In a city that seems to be white ...(白に染まりそうな街で…)

ここはある日の…
夏樹「ふぃー…急にゴメンな、菜々」
菜々「しょうがないです。とてもじゃないですけど、茨城の方は戻るころには積もるみたいですよ。夏樹さんこっち入ってください」
夏樹「ありがと…くあぁ温まる。やっぱり天気予報は信じた方が良かったんだな…」
菜々「でもこの様子だと電車で行ってたとしてもアウトだったみたいですね」
二人が隣同士でコタツに入って見ているテレビには、関東地方の大雪で異常な光景が映し出されていた。
夏樹「ああ、そうだな。公共交通組が大変らしいって話は聞いてるぜ」
菜々「通いの人たちが大変そうですよね。どうしたんでしょう?」
夏樹「寮泊まる人は寮でって話だとさ。後は手分けして車で送ってるらしいけど、そっちも混雑酷いらしくてな」
菜々「でしょうねぇ…」
夏樹「でもアタシも雪がチラつき始めてたし、バイクではさすがにここら辺が限界かなって思ってさ」
菜々「その判断は懸命だと思います。明日くらいまでは酷そうですから、ゆっくりしてもらっていいですよ」
夏樹「恩に着るぜ。もしだったらバイク置いて一度帰ったりするかもしれないから、その時はよろしくな」
菜々「分かりました。そういえば今日は平日でしたけどどうしたんです?」
夏樹「3年だから高校はもう自由登校の時期さ」
菜々「ああ、なるほど…」
夏樹「それでセンター以降は受験しないアタシみたいな3年生組にも仕事入ってるんだ」
菜々「あれ?ナナも今日はお仕事入ってましたけど、朝のうちに延期連絡来てましたよ」
夏樹「アタシの方は昼までやるかやらないか局側で決まらなくてさ」
菜々「それで結局ダメだったんですね」
夏樹「出演者全員もそうだけど観客の帰宅までの安全確保が難しいって判断だって」
菜々「確かにテレビでこの混乱を見ると…そうですね」
夏樹「それが決まったのが午後に入ってからだから、そこから帰る準備したけど…な」
菜々「ここまでが精いっぱいだったんですね」
夏樹「そういうこと」
菜々「本当に驚きましたよ。急に『今日来ていいか』って来るんですもん」
夏樹「本当にゴメンな」
菜々「いいんですよ。だって…」
ぎゅっ
菜々「夏樹さんが事故にあったりでもしたら、それこそ悲しくて胸がはち切れちゃいます」
夏樹「ハハッ、そう言ってもらえると嬉しいぜ」
菜々「そういえば家族とかに連絡はしました?」
夏樹「家族にはもうしてあるけど…あっ…」
菜々「はい?」
夏樹「やべ…事務所と学校の方に居場所確認の連絡忘れてた…」
菜々「まず学校の方に早くしてください。事務所の方はナナから連絡取っておきます」
夏樹「ありがとな、頼むぜ」
 
夏樹「菜々は今日どうしてたんだ?」
菜々「ナナは幸いオフになりましたから、天気の良いうちに足りないものを近くに買いに出ただけですけど…」
夏樹「足りないものってことはもう買い込んではいたってことか?」
菜々「酷くなるって聞いたので、土日のうちにちゃんと買い込んでました。えっへん」
夏樹「えらいえらい」
なでなで
菜々「もー、子供扱いしてー」
夏樹「菜々がそういうことするからだろって」
菜々「フフフ、そうですね」
ピンポーン
菜々「あ、お風呂沸いたみたいですよ」
夏樹「よし、入るか…って着替えがねーか。下着くらいは替えたいんだけどな」
菜々「そう言うと思ってました」
夏樹「え?」
菜々「はい、夏樹さん。ちゃんと洗ってありますよ」
夏樹「…これって…」
菜々「夏樹さん泊まりに来るのはいいんです。帰ってからどうして連絡くれないんです?」
夏樹「これこの前泊まった時のヤツか」
菜々「そうですよもう…他の人の下着を事務所に持って行ったら怪しまれちゃうじゃないですか」
夏樹「でもちゃんと取っておいてくれてありがとな」
菜々「夏樹さんの物なんですから、捨てられるわけないです」
夏樹「…ゴメン…」
菜々「ほら、お風呂行きましょう」
夏樹「菜々も一緒か?」
菜々「寒いですから一緒にまとまって入りましょう」
夏樹「ああ。この寒さは堪えるぜ…」
………
菜々「ふぅ〜…温まりますねぇ…」
夏樹「ああ…」
菜々「あの…ナナがこの場所で狭くないですか?」
夏樹「でもこうしてやらないと一緒に入れないだろ」
菜々「はい…」
夏樹「そういや菜々は明日はどうなんだ?」
菜々「明日ですか?明日はお仕事の予定ですけど、この調子だとどうなるか…」
夏樹「今日の夜が山みたいだから、明日もまだ混乱残るだろうな」
菜々「今日の夜か明日の朝のプロデューサーさんの連絡次第ですね」
夏樹「それが賢明ってとこか」
菜々「夏樹さんはどうです?」
夏樹「アタシは今日のが一応明日に延期の体なんだけど、どうなるかね…」
菜々「交通機関が動くかが問題ですね」
夏樹「バイクは難しいだろうしな。こっからだとどれくらいだ?」
菜々「特急なら1時間ですけど、明日は遅れと混雑も考慮しないと…」
夏樹「ああ…プロデューサーにここまで迎えに来てもらうのもな…」
菜々「居場所の連絡はしていますし、プロデューサーさんならここまで来ちゃうかもしれませんけど」
夏樹「ああそっか…ま、アタシもプロデューサーからの連絡次第ってとこだね」
菜々「一応朝は早めに起きましょう」
夏樹「うん」
………
夏樹「ほんっと布団に入っても寒いな」
菜々「ここ数年で最大級の寒波って話ですからね…」
夏樹「なあ…湯たんぽだけじゃ足りないし…いいか?」
菜々「へ?」
ぎゅぅっ
夏樹「こうして菜々で暖取るしかないだろ」
菜々「もう…」
ぎゅっ
菜々「ナナも夏樹さんで暖を取らせてください」
夏樹「いいぜ…」
菜々「…こんな寒い日に二人で過ごせる…ナナは幸せ者です…」
夏樹「…そう言われると何か照れちまうな」
菜々「…あ、あう…お、おやすみなさいっ!夏樹さんっ」
夏樹「う、うん…おやすみ、菜々」
雪空の下の一室、温もりに身を委ね合う少女たちの姿がそこにはあった…
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あとがき
飛神宮子です。
それでもって今月はLily Storyをもう1本、なつななです。
関東の大雪、見ているだけで凄かったですね。こちら住んでいる地元は現在進行形ですが、やっぱり大変ですよ。
やっぱり安全が第一、最愛の相手は大事にしたいから…ですね。
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2018・01・31WED
飛神宮子
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