ここはいつもの某ファーストフードチェーン。 |
加蓮 | 「またそんなの頼んでー、子供のなんでしょ?」 |
奈緒 | 「そっちこそ、またポテトとか栄養偏ってるじゃんか」 |
加蓮 | 「いいでしょ、だって食べたいんだもん」 |
奈緒 | 「じゃあこっちだっていいだろ。あたしがこういうの好きなのはもう周知だし」 |
加蓮 | 「まあね…でも凛はなんだろう」 |
奈緒 | 「急に呼ばれたもんな。ニュージェネで急な仕事でも入ったのかな」 |
加蓮 | 「まあいっか、それでこれ食べたらどうする?」 |
奈緒 | 「もともと3人で買い物の予定だったからなあ、加蓮はどうしたいんだ?」 |
加蓮 | 「私は奈緒と二人でもいいけど…カラオケも行きたかったんだよね」 |
奈緒 | 「どうせあたしはアニソンが持ち歌に多いですよーだ」 |
加蓮 | 「そこまで言ってないじゃない」 |
奈緒 | 「いーや、加蓮は次にそう言うつもりだった目してる」 |
加蓮 | 「でもそれは事実だし、自分でもそう思ってるんでしょ?」 |
奈緒 | 「まあ…って、だーかーらーこれからどうするんだってあたしは聞いてるんだから」 |
加蓮 | 「この後は最初の予定通りでいいんじゃないの?」 |
奈緒 | 「もしだったら途中で凛も合流できればいいけどな」 |
加蓮 | 「…私は別に二人だけでもいいけど…」 |
奈緒 | 「ん?何か言った?」 |
加蓮 | 「ううん、何でも。じゃあ食べたら行こっ」 |
奈緒 | 「そうだな…って、一本もーらいっ」 |
加蓮 | 「あーっ、それとっておいたのにっ」 |
奈緒 | 「一本くらいいいじゃん」 |
加蓮 | 「短いのから順番に食べてたのに、何だか台無しー」 |
奈緒 | 「わーかった、わかったから、後で買ってやるからさー」 |
加蓮 | 「本当?約束だからね」 |
奈緒 | 「…ったくよーほら、食べたら行くんだから早くしろよ」 |
加蓮 | 「はーい」 |
……… |
その後なんやかんやあってここは… |
奈緒 | 「おじゃましまーす」 |
加蓮 | 「ふう…色々買っちゃった」 |
奈緒 | 「結局あたしこれじゃあ加蓮の荷物持ちじゃんか」 |
加蓮 | 「だって奈緒って、何だかんだ考えて結局買わなかったでしょ」 |
奈緒 | 「それはそうだけど、それでなんであたしが荷物持ちしなきゃなんだよ」 |
加蓮 | 「だって手が寂しそうにしてたんだもん」 |
奈緒 | 「…本当に加蓮はああ言えばこう言うもんなあ…」 |
加蓮 | 「ほら、座ってて。今飲み物取ってくるから」 |
奈緒 | 「うん」 |
ここは加蓮の自宅。奈緒は加蓮の部屋へと通されていた。 |
奈緒 | 「ここに来るのは、この前加蓮をおんぶして連れてきた時以来だな」 |
手持ち無沙汰に周りを見渡す奈緒。 |
奈緒 | 「あ、CD発売記念のレリーフ…ああ飾ればオシャレになるのか」 |
加蓮 | 「なーおっ」 |
ピトッ |
奈緒の頬へミネラルウォーターの入ったペットボトルが押し付けられた。 |
奈緒 | 「ひゃあっ!?かーれーんー、いきなりそういうことするなってばあ」 |
加蓮 | 「アハハハハ、だって奈緒ってそういうとこ面白いんだもん」 |
奈緒 | 「まあいいや、いつものことだってもう諦めついてるし」 |
加蓮 | 「あー、そういう風に思ってるんだー」 |
奈緒 | 「あのなあ、会うたびにそういうことされている身にもなってみろって」 |
加蓮 | 「へえ、でもさ…奈緒ってそう言いながら結局は許してくれるよね」 |
奈緒 | 「これくらいでぶち切れてたら、ユニットなんてやってらんないって」 |
加蓮 | 「…そういう仲間、できて良かったな…」 |
奈緒 | 「なんだよ加蓮…」 |
加蓮 | 「…そのさ、私こういう環境で育ったし…こういう性格だから…」 |
奈緒 | 「言いたいことは分かるけどな…でもな」 |
ぐいっ |
加蓮を引き寄せた奈緒。 |
加蓮 | 「な、奈緒っ!?」 |
奈緒 | 「それ以上は言わなくていいぜ。もうそういうことは言いっこなしっ」 |
加蓮 | 「…アハハ、何それー」 |
奈緒 | 「笑うなよー」 |
加蓮 | 「でも良かった…私の近くにちゃんと私のことを理解してくれる人がいて」 |
奈緒 | 「こうして一緒にいられるのも、お互いをちゃんと理解し合えてるからだもんな」 |
加蓮 | 「…ねえ、奈緒」 |
奈緒 | 「ん?」 |
加蓮 | 「今日は泊まっていくんだよね?」 |
奈緒 | 「明日朝、トラプリで早いからな。どっちかの家に泊まるってことで加蓮の家にしたんだっけさ」 |
加蓮 | 「今日この家、家族いないよ」 |
奈緒 | 「へ?」 |
加蓮 | 「だから今日は私、奈緒が泊まってくれなかったら…一人だけだったんだ…」 |
奈緒 | 「ちょ、ちょっと待ってくれ…理解が追いつかない」 |
加蓮 | 「寂しくて怖いって思ってたところに…奈緒が来てくれるって言ってくれて…嬉しかったんだ…」 |
奈緒 | 「加蓮…」 |
加蓮 | 「今だから…言うね……」 |
奈緒 | 「………」 |
加蓮の次の言葉を固唾を呑んで見守る奈緒。 |
加蓮 | 「好き……奈緒のこと…」 |
奈緒 | 「…なあ加蓮…」 |
加蓮 | 「ゴメン、でももう気持ちに嘘は吐けなかった」 |
奈緒 | 「………」 |
加蓮 | 「奈緒、奈緒?」 |
奈緒 | 「……加蓮、これから何が起こっても驚かない覚悟はできてるか?」 |
加蓮 | 「えっ…?」 |
奈緒 | 「その質問にだけ答えて欲しいんだ」 |
加蓮 | 「…分かった、いいよ…」 |
奈緒 | 「言ったな?……よしっ…」 |
奈緒は覚悟を決めて… |
チュッ |
その唇を加蓮の頬へと押し当てた。 |
加蓮 | 「…奈緒っ…」 |
奈緒 | 「加蓮がそう覚悟を決めたんだ。あたしはそれに応えたい…応えなきゃダメなんだ」 |
加蓮 | 「…奈緒…奈緒ぉ…」 |
加蓮の顔はいつの間にか奈緒の胸元へと収まっていた。 |
奈緒 | 「加蓮の寂しさも辛さも、あたしでよければいつだって癒してやるよ」 |
加蓮 | 「…温かい…奈緒の温もり…」 |
奈緒 | 「うう、何だかくすぐったくなってきたんだけど…」 |
加蓮 | 「なーお」 |
奈緒の胸元から顔を上げた加蓮。 |
奈緒 | 「どうした?加蓮」 |
加蓮 | 「…ありがと…受け入れてくれて…」 |
チュッ |
その刹那、奈緒の唇は加蓮の唇へと捕らえられていった… |