ある日のアイドルルーム、そこはどことなく和や魚が似合う女の子が集まる部屋であった。 |
葵 | 「ただいまー!」 |
千鶴 | 「お帰りなさい葵ちゃん。どうでしたか?ドリフェス」 |
葵 | 「楽しかったとねー!大きなプールでいっぱいのアトラクション、良かったっちゃ!」 |
千鶴 | 「番組の放送は今月中でしたよね」 |
葵 | 「水着見せるのは、あたしも少し恥ずかしいと。でも楽しかった方が大きいっちゃね」 |
千鶴 | 「私はこのメンバーだと唯一まだですから…後に残された方が期待されているみたいで」 |
葵 | 「そっちのみんなは何しとるん?」 |
千鶴 | 「その水着の話が出てたんで、以前のイベントでの皆さんの水着写真を見てたんです」 |
仁美 | 「あれ?葵っち帰ってたんだ!おかえりー!」 |
葵 | 「皆さんただいまー!これプールの近くで買ったお土産っちゃ!」 |
あやめ | 「おお、お帰りでしたか。これはかたじけない」 |
珠美 | 「お帰りなさい、葵ちゃん。プールはどうでしたか?」 |
葵 | 「ターザンロープが気に入ったとね。何回もしたっちゃ」 |
あやめ | 「そちらも収録はされたのですか?」 |
葵 | 「たぶんカメラさんいたから、出てくるとは思うとね」 |
珠美 | 「これはまた楽しみですね」 |
仁美 | 「こうなるとあとは千鶴っちだけだね!」 |
千鶴 | 「今年お仕事を貰えるチャンスはまだあるのですけど、選ばれるかはプロデューサー次第ですので」 |
あやめ | 「この中で一番早かったのは誰でしたかな?」 |
珠美 | 「そう聞いているあやめ殿ではないですか?」 |
仁美 | 「アタシは今年の6月末のグラビアだね!」 |
葵 | 「あたしは今帰って来たばっかりと」 |
珠美 | 「珠美は去年ですね。あやめ殿は確か一昨年に響子殿とでは?」 |
あやめ | 「そうです、響子殿と南国での撮影でしたが一昨年の冬になりますか」 |
珠美 | 「南国で撮影なんて、羨ましいですよ」 |
千鶴 | 「私にも遅かれ早かれ来るのかな」 |
仁美 | 「きっとくるね!もうアイドルのみんなの半分以上は水着やってるって聞いたから」 |
千鶴 | 「この前やったはぁとさんにも言われたな…」 |
珠美 | 「それにしてもこのあやめ殿の竹筒は何を…?」 |
珠美はあやめの写真の左手を指差した。 |
あやめ | 「それは海で水遁の術をしようかと思っていたのですが…」 |
葵 | 「どうかしたと?」 |
あやめ | 「それが響子殿に火力を上げて欲しいとバーベキューの空気送りの手伝いをすることに…」 |
仁美 | 「あやめっち、水遁の術できるのっ?」 |
あやめ | 「まだ完全とは言えませんが、水着で特に脱ぐ必要もありませんのでいい訓練の機会にはなったかと」 |
珠美 | 「しかしこの女性らしい身体つきは羨ましい限り…」 |
仁美 | 「ああ…こっちの写真と比べるとねー…」 |
仁美は白水着の珠美の写真を横に並べた。 |
珠美 | 「比べないでください!気にしているのですから…」 |
千鶴 | 「これってスタイリストが用意したものですか?珠美ちゃん」 |
珠美 | 「いえ、この白い水着は全員での撮影用に用意していただいたものです」 |
葵 | 「こっちのピンクの方はどうしたと?」 |
珠美 | 「そちらはその…」 |
珠美は黙ってあやめを指差した。 |
仁美 | 「あやめっち?」 |
千鶴 | 「あやめちゃんがどうしたんですか?」 |
珠美 | 「あやめ殿と笑美殿がこれが珠美に似合うって買わせたんじゃないですか−!」 |
あやめ | 「ご、誤解であります!あやめはもう二つくらい選択肢は作っていたかと」 |
葵 | 「この分だと他の選択肢もこういうのだったんじゃなかったとね」 |
仁美 | 「おそらくそうみたいだねー」 |
珠美 | 「…どうせ珠美は幼児体形ですよ…」 |
あやめ | 「そんな…」 |
ぎゅっ |
あやめは珠美の身体を抱き締めた。 |
珠美 | 「…へっ?あやめ殿!?」 |
葵 | 「あやめちゃん何しとるっちゃ!?」 |
あやめ | 「それは言わない約束ですぞ!卑下などしないでください!」 |
