I'm Looking for a Loving Relationship with you.(「愛」という名の探し物)

ある日のアイドルルーム。
「これは困ったわねー」
芳乃「朋殿、どうされましたー?」
「あ、芳乃ちゃんちょうどいいところに。あの、あたしが使ってるタロットカードが何枚か行方不明なのよ」
芳乃「ほー、そういうことでしたらお任せあれー。いつから失せたのでしてー?」
「さっきそこのテーブルでやっていた時に、あっちの窓が開いて何枚か飛ばされちゃって」
芳乃「それならばプロデューサー殿の机の近くや下が怪しいのではー」
「あー、そうかも。ちょっと見てくるね」
朋は担当プロデューサーの机の下を探り始めた…のであるが…
芳乃「…!?!?」
芳乃がそこで見たのはミニスカートで四つん這いになっている朋であった。
芳乃「これは大変なことでありますー」
とてとてとて
芳乃はそっと近付いて…
「あれ?芳乃ちゃんも一緒に探してくれるの?」
芳乃「はいー、わたくしも違う場所を示していないか心配でしてー」
そう言いながらも素振りは見せないように必死に隠していた。
「あー、こんな奥に滑り込んでたんだ」
プロデューサーのデスクの下から四つん這いのまま下がってくる朋。
芳乃「見つかったのでしてー?」
「こんなところに行くなんて思ってもなかったわー」
トンッ
後ろを見ずに下がってきた朋はそのまま後ろで立て膝になっていた芳乃へとぶつかった。
「あっ、ゴメン。芳乃ちゃんそこにいたんだ」
芳乃「今こちらから動きますゆえー」
「あ、あたしも立ち上がるからいいんだけど」
二人はようやく立ち上がり膝と手のほこりを払った。
「芳乃ちゃん、ありがとう。こういう時は頼りになるわ」
芳乃「そ、それくらいならいくらでも頼っていただきたく思いますー」
「ん?どうしたの?何かちょっと顔が赤いけど…大丈夫?」
芳乃「いえー、ご心配なさらずにー…ただ朋殿はもう少しー」
「もう少し?」
芳乃「もう少し恥じらいを持っていただきたく思うのですー」
「へ?どういうこと…ってもしかしてっ!」
芳乃「気が付かれたようですので、これ以上はわたくしの口からは申せませぬー」
朋の顔も徐々に赤くなっていく。
「もしかしてさっき芳乃ちゃんが近くにいてくれたのって…そういうことだったの?」
芳乃「あのようなあられもない姿は、他の方に見せることはなりませぬことゆえー」
「ありがと…ああもうっ、恥ずかしいなあ」
芳乃「この部屋には他に人もいなかったので大丈夫かとー…」
「あれ?でも芳乃ちゃんはもしかして…」
芳乃「見えてしまいそうであったのであってー、わたくしは何も見てはおりませぬー(実は少しだけ見えてはいたのですがー)」
「そっか、それなら良かった…あ、ああでも芳乃ちゃんはあたしのは着替えの時とかに見てるよね(やっぱりあの表情は見えていたんじゃ…)」
心の中のことはとりあえず出さないでおいた二人。
芳乃「そうですがー、このような場所では恥ずかしいことでー何と言いましょうかー」
「確かに大っぴらに見せるものでも無いかな。やっぱり芳乃ちゃんともデュオで良かったな」
芳乃「???」
「こんなあたしのことも見捨てないで一緒にやってくれてるなんて、きっと相性が最高ってことでしょ?」
芳乃「おそらくはそうなのでしょー。このような組を作っていただけたプロデューサー殿には感謝しておかねばなりませぬー」
「そうね……」
 
その後のある日…
「ああっ、もう!どうしてすぐ見当たらなくなるのよ!」
芳乃「朋殿、今度は何でしてー?」
「今日のラッキーアイテムが水色のハンカチで、確かこのルームのどこかに持ってきてあったはずなのよね」
芳乃「それでしたら確かー、あの棚で見た気がするのでしてー」
「あの棚?あ、確かに片付けておいたかも…この辺の椅子でも借りてっと」
ガラガラガラガラ
朋はキャスター付きの椅子を棚の前へと転がしていった。
「えっと確か上の方の段だったと思うけど…」
椅子に乗って探し始める朋。それを見ていた芳乃は…
芳乃「…朋殿またですのー」
とてとてとて
芳乃はまたそっと近付いて、朋のスカートの中を隠すような位置取りになった。
芳乃「朋殿、いかがでしょうかー?」
「んーっ、もう少しで箱に届きそうなんだけどー…えいっ!」
朋が身体を伸ばして箱を引き抜いた瞬間…
朋・芳乃『あっ…!』
不安定さとその反動で朋の身体は後ろへと、そして重力が作用してしまい…
どささささっ
手を突いて身を守ろうと反転した身体も手伝って、朋は芳乃を押し倒したような形になってしまった。
芳乃「朋殿、大丈夫でして?」
「あたしは大丈夫だけど、芳乃ちゃんこそ大丈夫だった?」
芳乃「わたくしは大丈夫ですが、その…少しだけ苦しいのでしてー」
「え?あっ…ご、ゴメンっ!」
朋が視線を下ろすと自らの胸の辺りに芳乃の顔があった。
「すぐにどくか…え?」
がしっ
なぜか朋の背中へと回される腕。
「ど、どうして芳乃ちゃんっ!?」
芳乃「どうしてかは分かりませぬが、何だか落ち着く香りと柔らかさゆえー」
「くっんっ…何か息でくすぐったいんだけど…」
芳乃「それは申し訳ないことをー…」
ぱっ
その言葉に芳乃は朋を解放した。
「でもどうして芳乃ちゃん、またあたしの近くに…ってもしかしてまた…だった?」
芳乃「もうそのような服装でしたらそうなるのが自然でしてー」
「今度は見えてた…?」
芳乃「今のも前のも少し裾からはみ出しておりましたのでー」
「やっぱり、前のも見えてたんだ…。でも…いっか、芳乃ちゃんになら見られても悪い気はしないのよ」
芳乃「!?」
「何か芳乃ちゃんと一緒にいると安心するというか、心許しちゃうっていうね」
芳乃「そう言われてしまうと朋殿のことが、何だか気になってしまいますー…」
「芳乃ちゃんは他の子と比べて特別な存在なのかも(あれ?あたしどうしてこんなこと言っちゃってるんだろう…)」
芳乃「そうなのですかー、わたくしも朋殿は特別気に掛けてしまうお方ではありますがー(気に掛けるなのでしょうかー、それともー…)」
密に接してしまったことでそれまでとは違う何かが芽生えるのをお互いに感じ取っていた…
 
