃんから貰ってきたから、好きなのを掛けてね」 |
芳乃 | 「ではでは、いただきますー」 |
シャッシャッシャッシャッ |
朋 | 「こんな格好でするとは思わなかったけどね」 |
芳乃 | 「そうですなー」 |
二人はさっきの約束通り、部屋の中なのに水着姿である。 |
朋 | 「さてとっ、アタシの分もこれでいいわ。アタシはもちろんこれでね」 |
芳乃 | 「ではいただきましょー」 |
朋 | 「いただきまーす」 |
芳乃 | 「おお、ふわふわのカキ氷をこうして家でいただくのは初めてかもしれませぬー」 |
朋 | 「家でやるとガリガリのが多いものね、うん美味しいっ」 |
芳乃 | 「外は今日も暑いですから、気持ちいいですー」 |
朋 | 「あ、そうだ。ねえ芳乃ちゃん」 |
芳乃 | 「何でしょー?」 |
朋 | 「ほら…これみたいに食べさせて欲しいなっ」 |
芳乃 | 「…朋殿もしてもらえるならばー」 |
朋 | 「…いいわよ、ここまでの格好になってて恥ずかしいことなんてねえ」 |
芳乃 | 「では…朋殿、あーん」 |
芳乃は朋の皿からスプーンを取って一口掬った。 |
朋 | 「あーん…あむっ…どうしてかしら、食べさせて貰うと何倍も美味しく感じるのよね」 |
芳乃 | 「一緒で心地よい方に食べさせてもらえば、自然とそうなるものでしょー」 |
朋 | 「芳乃ちゃんも、はいっあーんっ」 |
朋も芳乃の皿からスプーンを取って一口掬った。 |
芳乃 | 「…あーん…んむっ…これは確かに感じ方が違いますー」 |
朋 | 「もっと食べたいけど、あんまり早く食べ過ぎると…」 |
芳乃 | 「頭がキーンとしてきますー」 |
朋 | 「ほらゆっくり食べないとダメじゃないの」 |
……… |
二人で食べさせあいも終わり… |
朋 | 「ねえ芳乃ちゃん、舌をベーってしてみて」 |
芳乃 | 「ベーですかー?」 |
朋 | 「やっぱり青くなってるわよ」 |
芳乃 | 「そんな朋殿も、赤くなってますー」 |
朋 | 「え、アタシも?まあカキ氷食べるとこうなるのは仕方ないからね」 |
芳乃 | 「そうですねー。これがまた面白いのですがー」 |
朋 | 「あっ…じゃあ芳乃ちゃん」 |
芳乃 | 「なんでしょー?」 |
朋 | 「アタシ達の舌を合わせたら…どうなるかしら」 |
芳乃 | 「それは…つまりー…」 |
朋 | 「して…みましょ…」 |
芳乃 | 「…はいー…」 |
夏の暑いひと時、二つの唇は絡みゆく舌を包み込むダンスホールへと替わっていく… |