仁美 | 「おーい、あやめっちー。ダメだこれ、聞こえてないみたい」 |
珠美 | 「しかし…というよりあやめ殿、こんな場所でなんて急すぎますよ!」 |
千鶴 | 「…珠美ちゃんもこれ聞こえてないですね…」 |
仁美 | 「これ聞こえてないフリでしょ」 |
葵 | 「何か知っとると?仁美ちゃん」 |
仁美 | 「これでも寮は同じようなところに住んでるんだから」 |
千鶴 | 「仁美さんは同じフロアでしたね」 |
仁美 | 「あの二人はお互いの部屋行き来してるの結構見るよー」 |
葵 | 「そう言ってる千鶴ちゃんの部屋も、誰かさんの声がたまーに聞こえてるっちゃよ」 |
千鶴 | 「そ、それはっ…最近はっ!」 |
仁美 | 「あらあらー、そっちの話も聞いてみないと…ってその二人はどこ行ったー?」 |
ふと話し込んでいた三人が見回すと、さっきの珠美の言葉を最後に既にあやめと珠美の姿は無かった。 |
……… |
その二人はというと… |
珠美 | 「どうやら気付かれなかったようですね」 |
あやめ | 「先ほどはすみません、言葉より先に身体がつい…」 |
二人は隣にあるロッカールームの畳の上に座っていた。 |
珠美 | 「いえ、いいのですよ。ただみんなの前だったので驚いてしまっただけですから」 |
あやめ | 「本当は寮だけという約束でありましたが…」 |
珠美 | 「でもさっきのは珠美を守ってくれたが故のことですし」 |
あやめ | 「こんなに可愛くて…真っ直ぐで…惹かれてしまったお方、お守りするのは忍の務めですぞ」 |
珠美 | 「守りたいのは珠美もです。一緒に笑い合えて泣き合えて助け合えて…それが心地よく感じられる存在です」 |
あやめ | 「珠美殿は先輩ではありますが…どうしてでしょう…愛おしく感じてしまうのです」 |
珠美 | 「珠美はその…あやめ殿と一緒に居られることが、今は一番の幸せですから…」 |
あやめ | 「珠美殿…」 |
珠美 | 「あやめ殿…」 |
カチャッ… |
部屋のドアが少し開く音も、世界に入っていた二人の耳には届いていなかった。 |
珠美 | 「あやめ殿…その…いいですか?」 |
あやめ | 「はい…珠美殿…」 |
近付く二人の顔と顔…珠美の方からその唇が押し当てられていった… |
珠美 | 「………これからの道も、あやめ殿に影ながら支えていただきたいです」 |
あやめ | 「………これからもあやめの同心でいて頂きたく思いますぞ」 |
珠美 | 「……こんな小さな武士で良ければ…」 |
あやめ | 「あやめにとっては、珠美殿が一番の大きな支えなのです…」 |
ぎゅっ… |
アイドルルームの時のように珠美の身体を優しく抱き締めたあやめ…だったのだが、そこに大きな音が響く。 |
ドドドササッ |
その音がした方に振り向く二人、そこには… |
菲菲 | 「く、苦しいヨー!早く退けテー!!」 |
菜帆 | 「あらあらー、んーっ!ちょっと私だけでは除けられないですー」 |
蓮実 | 「美由紀ちゃん早く降りてください!」 |
美由紀 | 「ごめんなさーい、今退くねー」 |
珠美以外のからぱれの面々が折り重なっていた。 |
珠美 | 「えっ!?菜帆ちゃん達!?どうしてここに…」 |
菜帆 | 「今日は3時からからぱれの打ち合わせがあるって、一昨日に連絡がー…ふう、大丈夫でしたかー?菲菲ちゃん」 |
菲菲 | 「うう…何とかネー、それで電話にも出なかったから探してたんダヨー」 |
蓮実 | 「それでこの部屋にいるかもと、さっきアイドルルームで聞きましたので来てみたら」 |
美由紀 | 「とっても入れる雰囲気じゃなかったんだよねー」 |
珠美 | 「それは申し訳ない…しかしまさか見られていたとは、あやめ殿…」 |
あやめ | 「こんなことをしている時ではなかったですな…珠美殿はそちらへ」 |
珠美 | 「はい…すみません」 |
そこで少しだけ紅くなっていたあやめは一言だけ耳元で囁いた。 |
あやめ | 「続きはまた…寮で…ですぞ」 |
チュッ |
頬へのキスとその言葉にただただ顔を紅く染めて一つ頷くしかなかった珠美なのであった… |