Our good Luck Spot(私たちの幸運スポット)

年の瀬のとある神社…
「宮司の○○さん、お話ありがとうございました。では次のスポットに行っちゃいましょうっ!」
スタッフ『はいオッケーでーす。藤居さんあと3件急ぎましょう』
「ええ、分かってるわ。まったくプロデューサーも予定を伝え忘れてるんだから…」
何やら手違いでこの年末にお仕事を入れられていたようである。
「ワゴンはそっち?」
スタッフ『はい。メイクさんそっちにいるんで、先に行って入っていてもらえれば』
「了解よ」
………
最後のスポットへと向かう車中…
「日暮れまでには間に合いそうね」
スタッフ「藤居さん、この忙しい年末に収録を入れてしまってすみません。年末進行でして…」
「それはいいの。この予定が私にまでちゃんと伝わってなかっただけだったから」
スタッフ「電話連絡で驚いていたのはそれででしたか」
「聞いてくれる?うちのプロデューサーがその収録のメールを別件のと間違えてたらしいの。それで伝えたと思い込んでて…」
スタッフ「災難でしたね…」
「だから電話連絡もらえてむしろありがたかったのよ」
スタッフ「それは幸いでした。では次の現場についてですが、………でして………」
 
「終わったーっ!スタッフさん、おつかれさまでしたっ」
スタッフ『藤居さんおつかれさま。これで次の収録までだいぶ余裕もたせられるよ』
「この現場楽しいから、もっと多くてもいいのになーって思ってるのよ」
スタッフ『番組の1コーナーだからねえ…それはもう少し掛け合ってみるよ』
「お願いしますね、××さん」
スタッフ『それでこれからどこまで送っていけばいいかい?』
「えっと…ちょっと待ってもらえますか?」
朋はある人へとL○NEで連絡を取り始めた。
「そこでお仕事だったのねー…東武伊勢崎線だから行ける駅は…」
スタッフ『それなら表参道でいいかな。半蔵門線が東武に直通するよ』
「ありがとうございます。それでお願いします」
スタッフ『それなら先に車に乗って着替えてもらえるかな』
「あら、そういえばこれ衣装だったわ」
………
ガタンガタン… カタンカタン…
「この時期はさほど混んでないとは言っても乗ってるわね…」
電車に揺られながらとある駅へと向かう朋。
「でも芳乃ちゃんも運が良いわね…今年最後のお仕事がお土産に良い場所だなんて…」
 
「確か駅前で待ってるって言ってたけど、どこかしら…」
きょろきょろ
「芳乃ちゃんらしき人は見当たらな…」
つんつん
「ひゃっ!」
芳乃「お仕事おつかれさまでしてー」
「来てたのね、もうびっくりしちゃった」
芳乃「驚かせてしまいましたかー」
「それだけ変装していたら分からないわけだわね。それで目的の物はもう買ったの?」
芳乃「はいー。こちらでのお仕事の後にー、いくつか回らせていただきましたー」
「それでそのプロデューサーは?」
芳乃「帰りましたー。今日の夜はガールズパワーのお仕事だそうでー」
「芳乃ちゃんを置いてったの?!まったくもう、そういうことするんだから…」
芳乃「どうされましてー?」
「いや、本当は居たらとっちめるところだったのよ。今日のお仕事の連絡忘れられてたのよ」
芳乃「あらー、それは不運でー」
「それだから今日の夜帰省する前に、ワンパンチでも喰らわせてあげようって思ってたの」
芳乃「今晩はお邪魔いたしますー」
「ええそうね。もう寮に戻って発たないとアタシの家にも帰れなくなっちゃうから急ぎましょ」
………
ところ変わってここは朋の実家…
「狭くてゴメンねー、ごくごく普通の家でしょ」
芳乃「しかし温かみのある家でありますねー」
「そうかしら」
芳乃「住んでいた当人には分からないのですよー。家族の温もりがわたくしにも伝わってまいりましたー」
「芳乃ちゃんがそう言うならそうなんでしょうね」
芳乃「はいー」
「明日は大津駅に朝5時でいいのよね?」
芳乃「乗り継ぐ新幹線が早すぎたゆえ、合わせるとその時間になりましてー」
「新大阪までは付いてってあげるわよ」
芳乃「いいのですかー?朝早いでしてー」
「芳乃ちゃんのためならこれくらいしてあげたいの」
芳乃「朋殿が一緒なら心強いのですー」
「これでも関西は私の方が長いんだからそこはね…あ、そろそろ代わる?」
芳乃「そうしましょうかー。いいお湯でしたー」
「あ、見てたと思うけどシャンプーがそれでコンディショナーはそっちの瓶だから」
芳乃「はいー」
「今度はアタシが入るとしますか…んんあっ…身体に染み入る温かさっ…」
芳乃「今日の寒さは堪えましてー」
「お互い今日は外ロケだったみたいだものね」
芳乃「いえ、わたくしはお店の中が主でしたがー」
「えー、いいなぁ。アタシなんか移動以外ずーっと外だったのに…」
芳乃「いつの放送なのでしょうかー?」
「確か1月の7と14よ。来年…放送される頃にはその年のになるけど開運スポットだからあまり遅くにはしないって」
芳乃「ほー、なるほど」
「でもアタシにとって一番の開運スポットは…」
チュッ
朋は髪を洗っている芳乃のほっぺにそっとキスをした。
「ここだけどっ」
芳乃「朋殿ぉ…」
「茄子さん達も事務所にとってはそうかもだけど、やっぱりアタシにとっては…ね」
芳乃「それならわたくしにとってもー」
チュッ
芳乃は髪を洗う手を止めて朋の頬へとそっと吸い付いた。
芳乃「ここを開運スポットといたすこととしますー」
「でもこれだとアタシ達、毎日し合わないと開運出来ないじゃない」
芳乃「朋殿は嫌でしてー?」
「そんなの、芳乃ちゃんとなら大歓迎に決まってるでしょ」
芳乃「ならば良いではないですかー」
「まあ、そっか。寮なら毎日どこかしらで顔は合わせるし」
芳乃「ただー、明日から戻るまでのの分はー、今日のうちにいただいておきたくー」
「明日も早いんだからお互い早急にね…」
眠りに就く前、お互いの唇も頬も相手の唇に染められていく…
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あとがき
飛神宮子です。
Lily枠8発目は、「スピリチュアル・プレイヤー」ことともよしのんです
二人とも今日までお仕事、しかも朋には連絡が昨日まで行ってなかったようで…大変だったようです。
お互いがスポットと言ってはいますが、この二人は二人でいられること自体が良運かなと思います。
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2018・12・29SAT
飛神宮子
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