Rely on, Be Relied on(頼り、頼られ)

ここはドイツから帰国後のまゆと美玲の寮の部屋。
穂乃香「これは私から美玲ちゃんに、向こうで有名なテディベアです」
同郷の穂乃香も部屋へと来ていたようだ。
美玲「えっ、いいのか?ホノカ。凄い良さそうだぞこれ」
穂乃香「良いんですよ。こういう外国の物を実際に見て買える機会もなかなか無いですから」
美玲「これ高くなかったのか?」
穂乃香「実はこれ…規格外品なんです。この会社のアウトレットショップで、ちょっとミスがある製品を安く売ってくれるんですよ」
美玲「そうなのか。でも可愛いなー」
まゆ「そういえば穂乃香さん、一日見ない日がありましたけどあの日ですかぁ?」
穂乃香「はい、コンサートの翌日ですね。昔のバレエの先生の知り合いの方が留学でドイツにいまして、その方がお土産ならって案内してくれたんです」
まゆ「そうだったんですねぇ」
穂乃香「それでぬいぐるみといえばまずは美玲ちゃんが思いついたので、美玲ちゃんとあと美由紀ちゃんに買ってきたんです」
美玲「ありがとなっ、大切にさせてもらうぞ」
穂乃香「嬉しそうで良かったです。あ、ではそろそろ私はお暇しますね。これから他の部屋にもお邪魔しないとなので」
まゆ「穂乃香さんまた今度思い出話しましょうねぇ」
美玲「ああ、またなっ」
ガチャッ バタンッ
穂乃香は荷物の入った紙袋を持って二人の部屋から帰っていった。
美玲「でもいいなあ、二人が行くならウチも行きたかったんだけどなー」
まゆ「みーちゃんはこっちでお仕事ありましたからねぇ」
美玲「まゆ姉の留守はちゃんと預かっといたからな」
まゆ「ありがとうございます。1週間半くらいでしたねぇ…階長とみーちゃんのことも紗枝ちゃんにお任せしちゃいましたし」
美玲「そうだったな。ま、まゆ姉いなくても何とかなってはいたぞ」
まゆ「それでも心配してたんですよぉ」
美玲「でもさ…」
まゆ「でも?」
美玲「ここ何日もまゆ姉のごはんを食べられなかったのが、何だろう…よく分かんない気持ちになったな」
まゆ「みーちゃん…」
美玲「何だか、心にぽっかり穴が開いたカンジだった」
まゆ「作り置きして行った方が良かったですかぁ?」
美玲「いや、それは違うんだ。だってまゆ姉と一緒じゃないと味気ないと思うもん」
まゆ「フフフ、嬉しいです…」
美玲「あのさ、今から一緒に出られる?」
まゆ「そうですねぇ…ちょっと準備してからならいいですよぉ」
美玲「疲れてないか?もし疲れてるなら無理しなくてもいいんだけど」
まゆ「何ですかぁ?」
美玲「まゆ姉の料理、久しぶりに食べたいんだ。もしだったら材料メモしてくれればウチが行ってくるから」
まゆ「…それならそうしてもらえると嬉しいなぁ。飛行機の中で寝て来ましたけど、まだ時差ボケがちょっと…ね」
美玲「分かった。じゃあウチが行ってくるぞ」
まゆ「お願いしますねぇ」
………
美玲「ふぅ…食べた食べた。この味なんだよ」
まゆ「お粗末様でした。ちょうど夕飯の時間で良かったですねぇ」
美玲「うん。でも無理言っちゃってゴメンなまゆ姉」
まゆ「ううん、まゆも腕が衰えてなかったか心配でした。向こうだと作ることも無かったですから」
美玲「仕事先だとそういうのもできないよなあ」
まゆ「まゆもそのことで少しもやもやがあったかもしれないです」
美玲「だけど腕も衰えてなかった」
まゆ「フフフ、これからは向こうで憶えた味も披露しちゃいます」
美玲「そうなのか?それは嬉しいぞ」
まゆ「学校始まったらお弁当に入れちゃいますね」