それから数日後…
「ねえ芳乃ちゃん」
芳乃「何でしょー朋殿」
芳乃は寮の朋の部屋へと招待されていた。
「芳乃ちゃんは失せていないものは探せないかな?」
芳乃「それはどういうことでしてー?」
「探しているものがまたあるんだけどいい?」
芳乃「んー、それは物にもよるかもというところでー」
「芳乃ちゃんじゃなきゃ見つからないものかなって」
芳乃「わたくしに関係することなのでー?」
「あたしの心の行く先を…ね」
芳乃「…!?!?」
芳乃は朋に顔を向けたまま瞬きを繰り返した。
「芳乃ちゃん…あたしのこと嫌い?」
芳乃「そんなことはーありませぬがー…このようなことはわたくしとではなくー…」
「嫌いじゃないなら…それでいいじゃない」
芳乃「しかし普通は殿方ととの関係であるのがー」
「そんなの関係ない、あたしはそれでも芳乃ちゃんがいいの。今は芳乃ちゃんがあたしの一番なのっ!」
芳乃「うー…」
少しずつ顔を赤らめていく芳乃。
「芳乃ちゃんがあたしの一番であるように、あたしも芳乃ちゃんの一番になりたい…」
芳乃「朋殿…そんなになるまで思いをつめておられるとはー」
「でも、芳乃ちゃんの心がダメっていうなら諦めることにするわ」
芳乃「そのようなことは…」
とてとてとてとて
芳乃は向かい合っていたコタツから出て、朋の隣へと寄り添って…
ちゅっ
左の頬へとそっと唇を持っていった。
芳乃「ありませぬことー…」
「芳乃ちゃん…」
その頬には徐々に紅が差していく…
芳乃「寄り添って安心できる人は、たとえ同性でも大切に思いたくー…」
「ねえ、ここ入って」
芳乃「はいー」
朋は芳乃をそのままこたつに入れて…
んっ…ちゅっ…
何をするか互いにもう言葉は必要なかった…
 
そこから時は流れて新年の事務所の仕事始めの日。
ガチャっ
茄子「あけましておめでとうございますー♪」
ほたる「あけましておめでとうございます…」
ここはいつものアイドルルーム。
「あ、茄子さんにほたるちゃんじゃない。あけましておめでとう」
芳乃「茄子殿、ほたる殿、あけましてーおめでとうございますー」
茄子「皆さんもうお揃いだったんですねー」
ほたる「遅れてしまってすみません…私のせいで…」
茄子「ちょっと色々と手続きがありまして…ね、ほたるちゃん」
ほたる「はい…」
芳乃「何やらそなた達もー、新たな道に向かっているようでー」
「ああ…そういうことね…って芳乃ちゃん!」
芳乃「はいー?朋殿、わたくし今何かー…!!!」
芳乃はそこでようやく気が付いた。
「んー?なーんか聞き捨てならない言葉が芳乃ちゃんから聞こえた気がするねえ雪菜」
雪菜「同じユニットの仲間として、これはちゃんと朋ちゃんの口から聞きたいですねぇ海ちゃん」
「これは芳乃ちゃん…逃げるよ!」
芳乃「朋殿、待って欲しいのでしてー!」
そこから逃げ出した二人、ただその手は離されることが無くしっかりと握り締められていた…
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あとがき
飛神宮子です。
今月の百合百合枠はスピリチュアル・プレイヤーの二人です…たぶんこれだけかな?
朋は海・雪菜ともユニット「ハートウォーマー」ですからね、そちらもいずれ何か書きたいなあ…。
先月のミス・フォーチュンからの流れも最後に少し入れました。幸せはいくらあっても良いものでしょう。
あ、余談ですが…みうかな以降この枠で書くと、なぜか月末ガチャにどちらか登場するんですがねえ…不思議です。
この作品ですが、書き始めたの自体は12月月末ガチャが始まるずっと前(12月19日)でした…。
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2016・01・08FRI
飛神宮子
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