美玲「うん、よろしくな。じゃあいい時間だしお風呂行こうよ」
まゆ「そうですねぇ、寮のお風呂も久しぶりです」
美玲「そうだな。まゆ姉のはちゃんと洗って干して畳んどいたから」
まゆ「ありがとうみーちゃん…と、あら?」
♪〜
どうやら内線が掛かってきたようだ。
まゆ「はい、もしもし…あ、はぁい、今取りに行きますねぇ」
ガチャンッ
美玲「どこから?まゆ姉」
まゆ「紗枝ちゃんです。さっきお土産届けた時に階長の道具渡してもらうのを忘れてました」
美玲「それならウチが行ってこようか?」
まゆ「そうですねぇ…それならまゆがみーちゃんの分もお風呂の準備してますね」
美玲「了解。じゃ、ちょっと行ってくるっ」
ガチャッ バタンッ
美玲は紗枝の部屋へと向かった。
まゆ「準備の前に食器は流しに置いて…食器洗いはお風呂の後でいいですよねぇ」
食器を片付けて美玲の部屋へと向かうまゆ。
まゆ「みーちゃんの寝間着と下着と…もう寝るだけだから眼帯はいいですよねぇ」
勝手知ったる美玲のタンス、まゆは順番に取り出して次は自身の部屋へ…
まゆ「まゆのは…ああ、明日は洗濯しなくちゃですねぇ」
床の上にはお土産袋の他にスーツケース。中身を思い出せば多少は向こうで洗濯して着回していたものの、まだまだたくさん洗濯物が入っていたようだ。
まゆ「みーちゃん、手伝ってくれま…」
コンコン ガチャッ
美玲「まゆ姉、サエのとこから預かってきたよ」
まゆ「あ、ありがとうございます。机の上に置いておいてください」
美玲「分かったっ。それで、あのさ…」
まゆ「えっ、な、何?」
美玲「ウチ、別にそんなこと嫌だって言わないぞ」
まゆ「えっ?えっ!?もしかして聞こえて…」
美玲「ウチはまゆ姉のパートナーなんだから、もっとウチのこと頼ってもらっていいんだ」
まゆ「みーちゃん…」
美玲「普段ウチが頼ってる分、ウチだってまゆ姉の頼りになりたいもん」
まゆ「…んっ…そうですよね。みーちゃんはまゆの大切なパートナーです…」
美玲「だからさ、もっとウチに色々頼んでもらっても構わないからな」
まゆ「…はいっ」
美玲「じゃあまずはさ、ゆっくりお風呂に入ろう」
まゆ「そうですね…みーちゃんのこれでいい?」
美玲「うん、大丈夫だぞ」
まゆ「それならあとは道具とタオルと…これでよしっ」
美玲「サチコ達には連絡は…いっか。今日はまゆ姉と一緒の時間が欲しいなって」
まゆ「フフフ、まゆもそう思ってました」
美玲「また今日からよろしくな」
まゆ「こちらこそよろしくね、みーちゃん」
美玲「もちろんっ。それじゃ、お風呂行こうまゆ姉」
まゆ「あ、でも行く前に…みーちゃんこっちに来てください」
美玲「いいけど…」
美玲が近づいてきたその刹那…
まゆ「みーちゃん、ただいま…」
チュッ
まゆは帰ってきたという証を美玲の唇へと載せていく…
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あとがき
飛神宮子です。
今回のLilySSは、久々のまゆみれ。1カ月遅れましたが、ドイツアイプロの後のお話です。
そして当サイト20周年記念SSでもあります。よくもまあネットの片隅で20年間も続けてきましたよ。
離れていたからこそ分かる、パートナーの温もりや親愛。心をそっと温めてくれる存在、きっと大切ですよね。
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2021・09・03FRI
飛神宮子
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